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怒り(2016年、日本)

怒り

「悪人」が好きなので観てみた。大作だし、主役級俳優が集まってそれぞれに熱演しているのでかなり密度のある映画。終盤になると上の写真に並んでいる人物ほぼ全員が怒鳴って号泣するのでちょっと暑苦しいが、別の3つのストーリーがそれぞれに起承転結があり、最終的に泣き叫ぶのでしょうがないのかも。3つのストーリーのテーマがぜんぜん違って、それぞれに面白かった。ひとつずつでも十分映画になるような内容なのだ。

いかによく分からない存在を受け入れて、信じることができるかという共通のテーマはあるんだけど、うちひとつは本物の悪人なのでバッドエンドにならざるを得ず、ちょっと変わった群像劇となっている。まるでハズレくじがあるみたいだ。

 

以下ネタばれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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登場人物の描かれ方がみんな丁寧でとても良い。エリートゲイも田舎町の親父もただただリアルで、におって来るような存在感がある。中でも印象的だったのは沖縄の少年を演じている佐久本宝で、無名の新人らしい。憧れのお兄さんに見せるちょっと媚びたような表情や、裏切られたことに気づく表情などかなりリアルだった。ポスターに載っていないのが残念だ。

 

個人的にはかわいいかわいい広瀬すずちゃんがひどい目に遭うのがショックで、娘をもつ身としてはつらく忘れられないシーン。沖縄篇は風景が美しく唯一のどかな雰囲気が漂っているので、なんかあるとしたらここだよなーと思ったり。


森山未来演じる犯人は最初の反抗が突発的で自分のしたことが分かっていないように描かれていて、広瀬すずちゃんに起こったことも彼のせいかどうかは分からない。広瀬すずちゃんを誘導したようには描かれていないし、たまたまだろう。怒りを溜め込んで突然関係ないタイミングでキレており、計画性はなさそう。そして、2回目にキレた理由は、本当に広瀬すずちゃんのことを救えなかったからだと感じた。最後は佐久本に殺されるのを座して待っており、これは自殺のようなものなんだろうなと思った。

父を探して(2013年、ブラジル)

父を探して [Blu-ray]

全編せりふなしのアニメーション。具体的な事象を描くというよりは、水彩画で描いたイメージの中を「ニャッキ」のようなキャラクターが冒険する意欲的な作品。メッセージはかなり社会的で、テーマは抑圧され搾取される民衆、環境破壊など。

現実に起こっていることに寄り添うようなストーリーで、いわゆるお話的なカタルシスがない。そこが合わないと物足りなく感じるかもしれないが、音楽や映像の面白さがあり、実際にひとつの人生を生きたような感覚があり、世界観が大きく豊かな作品だと思う。

 

牧歌的だが恐怖がすぐそこにあるような感じがする少年時代、禍々しい機械のような都会の片隅で缶詰を食べて生きる若者時代、民衆の怒りがうねりになって燃え上がり、落とされる様子、どれも素晴らしく忘れられない映像になった。いつの間にか年をとった少年と、壊れた家の描写はかなり重い。

 

4歳の娘がアニメだと思って一緒に見始めたんだけど、意外とはまって最後まで見ていた。面白かったらしい。

マダム・フローレンス!夢見るふたり(2016年、イギリス)

マダム・フローレンス! 夢見るふたり(字幕版)

評判が良いようなので観てみた。

わたしにはあまり合わなかった。

 

クラシック音楽業界に多大な援助をしている資産家の女性と、彼女を支える夫の話。

女性は言わばカモにされていて、夫は妻からカネをうまく引き出すために四苦八苦。女性は周りに乗せられて自分が才能あるオペラ歌手だと思い込み、夫は聴衆を買収してなんとか演奏会を成立させる。ところが、妻の暴走により一般客相手に、しかもカーネギーホールで演奏会をすることになり…。

 

彼女のかわいそうな境遇とか、夫のズルさの本質にある意外とピュアな愛などジーンとくる。メリル・ストリープはめちゃくちゃうまいし、ヒュー・グラントははまり役だった。

ただ、作中でも言われてることではあるんだけど、彼女がやっていることは音楽に対する冒涜だし、お金持ちの遊びに付き合わされる人々の奮闘というのは、コミカルに描かれていて楽しくはあっても構図的には楽しくない。それなのに構造的には後半かなり強くいい話に持っていくため、いびつに感じた。この話のメリル・ストリープは可哀想過ぎて、弱いものいじめみたいな話になってしまっている。真実を知ってショックを受けて死ぬという終わり方はさすがにキツく、史実でもない。最後までジャイアンのリサイタルみたいな話のまま終わっていたほうが、すっきりした。

 

ただの愚痴と、現実逃避

最近いろいろあって仕事が忙しく、

そのうえ忙しい原因となっていることが評価に関係ない、ときている。

逃げたい気持ちでいっぱいです。

 

夫は言いました。「自分のためにではなく、人のために仕事をするときが来た」と。

でも私は思うのです、最初から人のために仕事してきたと。

その結果として成果があり、評価があったのです。

 

 

新人さんよ、早く巣立ってくれ。

 

 

仕事が軌道に乗ってきたと思ったら、こういう仕事が降ってくるんだな、と…。なるほど仕組みは分かるが…。

毎日憂鬱。

会社に行きたくなくなったのは人生初めてです。

 

 

はい。

愚痴終わり。

終わりーっ!

 

 

現実逃避のほうですが、マリオ・ボッタのセコンダという椅子を買いました^O^

こういうの

MAKK - Seconda chair by Mario Botta

買ったのは手すりなしバージョン。

スパイラルにもたくさん並んでます。

真横から見ると正方形と正円が並び、とても美しい。

座面のパンチングメタルはかなりたわむので、座った瞬間は見た目によらずかなりソフトです。

 

こういう工業製品ぽい幾何学的なデザインが好きです。

似た系統でこういう照明を愛用しているのですが

FLOS Frisbi(フリスビー)

明かりを一度円盤に当てるので、光がきれい。

UFO??

 

もう一台買いたいなー、

でも狭いマンションで存在感ありすぎかなーと悩み中でして、

 

この左側のtoioのほうがいいかも?

frisbiと同じく、カスティリオーニのデザイン。

Castiglioni Studio Visit

全体像はこんな感じ。ついているのは自動車のランプらしく、照度強めらしいです。

FLOS Toio(トイオ)(ホワイト)

問題は実物を見たことがないということです。どこかに置いてないかな。

 

雰囲気はfrisbiのほうが好きですが、frisbiはちょっと暗いので補助でスポットライトも必要だしなー、

来月には決めよ。

 

 

以上、ただの愚痴と現実逃避でした。

 

潜水服は蝶の夢を見る(2007年、フランス・アメリカ)

潜水服は蝶の夢を見る [DVD]

アマゾンプライムで、題名が面白そうなので見てみた。面白かった。これも実話。

 

脳卒中により、意識はあるのに左目しか動かすことができなくなってしまった仏ELLEの編集長(ジャン・ドー)。おそらく彼のキャリアの絶頂期での発症なので、突然何もできなくなった絶望感が大きい。その絶望感を、狭い視界や変わり映えのしないインテリア、代わる代わるやってきて勝手なことをいう人たちなどで表現している。最終的には左目の瞬きを通じて意思疎通できるようになり、周りのサポートを得ながら小説を書くまでになる。

最初は狭い視界から見える世界と、美しい思い出だけを丁寧に描き、外に出られるようになってガラスに映った姿を少し見せ、ようやく中盤になってからマヒした全身を映す。これがすごく効果的で、「自分が自分でなくなってしまった!」というショックを自分事のように追体験することができる。

発症したその瞬間は物語のかなり後に描かれるんだけど、そのシーンの恐ろしさが忘れられない。カッコいいクラシックカーで子供を迎えに行くオシャレな中年男性が、壊れた機械のように突然同じことを何度も繰り返して言い始める。次第に歪んでいく口元。実際、脳卒中を発症するときはこんな感じなのだろうか。

時折挟まれるイメージ映像も、マヒしてしまった体から意識だけ抜け出していくようで印象的だった。

 

信心深い愛人とのエピソードはどちらかというとネガティブなもので、彼女があまり魅力的にも見えなかったため、愛人が電話してくるシーンはなんだか白けてしまった。その前に描かれる90歳の父親との電話が感動的だったせいもあるかも。発症したあとも美女が代わる代わる世話を焼きに来て、ジャン・ドーがかなり愛されているのも都合いいなーと思ったりも。ジャン・ドーは愛すべき人物という描かれ方はさほどされていないので少し違和感があった。仏ELLEの編集長がそれだけ影響力があるということなのか。

スリーデイズ(2010年、アメリカ)

スリーデイズ (字幕版)

アマゾンプライムで。ポール・ハギス監督が好きなので見てみた。これもかなり面白い。

ネタバレしたらダメなタイプなのでなんとなく空白を入れとく。

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2時間以上の映画だが、1時間半くらいは服を着て水中を進むような、非常にもどかしい状況が続く。家族のために超人的な力を発する「スーパー父ちゃんモノ」かと思って見始めたが、そんなことは全くない。眉毛をへの字に曲げたラッセル・クロウが何もかもうまくいかず、金をだまし取られ、逮捕されそうになり、両親と不毛なケンカをする様子が描かれる。この描写はなかなか細かくて、例えば緊張しすぎて吐いたり、一歩が踏み出せずにそのまま帰ってきたりする。見ていてかなり歯がゆい。最初の1時間半で嫌になる人も多いと思うが、リアリティがあってこれはこれで面白かった。簡単には犯罪に手を染められない父親の葛藤が伝わってくる。96時間のリーアム・ニーソンとは大違いだ。

ちなみにリーアム・ニーソンは本作でラッセル・クロウに脱獄の手ほどきをする役として出てくるが、同じ戦う父ちゃんとしてパロディのように感じられて笑ってしまった。リーム・ニーソンの「脱獄のルール」を聞いてドン引きするラッセル・クロウ。普通はそうだよねー。

それだけに、ラスト30分で覚醒したようにキビキビと動く父ちゃんにはスカッとさせられる。最後には本物の犯罪者になってしまう苦悩も表現されるが、前半の丁寧な描写あってこその重さだと思った。

神のゆらぎ(2014年、カナダ)

神のゆらぎ [DVD]

グザヴィエ・ドランが出ているからみた。彼は監督作品だけじゃなく、演技のみも面白い作品が多い。

 

白血病で死にかけているモルモン教徒とそのフィアンセ、飛行機事故に遭う麻薬の運び屋、不倫されているアル中の女。それぞれに不幸な3者を、悲劇的な飛行機事故がつなぐ。アル中女の夫は、乗るべき飛行機に乗らず難を逃れる。麻薬の運び屋は、全身に火傷を負いながら飛行機事故でただ一人生き残るが、けっきょく死んでしまう。モルモン教徒は戒律により輸血ができないが、飛行機事故が起こったこと、患者を助けられなかったことなどが心を動かし、輸血をすることを決断する。登場人物たちは自ら不幸を背負い込んでいるように見え、彼らの運命が飛行機事故を転機に変わってくのは、神の采配っぽいなーと思ったり(すごく雑な感想)

映像の雰囲気も音楽も良かったし、もともと群像劇は好きだし、グザヴィエ・ドランが出演しているという期待感もあったんだけど、なぜか最後まで乗れず。

自分の場合よくあることなのだけど、宗教的制約みたいな話が映画のストーリーとしてピンと来ないせいだと思う。物語の最後のカギが「輸血の決意をするフィアンセ」なので、なんだそりゃーとなってしまった。モルモン教徒以外の人たちが揃ってダメ人間なのもよく分からない、、モルモン教徒についてはどういう位置づけで捉えている映画なんだろう?

漂白したように清らかに見える、フィアンセの美しい顔が何度も象徴的に映る。「絶対に輸血しない」と決めて、目の前の恋人も全身に火傷を負った患者も助けない姿は冷たく見える。一方で、不倫に興じる老人たちやアル中の女、運んだ麻薬を排泄しようとしている売人たちはひたすら汚く見える。そのギャップと、神が実在していたらありえないはずの「燃える飛行機」と、フィアンセの最後の判断の対比が鮮やかではある。

 

超どうでもいい話なんだけど、この映画は「ハドソン川の奇跡」(飛行機が墜落し「なかった」映画)の後に見たので、「サリー機長が判断を間違えていたら、麻薬の運び屋がただ一人生き残ってアル中女が小さな幸せを思い出し、モルモン教徒が信仰を捨てるのかー。」など、頭がごっちゃになった(´・ω・`)