建築家の伊東豊雄さんの本を読んでいたら、彼の代表作の一つである「シルバーハット」という自邸についてこんな記述がありました:
「チェッカーズというタレントの映画でシルバーハットが撮影されたことがある。」
シルバーハットと言えば、同じく彼の代表作であるWhite Uの隣に建っていた仮設テントのような不思議な住宅です。「CHECKERS in TAN TAN たぬき」は1985年公開、シルバーハットの竣工年は1984年なので、新築の時に撮った映画ということになります。シルバーハットは今見ても斬新な建物ですが、当時最先端の建物として撮られたんだろうなあと思います。その後White Uは取り壊され、シルバーハットは移築されましたが、実際どんな風に建っていたのか知りたかったので見てみました。
見てみると確かに重要な舞台の一つがシルバーハットでした。売れっ子写真家の家で、物語の重要なパートを担うアイドルが泊まりに来ます。あのアルミの家具に座ってセリフをしゃべっていたので感動しました。
「ごめんね、こんな狭い所で」というセリフがあって、これは伊東さんの手記でも「娘が自分の部屋でのロケの様子を夢見るように眺めてたけど、こんな狭い所でというセリフにえ、狭い所?とハッとなっていた」と書かれていたので笑ってしまいました 笑 ただシルバーハットは夜のシーンが多く、娘さんの部屋とポーチのところがメインだったので全体像がよく分かるほどではありません。まあそれでも十分かな。
ストーリーはチェッカーズというアイドルグループが実は狸だったというもので、バレて落ち目になるものの最後はファンたちが「たぬきだっていいじゃなーい」みたいなことを言って復活していましたよ。「昔のアイドル映画」というのはアイドルに関心が無い自分には見る確率がゼロに近いものなので、この度見る機会ができて良かったです。
当時大人気だったグループの映画の舞台ということで、その当時シルバーハットがいかに最先端でオシャレな存在と見られていたか分かった気がします。今の建築家がつくる建物がオシャレな存在としてドラマに出るか?と言えば否で、例えばシャープのテレビが隈研吾さんの茶室で撮られているとかの例はあるんだけどドラマはないですね。「おしゃれなところに住んでいる設定」だと、都心高層マンションや大手の設計事務所による豪邸などが多いようです。現在の多くの人たちに建築家物件に住むことに憧れや価値はないということを示しているようで、なんだかな~と思いましたとさ。