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女は二度決断する(2017年、ドイツ)

女は二度決断する(字幕版)

すごく楽しみにしていたし、すごく好きなタイプの映画だったのだけど、ラストがイマイチ納得いかなくてずっと感想をかけなかった映画。

 

監督は欠かさずチェックしているファティ・アキン監督。愛や正しさの意味を問うような作風で、とにかく熱い映画が多いんです。土地の風俗を描くのがまたいいんだよね。ここまで土埃やスパイスのにおいがしてきそうな映像を撮れるのってすごい。

今回はトルコ系移民と結婚したドイツ人女性(ダイアン・クルーガー)が主役で、壮絶な復讐を遂げるストーリーでした。

 

ダイアン・クルーガーに絡んでくる人物たち——夫の母親や、親友、弁護士、ネオナチの父親など——の存在感が際立っていました。一つ一つのセリフ、表情が丁寧で効果的で…。脇役が脇役ではないかんじ。

当然、今回初めてドイツ語で演じたというダイアン・クルーガー(アメリカ人だと思っていた!)も最高です。中でも「完璧ではない人物」という描写が非常に良かったです。思い込みが激しくて、100%応援したくなる描き方はされていないんですよね。それでも、彼女を軸に感情が揺さぶられました。息子のベッドでオンオン泣くシーンとか、もうね。

ネオナチとトルコ系移民といういかにも映画的に作られた感じのある設定なのに、全員が実在の人物のような厚みがあります。こういった「人物と感情」を表す演出が死ぬほどうまい。

 

ただ、最後の「生理になった→自爆することにした」という流れで、一瞬「生き抜く」という選択をしたかと思ってしまってショックだったのです。

今になって考えれば、このような状況で犯罪者を野放しにして一人で生きていくのは無理だったろうから(自分だったら毎日のように死んだ方がマシだと思いそう)、案外に爽やかなラストだったのかもと思い直しました。

 

「人生とは?愛とは?」という問いを投げかける骨太の映画といえば、ファティ・アキン監督なのです。