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最近観た映画「ホドロフスキーのDUNE」など

 

 

ホドロフスキーはステキだ!ホドロフスキーのせいで長文になってしまったので2作品のみ。

 

ホドロフスキーのDUNE

映画『ホドロフスキーのDUNE』劇場用パンフレット

エル・トポが面白かったので借りてみた。これめちゃ良かったです。おすすめしたいのは、若手のクリエーティブ職やチームビルディングをする人など。「エル・トポ」のせいで、これも何か変態的な映画かと思っていたら全然違いました。笑

カルト的映画監督であるアレハンドロ・ホドロフスキーが、これまたカルト的人気のあったSF小説"DUNE"を映画化するために奮闘し、夢破れるまでを描いたドキュメンタリー映画です。

のちにエイリアンのキャラデザインをすることになるH.R.ギーガーや、同じくエイリアンの脚本を書いたダン・オバノン、同じくエイリアンのデザインを手がけたジャン・ジロー(メビウス)、出演者にサルバドール・ダリミック・ジャガーなど、そしてエル・ポトで全裸少年を演じさせられていた実の息子(オトンに振り回されてカワイソス)など…一人一人口説き落としていくストーリーがめちゃくちゃ面白い。(あ、息子は口説き落としじゃなく問答無用だったわ。)

この方は一流の人たらしですよ。ハンサムできちっとした身なりながら、自作を語るときの熱狂的な語り口など初見で「なんか知らんがなんかスゴイ」と思わせられるし、大事なことが共有できていたらあとはスタッフに任せるし、かと言って映画のすみずみに愛を注いでいるのでスタッフも熱くなってしまうようでした。ダン・オバノンは「全財産を売ってパリに来い」と言われて、本当に行ったんですからね…。(オバノンはDUNE中止後、2週間立ち上がれず引きこもったらしい。そりゃそうだろうな…。)

「毎朝スタッフの前で演説していた」「やる気のない(当時人気絶頂だった)ピンクフロイドを叱り飛ばした」「ダリの難解な問いへの答え方」などなど、人の心を動かしてチームを機能させるヒントがテンコモリでした。相手が何を求めているか察知するのが天才的だし、彼の言う「魂の戦士」だと判断した相手には、容赦なく自分の情熱をぶつけるんですよね。失敗するプロジェクトの話なのに、ワクワクしてしまったわ。

もちろん、幻のDUNEを想像させるような、イラストをアニメのように動かしたりするシーンもたくさんあって映画作品も楽しめます。音響効果が結構よくて、幻の作品の片鱗に触れることができました。そういえば、ターミネーターはじめロボットからの主観映像でよく使われる、風景にグリッドがかかっていて「ターゲットカクニン」とか文字が入る演出は、DUNEの脚本で初めて出てきたのでは、と言われていました。そんな発明的な演出がゴロゴロあったのが、ホドロフスキーのDUNEなんですね~。発明がボカスカ出る作品の背景には、一人の熱い思いと強いチームがあったのです。

結局、DUNEはデヴィッド・リンチにより映画化されるんですが、私は観たことないんですがホドロフスキーがこれを観て「駄作だー!ヾ(〃^∇^)ノ」と子供のように大喜びしているのがたまらなくおかしかったですね。

ホドロフスキーが「嫌だ嫌だ観に行きたくないようリンチなら傑作に違いないんだよう」と駄々をこねているところに、父親の映画の役作りのために『魂の戦士』になりきってしまった中学生の息子タン「魂の戦士なら逃げずに観に行くべきだ!」と父親・ホドロフスキーを引っ張り出しまして、ホドロフスキーはほとんど片目を閉じるようにして観に行くんですが、徐々に「あれ?駄作じゃん!」と気付きまして。笑 「褒められたことじゃないが、人間らしい反応だ!」と自分で胸を張ってるところにキュンときました(?)。

特典映像に、プロデューサーのセドゥーとの30年ぶりの再会が入っています。久しぶりに会う老いた男二人のかみ合ってなさ、ぎこちなさ。セドゥーは「中止の傷が大きすぎて、出会うと傷が沁みた」と再会の心情を語っており何とも切ないシーンです。しかし、このドキュメンタリーでの再会を期に、二人は「リアリティのダンス」を共に制作しているんですね!

↓っていうかまた本人出演してる。どんだけ出たがりなのー!

リアリティのダンス(字幕版)

 

グッとくるホドロフスキーの格言:

「人生で何か近づいてきたら、イエスと受け入れる。離れて行ってもイエスだ。『デューン』の中止も…『イエス』だ!

完全復活じゃん。もう80ですよこの方…。

つかんでつかんで、逃げて行ってもまた立ち上がる。そんな熱い男の話なのでした。

 

東京物語

「東京物語」 小津安二郎生誕110年・ニューデジタルリマスター 【初回限定版】 [Blu-ray]

観たことなかったので借りてみた。小津安二郎監督の最高傑作とされているらしい。1953年、モノクロ。小津監督作品、なんとなく退屈そうなイメージがあって観たことなかったんだよなあ。テンポがゆっくりで始めの3分の2くらい事件らしい事件も起こらないので、やはりちょっと退屈でした。

テーマは家族、親子、都会、など。忙しない都会暮らしにより、田舎から遊びに来てくれた両親をないがしろにしてしまう、成人した子供たちの姿を描いています。これはちょっと、じゃなくかなり身につまされましたね…。親子だからこそ甘えてしまって、生活も忙しいので、もう親が老いていて自分たちの方こそがケアしなくてはいけないということにも向き合えないのです。まだ私の両親は若いですが、ちょっとずつサポートの方に回っていかなきゃいけないんだろうなあ。でも、なんだか照れくさい感じ。ずいぶん昔の映画ですが、今も昔も変わらないテーマなんですね~。

長女の志げは現代的な女性で、思ったことをズバズバ言います。出てきたときから「なんかイヤな感じの人なのかな?」と思いましたが、後半で「ああ、この人は誤解されやすいタイプなんだ」と思える演出がありました。出てくる人がそれぞれに勝手だったり配慮が無いところがあったりし、単純な善悪の対立になっていないところがよかったです。そうは言っても、長男・長女の身勝手さが目につきますがね…。

会話のシーンで、いちいち喋っている人の真正面のアングルに切り替わるのが独特でした。毎回会話を中断して撮りなおしてるんだろうか。戦死した二男の嫁・紀子を演じている原節子さんの張り付いたような笑顔が何度も真正面で捉えられるので、かなり印象に残りました。

また、女性たちの仕草をかなり細かく切り取っています。次女の京子が仕事に行く前に靴下をはくシーンがあって、なんだかエロくて忘れられませんでした。なんでだろう。この些細な仕草にしっかり尺を取っている意図自体に何かを感じたのかもしれない^@^

終戦から数年経ったばかりの、東京の風俗が垣間見られて面白かったです。中学生の息子が英語を上手に読んでいたり、美容師の長女・志げがしきりに髪型を横文字で言ったりしているのが興味深かった。比較的裕福な家族の像なのかもしれませんが、暮らしぶりは現在とそう大きくは変わらないような気がしました。とはいえ、広島東京間が一日以上かかる時代です。老人にとって、長旅は大変なことだったでしょうね。

アングルがずーっと低くて、真正面から撮られていることが多い気がしました。人が画面に入ってきたり、出て行ったりするのを強く意識させられます。腹這いで野生動物の写真を狙っているような気分でした。起こっていることはとても普通なんだけど、それをじっとりした目で観察しているような、不思議な映画だったな~。

現代版もあるらしい。一緒に「東京物語」を観た友達は、「東京家族」は観たことあると言ってましたね。「内容はほぼ一緒」とのことだったけど、面白いのかな?

東京家族 DVD

 

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