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最近観た映画

英国王のスピーチ

英国王のスピーチ スタンダード・エディション [DVD]

予告編を見て面白そうだったのと、アカデミー賞はじめたくさんの賞を取っていたので借りてみた。吃音に悩む英国王子がはからずも王になり、吃音を克服するストーリー。魅力的な人物が人生をかけて何かを克服する映画なので良いに違いないのだけど、目標は「用意された原稿をちゃんと読む」ということで、ちょっとだけ拍子抜けしてしまった。世の中は第二次世界大戦に突入する頃で、クライマックスはドイツとの開戦に向かって国民を鼓舞するためのスピーチ。全国民が固唾を飲んでスピーチに耳を傾ける中、王が絞り出すように原稿を読み上げるシーンは感動的。

 

英国王ジョージ6世を演じたコリン・ファース。エピソードから覗える神経質そうなところ、実直なところなどがよく現れていて良かったと思う。緊張感のオーラを纏っていて、画面に出てくるだけでこちらも緊張してくる。

実際のジョージ6世にはまったく似ていない。

 

妻役のヘレナ・ボナム・カーター。この方はスィニー・トッドやハリポタの魔女っぽいイメージが強くて、こんな抑えた優しげな役もはまるのかと驚いた。

やっぱりこっちのイメージだよねえ

とはいえ、英国王のスピーチでの演技が評価され晴れて英国アカデミー賞助演女優賞を受賞したようだ。確かにこの映画での彼女は、目立たないけれど英国王の心を支える大事な役回り。特に「素敵な吃音、幸せになれそう」というセリフが泣けた。本人がコンプレックスに思っていることも丸ごと愛してくれる人の存在が、心を強くする。

 

実際のエリザベス王妃。幼女は現エリザベス2世。家族は結びつきが強く、幸せだったようだ。

 

七人の侍

七人の侍(2枚組) [東宝DVDシネマファンクラブ]

観たことなかったので観てみた。面白くて、通しではないもの5回観た。三船敏郎の「菊千代」は、漫画「ブッダ」の「タッタ」みたいなアニメチックな動きをする。徹底的に子供のようにふざけているので、逆に「百姓の本音」を吐露するシーンは心を打つ。もちろん、死に際の凄味もよかった。泥に汚れた尻が雨水で洗われているシーンが忘れられない。そういえば出演者全員、少しやりすぎなくらいの、歌舞伎のような大きい動きだった。そして、現代の映画では考えられないくらい、簡単に死ぬ。この頃の映画はそういうものなのかもしれない。

三船敏郎の菊千代。「バケモノの子」にも似たキャラクターがいるのね。

やっぱりコレ。漫画ブッダのタッタ。

最後の決戦は土砂降りの中ぬかるんだ村の中で行われるんだけど、モノクロ…ぬかるみ…鎧…決戦…と来て、「神々のたそがれ」の画にそっくりだと思った。このぬかるみのシーンは、なんと極寒の2月に行われていたらしい。演者は結構な薄着なので、梅雨時期かな?くらいの印象だったのだ。

今見ると寒くて死にそう…

「七人の侍」と「農民」は相いれない関係なのだけど、「七人の侍」と「野武士」は、実は裏表のような関係。勘兵衛たちも、落ち武者の気持ちには寄り添えるけれど農民の気持ちは理解できない。それが勝四郎と志乃の関係や、最後の勘兵衛のセリフにつながっているようだった。農民と侍の間の存在であった菊千代は、危なっかしい感じを受ける反面もっとも勇敢であり、もっとも多くの野武士を討って最後には大将を倒す。私が観たのは3時間もあり、特定の主役がいなかったけれど、短縮版は菊千代の映画であるかのような全く違う編集をされているらしい。観てみたいけど、手に入らないかなあ。

一番印象に残ったのは、野武士の砦が火事で焼け落ちるシーン。利吉が妻を取り戻そうとするが、火勢が強すぎて近寄れない。このシーンは本当に熱そうで、実際に火傷が酷かったらしい。そのあと、「あれはおらの女房だ」と泣き崩れる利吉。こと切れる平八。ううむ…。

また観たくなりそう。

 

そして、私たちは愛へ帰る

そして、私たちは愛に帰る [DVD]

「愛より強く」のファティ・アキン監督作品で、「愛より強く」の連作にあたるらしい。内容や設定は全く違うんだけど、死を乗り越えてなお愛で結びつく人たちの人間模様を描いた作品。驚くほど重要人物があっけなく亡くなっていき、映画のテンポが早い。それでも地に着いた良い読後感を与えるのは、一つ一つのセリフが重くてきれいで、人の温かさが丁寧に描かれているせいだろう。また、ファティ・アキン監督ならではのその国独特の食や文化への愛ある描き方も良い。

印象に残ったシーンは、ドイツ人母スザンヌが優しい目でアイテンを赦すシーン(パッケージのやつ)、ネジャットが幼い頃父に言われたことを思い出して泣くシーンなど。耐えがたいことを赦せる人々が美しい映画なのだった。

 

レスラー

レスラー [DVD]

監督ダーレン・アロノフスキーによると、「ブラック・スワン」の姉妹映画とのことで観てみた。確かに主人公の背後から追いかけるようにする撮り方、クラブで薬を飲まされて大事な失敗をすること、肉体を酷使する痛そうなシーンの数々、肉親との不仲、鏡越しの自分の姿、そしてラストシーンなどそっくりだった。ただブラックスワンのニナは内側に、自分を害する方にどんどん向いていくのに対して、レスラーのラムは外交的で気さく、基本的には機嫌がよくて心が安定している。幻覚を見たりもしない。ラムは魅力的な人物なんだけど、なぜかレスラー同士の試合外の絡みがないのが意外だった。(そういえばニナも友達のいない子だった。)

個人的には、「ブラックスワン」は面白かったものの「レスラー」は楽しめなかった。単純にプロレスに興味が持てなかったせいだと思う。全て八百長なのも、慣習なのだろうけど楽しみ方が分からない。うーん、ごめんなさい!

 

***

 

最後に過去の映画の感想文です。