ダニス・タノヴィッチ監督作品。
これは絶対見たい!と思っていたのだけど、映画作品としてどうかというよりは、この事件の一刻も早い映画化が重要だったんだろうなという印象でした。映画化にはかなりのハードルがあったようで、事件が起きたのは20年以上前なのに、今でも事件の当事者である固有名詞はほとんど出ていません。それを伝えるために、あえて「映画化するための苦悩をする人たちの映画」という入れ子構造をつくって、その中で事件の当事者である「ネスレ社」の名前がちらっと出てきます。わざわざ「ネスレの名前を出すとヤバい→ラスタという仮名にしよう」という話を映画の中でするというあざとさ。これで大丈夫…なのか?この事件は今でも係争中らしいです。
告発者であるアヤンは事件を知ってすぐに行動を起こすものの、相変わらず国産のミルクの営業をしていたり(それって意味なくない?)、脅されて買収に乗ったり、妻や父に言われてその当日にやめたりと短期間で行動がころころ変わるのでイライラしてしまいました。家族を盾に取られていたこともあるとは思うのですが、登場時からわりと突発的な行動をする人物だという風に描かれているように思います。
また、粉ミルク自体には問題がないので、いきなり販売禁止にするのではなく、販売方法や使い方の教育を徹底するという方向性はなかったのかというのも気になりました。水を沸かして冷ますことくらい、お金がなくてもできるのでは…?母乳が出ない人もいるので、単純に禁止すべきというのも正解とは言えない気もするし。
というわけでモヤモヤしてしまったのですが、国際企業という目に見えない魔物と戦う一個人をヒロイックにではなく普通の人として描いているのはさすがだなと思ったし、月並みですが国際企業の弊害のひとつの形を見ることができました。