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忘れられない映像体験「ジェミニマン(2019年、アメリカ)」

ジェミニマン【DVD化お知らせメール】 [Blu-ray]

いつも映画の感想を書くときは「題名(年代、製作国)」なのだけど、興奮して副題もいれてみた。あまり期待してなかったのに、映像体験がすごすぎた。

 

ジェミニマンは「ブロークバック・マウンテン」や「ライフ・オブ・パイ」で知られるアン・リー監督作品。ライフ・オブ・パイの時もそうだったのだけど、革新的な映像技術に積極的に取り組んでいる。

ジェミニマンは、映像技術が新しすぎて「正しく(?)」上映できる映画館が少ないという触れ込みだった。ならばということで、偶然ジェミニマン対応映画館の近くに行く機会があったので見てきた。

1秒間に24フレームというのが通常の映画のフレーム数なのだが、この映画は120フレーム。これが、特に早い動きを追うアクションシーンで効果を発する。まるでその場にいるかのように、全ての情報が目に入ってくる。ぎこちなく、嘘っぽく見えがちな素早い動きも、120フレームもあると滑らかに、優雅に見える。

※例えば映画「ジョーカー」では、ジョーカーになる前のぎこちないアーサーの姿を24フレームで、ジョーカーになって優雅に階段を下りてくるシーンを48フレームで撮っている。その違いは、多くの人に実感されたと思う。

上記に加え、3D、4Kという条件もある。それを上映できるのが、日本では3か所しかないらしい。埼玉と、福岡と、大阪だ。ちなみに、アメリカだとそもそも存在すらしない。日本人はせっかく恵まれた環境にいるのだから、この機会に見るべきではないだろうか(いきなり何)。

 

ちなみに、ジェミニマンは現在すでに赤字が確定しているらしい。正しく上映できるところがないなら、そりゃしょうがないよね…と思ったりもした。実際に見てみて思ったのは、「映像体験としてはすごいけど、ストーリーは新鮮味も面白みもない」ということだった。

 

概要は、「凄腕スナイパーが、自分のクローンを勝手に作られ、そのクローンに命を狙われる」というもの。この設定だけで残念な感じがしないだろうか。私は、した。微妙な昔感と、圧倒的既視感。

たぶん、ラストはクローンをつくった黒幕とスナイパーとの闘いだよね。たぶん、クローンは黒幕のことを親みたいに慕っているはず。でも、最後に「本当は愛されてなんかいなかった」と気づき、スナイパーではなくクローンが黒幕を殺すはずだ。その前に、スナイパーがクローンを熱く説得するシーンも入るに違いない。

 

驚くことに、上記のストーリーで95%は合っていた。どこが間違っているかは、実際に見てみて確かめてほしい。

 

ストーリーは置いておいても、この映画はやはり素晴らしかった。

まず、映像技術とは関係ないのだけど、目の前で話しているような音響のすばらしさに気づく。次に、クローンとスナイパーが撃ち合うアクションシーンに入ると、その滑らかさ、本当にそこにいるような存在感に驚いた。そして一番感動したのは、バイクでのアクションシーン。細かい動きが、情報が、全部目の中に入ってくるように見え、音響も相まって自分が実際にバイクに乗って逃げているのだとしか思えない。似たような映像は過去何度も見ているはずなのに!ちょっとしたシーンであっても、あまりの没入感に普段気になる字幕が全く目に入らず、ごく自然に英語を聞き取っていることに気づいてゾクッとした。うまく説明できないんだけど、没入感のレベルが違うのだ。


一方で、会話中心のスローな画面では、却って嘘っぽく感じるところもあった。特に最後の大学でのシーンは、クローン君の顔だけ合成したような(まぁ実際そうなんだけど、)嘘っぽい雰囲気で残念だった。

 

けっきょく「見ないと分かんない」という最悪の感想文になってしまった。この手法が一般的になっていけば、ますます映画館の価値は高まっていくと思う。

問題は、スクリーン数が少ないことに加え、まだまだ鑑賞料金が高くて一般的にはなりづらいということ。これで撮った007とか、見てみたいなー。技術の一般化に期待したい。