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スリー・ビルボード(2018年、アメリカ・イギリス)

スリー・ビルボード (字幕版)

想像とかなり違ったけど、だんだん引き込まれる濃い人間ドラマが魅力的。ネタバレしない方が良さそうな映画。以下ネタバレアリの感想です。

 

最初は、娘を殺されたお母さんが警察やレイプ犯などの社会悪と戦う物語なのかとボンヤリ思っていた。大筋はその通りなのだけど、まあ全然違う。まず、このお母さんが想像の10倍は暴力的なのにびっくり。自分を嘲笑する相手に容赦なく、子どもだろうが女性だろうが何倍にもして返す。挙句、娘には別れ際に「レイプされたらいいわ!」と言っていたことが判明しドン引き。そもそも娘は反抗期のパンキッシュな娘であり、もちろんレイプ犯は最低なのだけど、娘が一人夜道を歩くことになった経緯も同情できるとは言えない。息子は気弱で何もしないし、元夫は短気な暴力夫だし、冒頭でこの人が一番悪いのか?と思われた警察署所長は末期がんなのに周りを思いやる良い人。そうはいってもこの人は悪い人だろうと思われた暴力警官は、ウィットに富んだ母を大事にしており、救えないほどおバカで、所長を本気で崇拝し、ゲイであることを秘密にしている…などなど、なんだか憎めない。

悪人と善人が一人の人間の中に存在することをこれでもかと描いていて、不思議と引き込まれる。「人は変われる」ということも、説得力を持って描けていたと思う。

小男(GOTのティリオン!)や、元夫の若い恋人が芯の強さや知性の輝きを見せるシーンもとても良い。

人間愛がちりばめられた味わい深い作品だった。