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最近見た映画

 

最近みた映画のネタバレ感想文です。過去作ばかり。ラースフォントリアーの「アンチクライスト」、「メランコリア」、ミュージカル映画から「レ・ミゼラブル(2012)」、「オペラ座の怪人(2004)」、アニメから「カッパのクゥと夏休み」、あとは実話系で「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」と「最強のふたり」。

 

最強のふたり(アマゾンプライムビデオ)

最強のふたり スペシャル・プライス [DVD]

自分が経験した話をひとつ。

エレベーターに乗っていると、口で電動の車いすを繰っていた女性がいた。そこに別の女性が顔を覗き込みながら「大丈夫ですか?」「頑張ってくださいね!」と何度も話しかけていたが、車いすの方は目線しか動かないのかあまり反応がない。そのうち話しかけていた女性は降りて行った。私はベビーカーを押しており、2歳娘と車いすの女性は目線が同じくらい。娘があまりにも車いすの方をじっと見るので、あいさつを促すと「こんちは」と小さい声が出た。すると、車いすの方は娘の方をみて、にこやかに「こんにちは。何歳ですか?」と言った。

その女性とは最寄駅まで同じだった。どちらもエレベーターを使うので、けっこう長い間色々と話しかけてこられたと思う。首から上だけで娘とやり取りしながらも、巧みに車いすを繰っている。さっきはウザかったんだろうかとか、まだ2歳の娘だから話す気になったんだろうかとか、まあいろいろ考えるきっかけになったけれど、この映画も同じようなテーマを感じる。作中では気さくなドリスが障碍者の雇い主・フィリップを笑いのネタにするんだが、それが結構きわどい。しかしフィリップは気を使って話しかけてくる人間よりも素直なドリスを信用する。「あなたってこういう人よね」と決めつけて絡んでこられるのは、ウザったいものなのかもしれない。

 

マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙

マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙 スペシャル・プライス [DVD]

サッチャーの認知症と死んだ夫とのラブストーリーがほとんどを占めており、想像していたものとは違った。国政については認知症の幻想の一つに見えるようになっており、「立場をあいまいにして煙に巻く」作戦としては機能していたのかも。とはいえ、みている方が気づかないうちに認知症になった気分になる演出はハッとさせられた。やはり伝記モノは難しいんだろうなあという印象。公開があと10年・20年遅ければ、もっと深い内容が描けたのかもしれない。あと「鉄の女の涙」という副題は不要かと…。もともとの題は"The iron lady"。こちらの方がきれいだし、話の内容に合っている気がする。読後感は、「実は涙もあります!」ということよりも「でもやはり一人だった。」の方が近い。

 

レ・ミゼラブル

レ・ミゼラブル [レンタル落ち]

劇場でもDVDでも観ていたけど、今回が3回目でやはり泣いてしまった。傑作すぎる。

初めて気づいた細かい点。

・ジャンバルジャンが天に召されるときにそれまで死んだ人が映るんだけど、ジャベールが映っていない。キリスト教だと自殺は地獄に行くんですね…。シビア。ジャベールはまじめな人なので、自分の絶対的正義が正義なのか分からなくなって自殺するシーンは非常に重要だった。

・エディ・レッドメイン主役の「博士と彼女のセオリー」を見た後だったので、ジャンバルジャンの娘婿マリウスを改めて見直した。前みた時は「声が抜群に美しい、イケメンキャラのひと」くらいのざっくりしたポジショニングだったけれど、マリウスも熱演だった。それどほど全てのキャラクターが熱演していて、少し埋もれているように感じてしまったのだ!

・フランス革命が一つの軸になっているんだけど、ジャンバルジャンは一足先に一人革命を起こしていたような感じだったんだな。最初の汚い・重いフランス国旗を一人で持ち上げさせられるシーンとか、改めてうまいなあと思ったり。

・ミュージカル映画の中でも、とりわけ歌わないセリフがほとんどない。夫氏はちょっとウザったそうでした。劇場で観たら違和感なかったけど、冷静に鑑賞してしまうと気になるかも。

 

オペラ座の怪人(アマゾンプライムビデオ)

オペラ座の怪人 通常版 [DVD]

これは劇場で観たかった。レミゼラブルのような人間の挫折と成長の話ではなく、エゴのぶつかり合いの話。恋愛モノ。怪人の「コンプレックス」は何に置き換えてもいい。長年色々と教えてくれた気難しい芸術の天才よりも、10年以上ぶりに会ったばかりのお金持ちイケメン・ラウルを選ぶクリスティーン。う~ん、潔い!怪人は犯罪者でストーカーだからしょうがない、のか。怪人役のジェラルド・バトラーが官能的で、顔をほとんど覆ってしまって目しか見えないのに感情があふれ出てくるようだった。レミゼラブルのラッセルクロウのように、歌手の中で一人だけ普通の人っぽく歌っているんだがそれがまた良かった。クリスティーンの天使っぷりも素晴らしい。ただ、服装がセクシーすぎて(しかもロリ?)清楚な感じの方が役に合っている気もした。昔シカゴの舞台で観て、家族で盛り上がってしばらく「だだだだだーん♪だだだだだーん♪」」とマスクつけて歌うのが流行っていた。その時は話自体は何とも思わなかったけど、年を取らないと感じ取れないことってたくさんあるのだ。

 

カッパのクゥと夏休み

河童のクゥと夏休み 【通常版】 [DVD]

まったりしたテンポのアニメ作品。後半から泣けすぎて頭が痛くなりました。カッパ見て号泣している私を見て、ドン引きする家族…。いや、これホントに素晴らしい話でした。カッパも主人公も幼稚園くらいの妹も妙にリアルで、ディズニー作品のような「パッと見て感じる好感度」がゼロなんです。むしろちょっと気持ち悪い。かといってシュールでもグロでも全くなく、「ずーっと見ていると次第に愛着がわいてくる」というごく普通の隣人に感じる感情が起こってきてとても不思議でした。テーマは自然との共生、妖怪。ファンタジーではありますが、テーマに対してはシビアに答えていて大人が見ても何かを得られる作品だと思います。特別美しいシーンがあったりするわけでもないのですが、画の美しさで感動したベイマックスやバケモノの子よりも数倍感動できました。もちろん、自然の美しさを描くシーンはとても美しく、対照的に普通の住宅地はどこかつまらなく見えます。普通の住宅地のシーンがほとんどを占めているので、少し地味な印象になったのかもしれません。意図的でしょう。監督は原恵一監督、「クレヨンしんちゃんと大人帝国の逆襲」などでお馴染みのようです。私は初めて見ました。確かに、驚いている群衆の顔とかはモロにクレヨンしんちゃんだったりして。子供をリアルに描くのは天才的だと思いました。大人帝国の方も見たい!

 

ラースフォントリアー作品

ラースフォントリアーは好き嫌いが如実に出る監督だと思う。私は結構好き。特にドッグヴィル、マンダレイ。ドッグヴィルはキリストの話みたい。マンダレイは独善的な人が失敗しながらも「善きこと」をしようとし、結局挫折して逃げる話。人種差別の話らしいけれど、より普遍的で教訓的だと感じた。奇跡の海、ダンサーインザダークは弱者が徹底的に痛めつけられておりきつかった。同じテーマだが反対から描いているイディオッツは(本当によく分かんないんだけど)面白い。最近のニンフォマニアックは女性性がねちっこくこれでもかと描いており、残念ながら私には理解ができなかった。

共通しているのは露悪的だけど画が美しいところ。読後感が甚だしく悪いところ。でもどこか気になるテーマがあって、何かあるときに思い出したりする。人生になにか影響がありそうでみてしまう。覚悟して気持ち悪いアートを見に行く感覚に近い。

 

アンチクライスト

アンチクライスト [DVD]

アンチクライストは、筋を見るだけで「嫌いな方のやつ」と思って観なかったんだけど、まさかの夫氏が借りてきていてみてしまった。やはり女性性の映画で、私が苦手なやつだった。映像が美しく、文章だけだと鬱でしょうがない筋も映像だと観続けてしまう。しかしまあ、エグイ!怖い!トリアー作品の中でぶっちぎりナンバーワンの「見づらさ」だった。どういうことを伝えているのか、感じるべきなのかがよく分からない。女の本能?いや勘弁してよ、わたしこんなんじゃないよと言いたくなってしまう。

 

メランコリア

メランコリア [DVD]

これは昔みたことがあったが、夫氏が借りてきていたので。異常さはあるけど、暴力的・鬱なシーンがほとんどなくて見やすいトリアー映画。シャルロットゲンズブールとキルスティンダンストという絶対ありえない二人が姉妹役で出てくる。これも何を感じるべきなのか戸惑う映画。「常識的な姉」から見た「異常な妹」が、自然動物と同じような存在として描かれている、ともとれる。常識と社会に心の拠り所がある姉は、地球が滅ぶと分かって取り乱す。妹は、却って落ち着きはじめる。キルスティンダンストが裸で川沿いに寝転ぶというキレイなシーンがある。地球に近づいてくる惑星メランコリアの描かれ方も美しい。

 

おしまい