私事ですが、毎日、世界中で建築家が発表している建築作品をチェックするのが好きです。その中で、最近個人的にいいなと思った住宅プロジェクトを3つ紹介します。
【34.25° House】
敷地:ポーランド 建築面積:276平米
緩やかな斜面に建つ住宅で、傾斜のある中廊下と個室の関係が、アーケードと店舗の関係みたいですね。こういう構成だと、リビングルームの公共性と個室のプライベート性が際立って感じられる気がします。家の中に全く質の違う空間をつくると、より広く、魅力的に感じられるのでは。
VIA:34.25° House / Bartek Arendt + Kasia Bedra | ArchDaily
【Stair House】
敷地:オランダ 敷地面積:150平米
こちらは、家そのものが大きな階段室のようにも見える住宅です。この「スキップフロア」のテーマは、空調やプライバシーの観点から、完全な個室を作るために階段状のルールが崩れがちですが、ここでは結構ストイックに守っているのが面白いな~と思いました。あと、狭小住宅で多いテーマなので、このように余裕のある計画でこのタイプは珍しいと思う。家族が少ないのかも。
VIA:Stair House / Onix | ArchDaily
【山手通りの家】
敷地:東京 床面積:90平米(地上五階)
通り沿いの角地という、あまり住宅に適さない立地に建つ、細長~~い住宅。開口の大きさ、プロポーションを、上に上がるにしたがって変えていっています。なるほど、下層階と上層階は雰囲気が違います。もっと開口の大きさをドラスティックに変えても良かったかもなあ、と思いました。
VIA:天井高と開口の“操作”で多層空間を彩る|日経BP社 ケンプラッツ
日本と(ザックリ)海外はやっぱり違う
最初に選んだ時点でシンプルでコンセプトが強い物件ばかりなのですが、それでもやはり日本のプロジェクトはコンセプト勝ち、(ザックリ)海外はマテリアル勝ちだな~と思います。かっこよく見えるのは海外ですが、日本の建築ってインスタレーションのようで見れば見るほど面白いし、何か新しいことが生まれそうな感じがします。
面白いコンセプトで、マテリアルもこだわれば良いのかというと、そうではない。どうしても質感が目立つとコンセプトが相対的に弱まります。そして、コンセプトにこだわるからこそ、なぜ、その素材を使うのか?ということが重要になります。結果的に、風土のコンテクストが薄くなってしまいがちな日本においては、薄っぺらく見える素材を使う方が合っているのかな、と思います。
そういう意味で、3番目に紹介した日本の住宅は、金属塗装により外部コンテクストに対して「少し」透明になることで、調和することも目立つこともない、絶妙な選択だと思いました。個人的には、ああ、いいなあ、日本人建築家が建てたんだなあといちいちツボに入るデザインです。みなさんはどれがお好みでしたか?
追記)
「(ザックリ)海外」が気になってしょうがなかったので…。
私が指している「海外」はアメリカ・ヨーロッパなのかな、と思いつつ、近年のインド建築や東アジア建築などを見ていても、やはりマテリアルは重要視されている(というか主にマテリアルの話でもある)ので、日本のペッタリとした素材感の無さは、かなり特殊なものなのかもしれません。
「いやいや、素材がメインだし!」という物件もあるとは思うのですが、なんというか、建具がサッパリしているというか、マテリアルを使ってものっぺりしているというか、ナチュラルメイクでいたい(薄化粧という意味ではない)というか、やっぱり日本の建築物は見ただけで「あ、ニホンジンだ」と分かります。
というわけで、やはり「日本と(ザックリ)海外」という分け方で正しいのだと思います。唯一フジモリテルノブ氏は違うことをしていますが、もはや国境を超えた何かなのだと思います。やはり歴史家は視野が広い、宇宙的。
ちなみに、世界の中では、韓国のデザイン(プロダクトと建築)が日本に似ていると思います。が、韓国の方が「ナチュラルメイクやでえ!シンプルbutコンセプトやでえ!」という強さを感じます。やはり、いくら同じ教育を受けても、文化とデザインはお国柄が良く出ています!あまり共感され無さそうだけど、自分の中では、ものすごく腑に落ちてしまいました。
いま生まれ出づる日本人建築家、ハウスメーカーが作ったのっぺりした家で、風土的コンテクストの無い郊外で育ち、大学で真っ白な心にコンセプトを習い、ケンチクをつくる…。
むっしょーーにワクワクしてきました^p^
コンテクストの無さは、ズバリ強さになります。