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「なぜ日本の家電がダサいと言われるのか」の考察

こういう記事を拝見して、

普段から「日本の家電、ダサすぎ…?」と思っていた私も書かずにいられない!笑 いまさらですが、飛んで火に入ってみますよ。

 

「日本の家電がダサい」と思っている人ってどれだけいるの? 

「日本の家電 ダサい」で検索すると、かなりたくさんの記事が上がってきました。ダサいと思ってた人はそれなりにいるのね。論じられていた主な「理由」は

・意思決定者が美的感覚を軽視したから(50代以上の男の人の感覚だから、など)

・技術/コスト偏重だから(「見た目の良さ」では主観的・曖昧過ぎて説得できないから)

・買う方が満足しているように思われるから

などなど。

 

ちなみに、「家電の本体デザインを重視」する人は、たとえ冷蔵庫であっても2割程度。「基本性能を重視」する人は、徐々に減っているようですが5割程度のようです。そもそも「本体のデザインの好み」も千差万別であると考えると、売れなきゃ困る作り手が、見た目に投資してデザインすることは無いであろうということが分かりますね~。(出典:http://data.macromill.com/data/20130122_kadenkounyu.pdf※)

とはいえ、「日本の家電 ダサい派」の人の、私なりの考察もしてみたい。私はプロダクトはあんまり分からないので、建築・住環境の観点から考えてみました。

 

「ダサい」とはインテリアのテイストに合わないということだという仮説

そもそもダサいってどういうことなのか。

私は「ウチのインテリアに合わない!」ということだと思っています。さらに憶測ですが、この「合わない」と思う層は最近つくられた物件に住んでいそう。

人は住んでいる環境、目に入るモノに影響を受けます。古民家やいわゆる日本家屋に住んでいても、果たしていま流通している家電がダサく見えるでしょうか。私も日本家屋っぽいところに住むことがあれば、赤いグラデーションが入った冷蔵庫とか、昭和の香りのする暖房器具とかを喜んで買うかもしれません。

どちらが良いという話ではありませんが、日本はいわゆる日本家屋や畳が多い昔のマンションに住んでいる人と、分譲マンションや住宅メーカーの新作に住んでいる人にクッキリ分かれています。割合は分かりませんがボンヤリ車窓を見ていても前者がかなり多そう。一度調査してみたいところです。しかも、両者のインテリアはかなりテイストが違う。いくら何人かの人が「家電がダサい」と思ったところで、需要のあるものが生き残っているはず。いま流通している家電は、多くの人に合ったデザインということになります。


それでは、なぜ後者の「分譲マンション、住宅メーカーの新作」などに住んでいる人に、今多く流通している家電が合わないのか。

 

最近のインテリアの主流は「装飾的ミニマルデザイン」

インテリアデザインには目眩がするほど多くのスタイルがあり、日々その流行もファッションと同じように変わっていっているわけですが、それでも大きく分けて二つのタイプがあると思います。「装飾的か、そうでないか」です。

装飾的ではないインテリアといえばシンプルな白い箱を想像しそうですが、そうではありません。仕上げなし、あるいは簡易な仕上げ、梁や素地が露出しているようなものです。今でこそ中古マンションのリノベーションなどで多く見られる手法ですが、古くは梁柱が露出している古民家などもこれにあたります。建築家のつくる住宅などではみられるけれど、断熱性能が悪かったりしてほとんど流通していない。

一方で装飾的なデザインと言えば、何もバロック的な凝った装飾のついた柱などを想像するまでもなく、いま売りに出されている普通の分譲マンションも大いに装飾的なのです。たた、今流行しているデザインは「ミニマルに見せるように装飾」されているんです。機能が表面から見てもわかるようにはなっておらず、細部などないかのようにつるっと舗装されている。一般的にシンプルモダンなどと言われていますが、ここでは敢えて「装飾的ミニマルデザイン」とします。

参考までに:「分譲マンション 内装」画像検索すると、最近のインテリアの「情報量をそぎ落とす傾向」が見えてきます。

 

家電のデザイン手法と、今流通しているインテリア手法が合っていないのでは?

この「装飾的ミニマルデザイン」ですが、日本の家電の多くはこの手法では作られていないように思えます。機能の違いがメインで、数字で追えるスペックが差別化のポイントになっています。「売り」である機能の違いは表層にデザインされていますし、ボタンを操作しやすいように目立たせる手法も健在です。それが使いやすさなどにつながっているんだろうけど、「装飾的ミニマル派」からすると「それが雑音になる」。

そんな中で、あえて機能を削ぎ落としてミニマルデザインを導入している無印良品や、機能を絞りこんで特化させたミニマルデザインのバルミューダなどに一定の需要があるのも頷ける話です。

「機能派」の見方からすると物足りないこれらの製品ですが、果たして従来の家電は今後も主流であり続けるのでしょうか?iphoneに主座を奪われた数多のアンドロイドのように、淘汰されるのでしょうか?

 

家電デザインは機能美だというが、機能について理解している消費者は多いのだろうか?

もうひとつの論点、「家電は機能か、見た目か」について。まあ、「見た目を重視する人 < 機能を重視する人」という結論は冒頭の調査で出ているのですが、^^;それでも「本当にその機能とやらは理解されているんだろうか?」という疑問が、個人的にはあります。

家電は、例えば家具や食器に比べると格段に多くの機能や技術が詰め込まれているものです。今はカカクコムなどのレビューサイトもあるし、親切な詳しい人が書いた技術面に関する記事を読むこともできます。そうすると、自分で情報を比較検討して、機能・技術面から一番良さそうなものを選ぶのが賢い消費者であって、見た目で選ぶのは浅はかな消費者であるようにも思えます。

でもそんなことができるようになったのここ数年。リコールされるような欠陥品は別ですが、家電の多くは「使える」の中の幅のどこかにあって、性能のいい商品が並んでいる今の家電業界にあって、その差は決定的な違いではないように思うのです。

今でも、レビューサイトなんか見ずに売り場にいって「手頃で」「店員がお薦めしてくれて」「見た目も許せる」家電を何となく選んでいる層も少なからずいそうです。冒頭の調査結果から参照すると、家電を購入するときに比較サイトを使う人は6割、店舗で店員の話を聞く人も6割。最終決定段階では両者とも3割程度と、同等くらいの価値を持っているチャネルのようです。(まあでも、これはマルチアンサーなので微妙です。オープンデータなので限界があります。)

 

いずれにせよ、機能のことは本来的にはマニアックなことだと思うのです。

 

「変化」はもう始まっているのかもしれない

今年の十月に、パナソニックから「ふだんプレミアム」というシリーズの比較的シンプルな家電が発表されていました。

たまたま洗濯機を探していたので、私もチェックしてきました。個人的には、デザイン上の気になる点がたくさんあったのですが、それでも今まで検討してきた国産の洗濯機よりもずいぶんミニマルで、インテリアに合いそうでした。機能的には、パナソニックの上位モデルよりも劣るというところ。機能派からしたら価格は高めで機能据え置きのようで、需要はないかもしれませんが、、

ただ、このシリーズが売れれば、曖昧で需要がよく分からなかった「ミニマルデザイン派」が可視化されます。家電業界にも影響があるかもしれませんね。

 

※毎年行われている調査の2015最新データから。