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15時17分、パリ行き(2018年、アメリカ)

15時17分、パリ行き(吹替版)

実際に起ったテロ未遂事件を、実際の人物(主人公3人)が演じている作品。

身を挺してテロ犯を抑えた3人の主人公を軸に、3部に分かれている。第1部は3人のパッとしない幼少期、第2部は3人がヨーロッパ旅行をする青年期、そしてその旅行中にテロ犯を見つけて取り押さえ、けが人を救う第3部。勇気を持って何百人も救ったということで、この3人はフランスを始め各所で受賞したそうだ。

 

しかし、3人のぐだぐだヨーロッパ旅行を描いた第2部はけっこうつまらない。リアリティーに徹しているせいか、ホームビデオを見ているような感じだ。歩き疲れて不機嫌になったり、何度も自撮したりといったシーンが続く。主役3名が魅力的に思えず、かといって旅情を楽しむでもない。少年期を描いた第1部は全部役者が演じていて、3部の中で割と映画として観れる感じではあるのだけど、はみ出し者の主人公3人がライフル大好きで戦争ごっこに明け暮れており個人的にはドン引きした。いや、まあそれが実際の姿なんだろうけどさ…。

短所もある平凡な人間でも、正しい心を持っていれば正しい行いをすることができるというシンプルにいい話であり、子どもの教材にもなる映画だとは思う。そこはやはりクリント・イーストウッド監督作品で、古き良きUSAを称賛する雰囲気があるのだけど、そんなことを言ったら意地悪だろう(って既に言ってるか)。

 

ダニス・タノヴィッチ監督の「鉄くず拾いの物語」は同じく実際の人物が演じた作品だが、こちらは家族の人間模様や風俗の描き方が面白く対照的だった。

クリント・イーストウッド監督は、現実世界の風情や人間模様に、もはや興味が無いのかもしれない。理想を世間に知らしめるという義務感なのか。あるいは、第3部での「善い行い」との対称性を際立たせるねらいがあるのかもしれない。

わからないが、観客を突き放したような、独特の読後感のある映画だった。