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「キングスマン」下品さと熱のアンバランス…?あんまり好きじゃない。

 

時間がちょうどよかったので、評判の良い「キングスマン」を観てきた。後半から受け入れづらいシーンが多くて、私はあまり好きじゃなかった。ネタバレ。

Kingsman: The Secret Service

 

冒頭からなんとなくこの映画は嫌いだという予感がしていた。壊れた建物が題字になる演出がダサく感じて、二人目のキングスマンが死ぬシーン(真っ二つになるところ)で既にお腹いっぱいに…。サミュエル・L・ジャクソンの出方がわざとらしくてやだ。人が死んでいる脇でウィスキーをどうこう言うのが本当に嫌。最後まで観れるだろうか、と思い始める。でもガゼルという義足の最強の女は好き。義足かっこいい。やっぱ観てみよう、と思う。

  

そのあとは面白かった。「マイフェアレディ」よろしく育て上げられるエグズィー、「宇宙兄弟」的なドキドキハラハラさせられる成長プログラム、名門大の金持ちからのいじめ、魅力的な仲間のロキシー(パラシュート訓練が良かった!)、役に立たないけど意外な鍵になるJB…。純粋な成長物語であり、素質もあり情にあついエグズィーのかっこよさが光るシーンが多くて魅力的だった。また、"snob(上流気取りの俗物)"という言葉がキーワードになっている。ハリーは現代の紳士は階級ではない、と言い、それでも階級に囚われているアーサー(マイケル・ケイン→この方はこういう気取って落とされる役ばかりだ!)。「階級」はこの映画の大事な要素。

 

ヴァレンタイン(サミュエル・Lジャクソン)はアメリカの象徴のような人物で、IT長者という設定。ジョブズのようなプレゼンで「世界中、電話・ネット無料のSIMカード配布」を打ち出す。だがスマートさはなく、変なバーゲンのような飾り文字のプレゼンボードで、服装は一昔前のラッパーのよう。彼はエコロジーの思想を激化させており、「上流階級以外の人類を殺し合わせて人口を減らす」というのがSIMカードの狙いだった。荒唐無稽なのはいいとしても、「かっこいいイギリス=正義」と対照的な「成り上がりアメリカ=悪者」という構図。けっこう攻めてる。ただハンバーガーを恭しく持ってきてハリー(イギリスの象徴)に食べさせるシーンはやり過ぎに感じた。下品も攻撃しすぎると却って下品だと思う。

 

ここ以降は本当に好きじゃない。

・反ゲイ、反堕胎、反ユダヤ人・黒人などの過激派教会でハリーが大量虐殺。ショッキングな映像だが、教会の性質もあってどう受け止めていいのか全く分からないシーンで露悪的過ぎる。エグズィー成長物語の熱が30%ほど冷める。とはいえハリー本人の目線になりきってしまえる映像技術はすごいと思った。本当にいったいどうやって撮っているんだろう。

・エグズィーがアーサーを倒すシーン。「貧乏人は手癖が悪いんでね」というエグズィーには結構しびれた。

・アーサーの代わりに「山の要塞」に飛行機で乗り込む。これは魅力的。ここで初めてびしっとスーツを着込むエグズィー。まあまだ、若い、かな…。フレッドペリーの方が似合ってる。

・マティーニの頼み方にこだわるシーンに尺がしっかり取られている。残念ながら私にはよく分からないけど、007への皮肉的な意味合いがあるらしい。おとこのひとってお酒の飲み方とかにウルサイよねー(違)

・なんだかんだで衛星を壊すのはうまくいくが(ロキシーの衛星爆破シーンは本当に心もとなくてドキドキした)、敵に囲まれ絶体絶命になるエグズィー。SIMカードの自爆装置を使って敵を倒すことを思いつく。もう、ここがサイアク過ぎた。威風堂々が流れる中、音楽に合わせて人の頭が水爆みたいにリズミカルに爆発していくの。それも、数百人レベルで。このシーンは、「博士の異常な愛情」の水爆エンディングに、「選ばれし人々」の滑稽な死という意味合い的にも、演出的にも似ている。ちなみに博士で流れる音楽は「また逢いましょう」という甘い歌。威風堂々って…。趣味が悪すぎる。ウィキによると「イギリス愛国歌」とされているそうだ。意味合い的にはアメリカの作曲家が良かったのでは?いずれにせよ、ここで完全に心が冷えた。

こんな感じだった。実際、花火映像も重ねる。悪趣味。

・とりあえずヴァレンタインのところまで行きつくが、ガゼルに阻まれ世界中で殺し合いが始まってしまう。ここで「シャイニング」のようにエグズィーの母親が娘を殺そうと包丁で扉をガシガシ壊していく。予定調和的なニオイがぷんぷんするので、恐くはない。

・なんとかサミュエルLジャクソンを倒して、机から手が離れ、世界は平和に。なんで社長自ら手を当て続けないといけない仕組みになっているのかサッパリ分からないけれど。手を当てると痛いとか言ってたじゃん。

・王女のお尻。不敬・不謹慎もいい加減にしたまえ(|||ノ`□´)ノオオオォォォー唯一残っていたエグズィー愛も0%になり、どうでもよくなる。

・ハリーのように、地元のギャングを倒しにバーに現れるエグズィー。くどい。いや、たぶん私の心が映画から離れてしまったのでくどく感じたんだと思う。

 

うーん。

良いところもたくさんあったけど、許せないところもあって個人的にはナシでした。階級を乗り越え、仲間を助ける人の思いの熱さを感じるところと、変な悪乗りでとんでもないことをやるところのバランスがおかしいと思う。それで平然として、王女の尻を狙いにいくところとか、エグズィーどうしちゃったの?子犬も殺せなかったあなたはどこへ?と。

これが男の遊び心なのか?おバカ映画として見ればいいのか?私にはよく分かりませんでした。ナイトクローラー観れば良かった。

 

とはいえ007との対比は面白いし、スパイグッズなどの「男の夢」が詰まりまくっている作品なので魅力的に思う人は多いんだと思う。私は冬の007に期待します!

 

 

深くて読み応えのあったレビュー:

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