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11'09''01/セプテンバー11(2002年、フランス・イギリス)

セプテンバー11 [DVD]

ワールドトレードセンターのテロを題材に、世界中の11人の映画監督が「11分9秒01」で短編を撮った短編集です。アカデミー賞監督のアレハンドロ・イニャリトゥやダニス・タノヴィッチ、日本からは今村昌平など。

 

世界規模の羅生門現象

実際の諍いや戦争を描いた映画では、「それは本当のことなのか?」「どちらかが不利になるように過剰に演出されていないか?」ということが気になって素直に見られない時があるんですよね。ここ短編集では、同じテーマなのに驚くほど違う描かれ方をしています。

この映画は極端な例ですが、実際に起こったことが人によって違った風に意味づけられるのは当然のことなので、あまり偏らずに色んなものをみたいなと改めて思いました。

 

クロード・ルルーシュ

この作品は巨匠も多くて、なんとクロード・ルルーシュもあるんです!あのなんとも耳にキャッチ―な「ダバダバダ♪」という音楽とともにフランス人男女のお洒落な恋愛模様を描いた「男と女(1966)」の監督です(雑やなあ)

そしてルルーシュ監督の9.11は、やはり恋愛映画でした。フランスらしい湿度と粘土のある雰囲気で、他の作品からは浮いています。テーマは人がまた寄り添うきっかけとしての大事件、という感じでしょうか。同じ911を描いていてもこれだけ違うのかと。

 

アレハンドロ・イニャリトゥ 

一方でイニャリトゥ監督は実際の音声と画像データを編集してつくったかなりショッキングなものになっており、11作品の中では最も911をど真ん中で描いたように見えます。テロリスト側、被害者側への意見とか立場などは明言しないのですが、純粋に多くの人が死んだ事件としての911を鮮烈に描いています。人がボト…ボト…とタワーから落ちていく音が耳にこびりついて離れません。映像は真っ黒で音声のみ…というシーンが多いのですが、それがまたエンディングに向かって効いて来るというね…。テロを疑似体験するような映像でした。

 

ショーン・ペン 

短編映画として純粋に面白いなあと思ったのはショーン・ペンの作品でした。妻を亡くしたことに気づかず暮らしている老人の、一見関係なさそうな映像が続きますが、最後に意外な形で911が関わってきます。今まで目をつぶっていたことに気づかされたきっかけとしての911です。アメリカからの監督はショーン・ペンだけなのですが、少し寓話的に描いているのが事件との距離を感じて不思議でした。メキシコ人のイニャリトゥ監督の方がアメリカ人の立場っぽい描き方のように感じられました。むしろ、客観的だからこそあのように直球に描けたのかもしれません。映像はショーン・ペンがダントツに美しかったです。

 

この3者はアメリカ内部からの視点、テロ被害者が出てくる作品なのですが、下記はアメリカに対して、あるいは報道に対して違った視点を見せてくれました。

 

ミーラー・ナーイル

NY在住のイスラム教徒が、亡き息子のいわれなき汚名に傷つくという再現ドキュメンタリーのような作品でした。

 

アモス・ギタイ

イスラム教徒の聖地エルサレムで起こった自爆テロを、911と比して過少に扱う地元メディアに怒る女性レポーターや、現場で混乱する人たちの群像劇です。モデルのように麗しい役者さんたちがワーワー言ってるうちに11分終わってしまいました…。

 

サミラ・マフマルバフ

上記とテーマが少し似ているのですが、良くできていてこの監督自体に興味を持ちました。アメリカからの爆撃に備えて非力な子供たちが日干し煉瓦をせっせと積んだり、子供たちが語る悲惨な日常に対して女性教師が「そんな小さなことではなく、もっと大きな事件が起こった」と911の事件を紹介したりと、かなり歪な日常をリアルなタッチで描いています。アフガンの子供たちが911への被害者に祈りを捧げている間、アメリカはアフガニスタンを爆撃するというね…。子供たちのセリフがとても深くて、何度も見直しました。

 

ダニス・タノヴィッチ

背景が分からず、説明や字幕も多くはないのでざっくりとしか理解できていないと思うのですが、戦争や紛争に反対する運動を続けている女性が911が起こった今日もまた運動を続けていく、という話だったような気がします…。好きな監督なのですが今回は消化不足で自分にガッカリでした。

 

ケン・ローチ

同じ9月11日に過去起こったチリクーデターを、被害者の男性が読み上げる手紙という形で描く作品です。軍部が起こしたクーデターにより911の10倍以上の人が亡くなったそうなのですが、郡部を後押ししたのはアメリカとのこと。ただの被害者ではないアメリカの姿を切り取った作品でした。

 

イドリッサ・ウエドラオゴ

これは大好きな映画でしたねー。ブルキナファソの貧しい村の子供たちが主役です。ビンラディンを捕まえたら大金がもらえる!と大騒ぎし、子供たちがビンラディンのそっくりさんを追いかけます。911との直接的な関連は薄いのですが、ビンラディンがまさか希望の象徴になる、というシュールさがおかしかったです。

 

感想文を書いていない作品があるのは、あまりよく分からなかったためです…。そもそも理解するなんておこがましいし、まあいいか。 

おしまい。