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村上隆「芸術闘争論」読んだ

 

遅ればせながら読みました。熱い文章で、さらっと読めて面白いのでお勧めです。アートに関係なく、「好きなことで生きていきたい」若い人にお勧めしたいと思いました。以下ざっくりですが感想を書きます。

芸術闘争論

 

「好きなことで生きていく」なら、道筋を見ること

ユーチューバーのキャンペーンコピーに「好きなことで、生きていく。」というのがあるのですが、本当に好きなことを仕事にするには、そうでない生き方をするよりも戦略的になる必要があると思います。(ただ、「ユーチューバ―」というもので自己表現し、生活に困らない程度のお金を稼ぐのが難しいのかどうかよく分からないので…)もう少しだけ焦点を絞って言えば、個人名で仕事し、お金を得て、業界内で評価され、それなりの立ち位置を得、好きな仕事が向こうから入ってくるようになるには、戦略が必要、という話かと思います。

これを例えばバンドマンやアイドルに当てはめて考えると「売れる戦略を考えられるプロデューサー」や「売れる曲をかける作曲家」へのアプローチという道筋があると思います。小説家や俳人なら、しかるべきグループで認められること、賞をとることなどなのかもしれません。

しかし一方で、どうやったら世の中の表舞台に立てるのか、道筋があまりにも隠されている分野もあります。本著で書かれている「世界で活躍するアーティスト」もそうですが、実は「アトリエ系建築家」もその一つだと思うのです。

 

村上隆はアーティストですから、本著には彼が考える「世界的アーティストになるための手引き」が書かれており、その内容には私自身あまり興味はありませんでした。「そんなルールに則ったものがアートと言えるのか?」という、多くの人が抱きそうな疑問を抱きましたし、彼の作品が好きかと言えば、それほどでもありません。

ただ、キャリア形成についての本でもあるので、評価されるべき対象を知ることや、評価される作品の条件を細かく分析することなど、赤裸々な「戦略の立て方」について非常に面白く読めました。それは自分が興味のある分野である「建築」に置き変えて考えてみても、全く同じことだったのです。

 

できたモノがどう位置づけられるか想像できるか?

先ほど、「道筋は隠されている」と書きましたが、戦略的な目で見るようになれば、他の人が持っているギラギラとした戦略が「見えてくる」ようになると思います。戦略なんかでモノをつくることはできない人も、戦略はあるけれどモノが良くない人もいますが、このような業界で「好きなことで生きていく」選択をするのであれば、一度は考えるべき課題なのだと思います。本著から読み解けるのは、とりわけ今の日本の建築学生に多い、独りよがりの「私の物語」から生まれる建築で、どこまで戦う気でいるの?という問いです。

技術の変化。国際社会における日本の見え方。過去作られてきたもの。今作られているもの。今後作られるであろうもの。その中で、自分がどのような立ち位置で発信すべきか。

一生何かを作り続けるのであれば、そういう「文脈」と「立ち位置」を自分で設定してみるべきで、ただ自分の内なる創作意欲の発露として、あるいはクライアントの望みと与条件でモノをつくることは、羅針盤も持たずに海を漂うようなものだと思うのです。(おそらく他の分野でも同じことが言えるのではないでしょうか?)

 

世界的に評価されている日本人建築家は多いので、アートとは状況が違います。ただ、日本のアトリエ系建築業界は、アートと同じくまさしく「貧」(=_=)ですし、戦略を持たずにアトリエに弟子入りし、体を壊したり、長期間の貧状態から抜け出せずにいる元建築学生を見てはがゆい思いをするのもまた事実なのです。

 

芸術闘争論

芸術闘争論