MENU

ムーンライト(2017年、アメリカ)

 

ムーンライト スタンダード・エディション [DVD]

 

アカデミー賞作品賞受賞ということで、DVDで見てみました。特にネタバレというような映画でもないです。

アメリカに住む黒人で、貧しくて、母親は麻薬中毒かつ家で商売している売春婦で、本人は性的少数者でいじめられっこ。日本に日本人として住んでいるとピンと来ないほどつらい状況にある話なんですが、映像はキレイすぎて音楽が甘すぎて、なんだかまずますピンと来ないという不思議な映画でした。母親にひどいことを言われるシーンが無音だったり、親代わりの男性が死ぬエピソードが丸ごとカットされていたりなど、一番ショックな部分を見せないようにしていることも影響していそう。そういえば、確か白人が全く出て来ませんでした。その辺りも、差別をあまり可視化しないという選択でほんわかムードに寄与していたりもするのかもしれません。

 

それよりも印象に残るのは最愛の幼馴染との淡い恋のシーンや、親代わりの男性に泳ぎ方を教えてもらうシーン。そして何より、黒人の肌の美しさでした。ネオンのように青く照り返す独特の夜の映像美は、かなり加工して作られているもののようです。そして、昼間は白っぽい光の中鮮やかな色の衣装を着た黒人たちの姿を描きます。主人公も常に原色と白ベースの黒肌に映える服を着ていて、貧しさを演出せずキレイ目な感じでしたね。ゲイという設定のせいか、細身のパンツにパリッとしたシャツを着ている青年時代も良かったし、ゲイっぽく見せないマッチョ+白黒服+金アクセサリーの成人時代も不思議とお洒落っぽかったなー。つらいはずの毎日を洒脱なトーンで描くので、終始穏やかな気持ちで見られました。

 

こういう政治的に誰もノーとは言えないテーマをてんこ盛りにして、上品に美しくまとめ上げるスノッブさがなんとなく解せなかったりもしましたが、こういうのもアリだな!と思った次第です。人生をかけた淡い恋が成就する話が嫌いな人なんていないでしょうし。