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「トゥモローランド」相対する者の同質性

 

 

劇場でみて筋が理解できなくて「あんまりおもしろくないなあ」と思っていたのですが、DVDになってから何度かみたら結構面白かったです。とはいえやはり分かりにくいし、いまだに理由が分からないことがあります。知っている人、教えて!※ネタバレ

トゥモローランド (字幕版)

Tomorrowland

 

超分かりにくい筋を時系列で!

1889年~

パリ万博。テスラら4人が「プルス・ウルトラ」を結成し、地球とは別の次元に、科学を結集した理想郷「トゥモローランド」をつくる(ここの詳細は別の解説アニメで見ることができるが割愛)。エッフェル塔にトゥモローランドへの宇宙船を仕込む。

 

1953年

ジョン・フランシス・ウォーカー(のちフランク)が厳格な農家の息子として生まれる。ちなみにジョン・フランシス "the walker"は環境活動家。そこに名づけの理由があるのかは不明。ご存じジョニーウォーカーの創始者もいるけど、さすがに通名フランクだしフランシス抜きだとおかしいので、こちらは関係なさそう。

 

1957年

プルス・ウルトラのリクルーティングのための少女型ロボットとして、アテナが作られる。アテナはギリシャ神話で知恵と戦いの女神。少女なのに本当に強い。彼女は、トゥモローランドに入国を赦されて研究開発に従事する地球人「夢見る人(dreamer)」を探すようにプログラムされている。

 

1964年

ニューヨーク万博。11歳になったフランクが発明品を発明ショー持ち込む。審査員はプルス・ウルトラのメンバーであるデイヴィッド・ニックス。発明品は不十分だとニックスに判断されるが、アテナに気にいられ、トゥモローランドへの入国バッジを渡される。会場内に設置されたイッツ・ア・スモールワールドという遊具が、トゥモローランドへの入口として新設されていたのだった。まだ少年なのにかなりのヒドイ目に遭いながら、命からがらトゥモローランドに辿り着くフランク。成人になるまでトゥモローランドで研究開発をすることになる。

 

この間

トゥモローランドでタキオン粒子という未来や過去を映す物質が発見され、それをグーグルマップのように見られる「モニター」がつくられる。この開発にはフランクとニックスが関わっている。モニターによって地球が2015年に滅亡することが予知できたため、ニックスは地球人に地球滅亡のメッセージを送り始める。(謎1)だが、地球人は悲観するばかりで改善しようとしなかった(ニックス談)。ニックスは地球人に失望し始める。自分も地球人であることは忘れたようである。(謎2)

 

1984年~

フランクがトゥモローランドを原因不明で放逐され、故郷の農場に帰る。農場は監視され、フランクはトゥモローランドのロボット(AA)に追われる身に。フランクは農場をトラップだらけの要塞に改造し、ドゥームズデイ(滅亡の日)へのカウントダウンを眺める鬱屈した日々を送る。ここから実に30年もの間である!

 

1989年~

アテナを含むリクルーティングロボットはニックスにより不要とみなされ、解体されることに。アテナはトゥモローランドのPVホログラムを見ることができるバッジを1ダース盗み、地球に逃げてリクルーティング活動を続ける。この後、リクルーティングによる新たな人材がなくなったためか、トゥモローランドは活気を失い、廃墟化していく。(謎3)

 

2015年

アテナにより、「夢見る人度」が半端なく高いケイシー・ニュートンが見いだされる。ちなみにIsaac Newtonを後ろから読むとケイシーともとれる。作中でリンゴを投げる象徴的なシーンもあるので名づけの元になっている可能性が高い。

ケイシーはバッジでトゥモローランドのPVを見て魅了され、何としてでも行きたいと思う。ケイシーは農場に立てこもっているフランクを引っ張り出し、アテナとともにAAから逃げながらトゥモローランドに入国。だが夢に見たトゥモローランドに以前の活気はなくガッカリ、おまけに地球は58日後に滅亡すると知らされさすがのケイシーも気力を無くす。3人はニックスに捕えられ強制送還されそうになる。

ここでケイシーは、ニックスが送った「滅亡する未来」のイメージが地球人を無気力にさせていることに気づき、「とりあえずモニターを壊して送信を止めてみればいいんじゃないの?」ということになる。色々あって、自爆装置を持っているアテナが自己犠牲でモニターを壊す。ニックスはモニターの下敷きになって死ぬ。(謎4)

ケイシーとフランクはトゥモローランドの技術を地球に送り込み、まずは地球の滅亡を300日程度遅らせる。

 

2016年

ケイシーとフランクは引き続きトゥモローランドで地球滅亡を遅らせるために画策している。「夢見る人」のリクルーティングを再開し、トゥモローランドに送り込むことで科学技術の発展を促し、地球をよくする活動に従事している(んだと思う)。

 

 

分からないこと

謎1

・ニックスは地球滅亡のメッセージを送信していたそうだけど、フランクの農場の要塞を見ていると「見たければ無線で受信できる」らしい。でもこんなので「地球人全員を洗脳」できるの? そもそも伝わっていないのでは?

・よく指摘されていることだが、「改善が見られなかった」と言っているんだけど、していなくはない。

 

謎2

・失望する前に何か自分から手を打てばいいのでは?最高レベルの科学技術者を集めておきながら、みているだけなんて。しかものちにケイシーたちが技術を提供⇒即解決って…。君ら30年もなにしてたん。

 

謎3

・新しい人員が増えなかったとはいえ、そもそもかなりの人口があったはずなのになんで衰退しているの?少子化の波がトゥモローランドにも?

・ニックス以外の幹部の気配がなさ過ぎておかしい。絶対権力者?

・地球の滅亡を高みから見物しながら、自らも衰退していくなんてサムイ

 

謎4

・ニックスは年を取らなさすぎ。仮に万博の時40歳だったとして、フランクとの年の差を考えると2015年時点で90歳を超えている。年を取らないチョコ味の飲み物を飲んでいるらしいけど、それならトゥモローランドの住人は増えるばかりで全然減らないはず。ほとんど地球に送り返してしまったのだろうか。

 

 

面白かった点

相対する者同士が同質。

ニックスと地球人、ニックスは地球人に「何もしないで悲観しているばかり」と言うが実はニックスも同じスタンス。「政治家や金持ちのために環境は破壊され」って言っているけどニックスもまたトゥモローランドの政治家として既得権益を守ることばかりに目がいっているように見える。

ニックスとケイシー、ニックスは選民思想を激化させて自分の王国に引っ込んでしまったように見えるが、ケイシーも「誰もがトゥモローランドに行ける(ただし夢見る人ならね)」と結局選んで連れてきている。どこでもドアみたいなのもあるようだし、リクルーター派遣してバッジで幻想見せて自力で来れるかテストするくらいならいっそのこと全員来れるようにしてはどうか。

反発する者同士が似ているのは、まあ確かによくあることだ。

ロボットがナチュラルにAIっぽい。

全員違う顔でキャラ立ちしているし、ワクワクしたり恋に落ちたりするしとても面白いロボットの描き方だと思った。レトロ雑貨屋の夫婦ロボットも最高だった。この二人はどうやら有名人をそのままパロディしているらしい。どうりでキャラクターの作りこみが細かい。何よりアテナ!聡明で見ているだけで安心させてくれるような笑顔や、アクションシーンも最高だった。いるだけで雰囲気が華やぐ、画的にも貴重な存在だった。インタビューを持ていると普通の子供っぽかったのも驚き。子役なのに熟練した雰囲気でCGかと思った。

 

「う~ん…」だった点

ケイシーがウザい

というか周りに「質問をやめろ」「うるさい」と何十回も言わせるせいで必要以上にウザく感じる。このウザキャラは必要だったの?アテナに至っては「ケイシーがうるさすぎるから」と自分を強制終了してしまう。分かりにくい筋を説明する「質問キャラ」が必要なのかもしれないけど、自分からペラペラ話してしまうキャラがいたほうがマシだと思う。一部フランクはそんな感じだったし。ケイシーは状況を打開する重要なカギではあったけど、それ以外の見せ場があまりないキャラクターだった。そもそもあまり鮮やかな「打開」でもないし、モニターを爆破するシーンではオドオドしているだけで終始パッとしなかったなー。

ゴアシーン

「ロボットは殺してOK」というルールなのか、血の出る人間だったらR18のスプラッター映画になりそうなゴアシーンがテンコモリだった点。ロボットの描かれ方が魅力的だっただけに、「死んでいいんですよこれロボットなんで」的スタンスがちょっと…。しかも死んだら自爆するんだよ。一回きりの命なんだよー!

人間も一瞬で灰になる爽やかな抹殺方法を選んでいて、グロさはないんだけどなんだかなあ、と。「宇宙戦争」でトムクルーズが一瞬で灰にされる人間を目の当たりにして恐怖で挙動不審になってしまうシーンがあるんだけど、そういう恐怖感もなく、むしろちょっとコメディタッチにサクサク死んでいくので嫌だった。

 

まとめると面白かった

地球人はがんばってるのに殿上人たちに勝手に失望され、滅亡に導かれるも、立ち上がった地球人により延命。だがしかしその地球人も殿上人に取り込まれてしまったのでした。という感じでした。地球とトゥモローランドが普通に交流する未来エンドのほうが良かったかな。

でもとても面白かったです。未来都市を筆頭として世界観の描きこみが緻密で魅力的でした。同時にベイマックスを見たのですが、何か気になるけど特に説明のない建物や施設の数々、好奇心を掻き立てられずにいられません。ベイマックスの架空未来都市も良かったですね~!空中散歩シーンが同じようにしっかり尺を取られていて、ここだけでも見る価値大有りですね。

何よりアテナちゃんに惚れてしまった人は多かったんじゃないでしょうか^@^冒頭の万博シーンはお人形さんのような美しさなのに、中盤からはアクションもすごいです。ラフィー・キャシディーちゃん、今後もチェックしたい!

 

宇多丸さんのラジオを聞くと監督の背景から考察されていて「なるほどなあ」という感じでした。良かったら聞いてみてください。

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