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ホドロフスキーの虹泥棒(1990年、イギリス)とホドロフスキーの惑星(1994年、スイス)

ホドロフスキーの虹泥棒 [DVD]

ホドロフスキーの惑星 [DVD]

同じような題だが「虹泥棒」はホドロフスキー監督の映画、「惑星」はホドロフスキーをテーマにしたドキュメンタリー。どちらも20年以上前の映画で、日本ではようやく2016年にDVD化された。DVD化に時間がかかったのにはいろいろ事情もあろうけど、見て思ったのはあまり評価されていないからだろうなということ。

映画の方はホドロフスキーらしさが微かな煌めきくらいに希釈されているし、ドキュメンタリーは「ホドロフスキーのDUNE」に遠く及ばない出来だった。


ただ、なぜここまで「虹泥棒」がダメかということを実は「惑星」の方で本人が語っており、どうせ見るならこの2本を続けて見るしかない。真のホドロフスキーファンならそういう覚悟でこの2本を合わせて見るべきなんである(`・ω・´)キリッ(暑苦しい)

 

「虹泥棒」は「エルトポ」、「ホーリーマウンテン」、「サンタサングレ」などの傑作が公開された後につくられた。メジャー資本が入っており制作にはかなりチャチャが入ったようで、その辺りの苦労は「惑星」の方で本人が語っている。

一番の違いは脚本がホドロフスキーでないことだろう。ホドロフスキーは映像演出のみ、と考えたほうが良い。だからいつもの神話的なストーリーではなく、凡庸な話に奇妙な映像がついているという状況になっている。

もう二度とやりたくなかっただろうし、実際それから20年以上、2013年の「リアリティのダンス」まで長編映画は撮っていない。

 

冒頭の大富豪の食事会風景や、下水管の中にある富豪の甥の家はいつもの独特の世界観で、ド派手でありえないようなシチュエーションだがセンスがよく、ほっとするような居心地の良さもある。身体障害者や娼婦、生き物の死骸といったいつものモチーフも無事出てくる。ただ、どれもいつもよりおだやかな表現にとどまっている。

全体としてはホドロフスキー風味の普通の映画を見ているような感覚。ホドロフスキーの世界観は、脚本こそが大事だったのだなー、と気づかされた。

 

余談だが、2013年の「リアリティのダンス」は素晴らしいのでぜひ見てほしい。ホドロフスキー特有のエグい映像が少しだけ(少しだけね)見やすくなっているし、かと言ってストーリーの唯一無二さは健在だし、映像技術の進化もあって瑞々しく美しいしで欠点が見当たらない。

リアリティのダンス(字幕版)