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潜水服は蝶の夢を見る(2007年、フランス・アメリカ)

潜水服は蝶の夢を見る [DVD]

アマゾンプライムで、題名が面白そうなので見てみた。面白かった。これも実話。

 

脳卒中により、意識はあるのに左目しか動かすことができなくなってしまった仏ELLEの編集長(ジャン・ドー)。おそらく彼のキャリアの絶頂期での発症なので、突然何もできなくなった絶望感が大きい。その絶望感を、狭い視界や変わり映えのしないインテリア、代わる代わるやってきて勝手なことをいう人たちなどで表現している。最終的には左目の瞬きを通じて意思疎通できるようになり、周りのサポートを得ながら小説を書くまでになる。

最初は狭い視界から見える世界と、美しい思い出だけを丁寧に描き、外に出られるようになってガラスに映った姿を少し見せ、ようやく中盤になってからマヒした全身を映す。これがすごく効果的で、「自分が自分でなくなってしまった!」というショックを自分事のように追体験することができる。

発症したその瞬間は物語のかなり後に描かれるんだけど、そのシーンの恐ろしさが忘れられない。カッコいいクラシックカーで子供を迎えに行くオシャレな中年男性が、壊れた機械のように突然同じことを何度も繰り返して言い始める。次第に歪んでいく口元。実際、脳卒中を発症するときはこんな感じなのだろうか。

時折挟まれるイメージ映像も、マヒしてしまった体から意識だけ抜け出していくようで印象的だった。

 

信心深い愛人とのエピソードはどちらかというとネガティブなもので、彼女があまり魅力的にも見えなかったため、愛人が電話してくるシーンはなんだか白けてしまった。その前に描かれる90歳の父親との電話が感動的だったせいもあるかも。発症したあとも美女が代わる代わる世話を焼きに来て、ジャン・ドーがかなり愛されているのも都合いいなーと思ったりも。ジャン・ドーは愛すべき人物という描かれ方はさほどされていないので少し違和感があった。仏ELLEの編集長がそれだけ影響力があるということなのか。