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ドリーム(2016年、アメリカ)

ドリーム (字幕版)

昨年だいぶ話題になっていた作品だけど、ようやく見た。

アメリカで「ラ・ラ・ランド」よりも興行収入が高かったらしい。映画的な分かりやすさと社会的なテーマがうまく組み合わさり、さらに息つかせない編集の妙もあってすごく見やすかった。子供にも見せたいような映画。

舞台はロシアと宇宙開発のスピードを競っていたNASA内で、超優秀な3人の黒人女性が差別の壁を乗り越える様子を描く。超人的に頭がいい人たちで、しかもNASAという特殊な環境というわけで、黒人差別の映画としてはかなりエクストリームな状況。それが短時間でモリモリ「立ちはだかる壁→課題解決」というセットを繰り返す原動力となっている。

 

興味深かったのは、差別にもレイヤーがあるという見せ方。映画内の最下層は「黒人女性」で、次に「黒人男性→白人女性→白人女性(管理職)→白人男性→白人男性(管理職)」となっている。主人公たる黒人女性の奮闘はもとより、黒人男性は黒人女性に「女だてらに」というし、同じ女性でも白人から黒人に向かってナチュラルに差別している。一方で差別する側もさらに上のレイヤーの立場からは差別されているというわけだった。

その構造がすべて見えているのは最下層にいる黒人女性だけで、立場が少し変わると、もう自分の差別感情が見えなくなるというのも興味深かった。最終的には、白人男性(管理職)が差別の象徴をぶっ壊すんだから、すかっとせずにはいられない。

現実はもっとくだらない慣習が横行しているし、実力主義の素敵な管理職ばかりではないが、「ロシアに絶対勝たなければいけなかったNASA」という魔法がすべてを可能にした、というふうに受け取った。