スペインの内戦で、大尉の妻の連れ子として不幸な目に遭う少女の話。本好きの少女は、厳しい現実から逃げるようにファンタジーの世界で遊ぶ。しかし、ファンタジーの世界にも恐ろしい影が落ちていき…。
個人的に、「戦争」とか「社会問題」「人種差別」「マイノリティ」みたいなテーマは興味もあって意識的に観ています。
この作品は内戦をテーマにしつつも、ファンタジーが絡んでいるということで「何か面白そう!」とかなり前のめりに観てみました。
結果、とても面白かったのですが結構きつかった…。キツい理由は、グロいから。拷問や殺人のディテールがリアルにアップで描かれるので、気持ち悪かったです。
これと併せて借りていたのが「ブラック・スワン」だったので、グロキツイ×グロキツイで完全に選択を誤ったなと思いました。ラビリンスという名前に騙されました。
ただ、グロいだけではなく、題材も面白いし出演者も演出されている人物像も魅力的で、ファンタジー部分の世界観も緻密で独創的。見ごたえがありますし、観てよかったと思いました。ファンタジー世界の描かれ方は、水木しげると残酷なグリム童話が混ざったような、忘れられない悪夢のような世界観で面白かったです。
全編スペイン語です。
以下、ネタバレありの備忘録。
この映画の一番の素晴らしい所は、「戦争で割を食うのは子供である」ということが明確にメッセージされており、そのこと自体がエンターテイメントになっている所だと思います。
それをストレートに描くことももちろん可能ですし、そういう映画は多いのですが、ここでは「子供の想像力」と「戦争の悲惨さ」が混ざり合って恐ろしい世界を紡ぎ出しており画期的でした。
戦争と、それに傷つく子供の心を描く
主人公の少女は読書好きで夢見がち。スペイン軍の大尉と再婚した美しい母とともに、ゲリラとの戦いの最前線に連れて行かれます。大尉は残酷な人間で、罪のない一般人をリンチして殺すなど「自分が死ねばいいのに^^」と思ってしまうようなエピソード満載です。そんな所に連れて行かれたからか、少女の心は逃げ場を求めるようにファンタジーの世界に浸ります。(実際はファンタジー世界がリアルであるかのように描かれており、とても魅力的な映画のエッセンスとなっています。)
しかしゲリラとの戦いが進むにつれ、少女のファンタジー世界でも厳しい「試練」が課され、恐ろしげな食人妖怪が出てきたりなど全く心穏やかではありません。特にこの食人妖怪のエピソード…豪華な食卓に並んだ美しい料理と、気持ち悪すぎる妖怪の姿、積み上げられた子供の靴(→食卓のごちそうは子供だった…!)など、かなり作りこまれています。よくこんな世界観を描けたなあと感心してしまいました。そして、自分もリアルの世界できつい思いをしていると、やたら独創的な悪夢をよく見るようになるので、少女ちゃんの心の荒廃っぷりがちょっとだけ分かるような気がしました。ちょっとだけですが…。
↑↑↑こいつです!!!キモイでしょ
助かった女と、助からなかった少女
母も死に、心の支えとなっていた女(メルセデス)も捕まってしまい、絶望のどん底に落とされる少女。生まれたばかりの弟を連れて、彼女の心の拠り所である「王国(=パンズ・ラビリンス)」へ逃げようとします。
同時期に、大尉から逃げおおせたメルセデスが少女を探しに来ますが、時既に遅く、少女は大尉に殺されます。そして、薄れゆく意識の中で、王国に王女として迎えられます。
なぜ少女は死ななければならなかったのか?それは、やはり「戦争で割を食うのは子供」であり、実際に独裁政権が乱立したこの頃のヨーロッパでは大勢の民間人、そして何より子供が犠牲になったからだと思います。
そして、たくましく生き残ったメルセデス。大尉に唯一怪我を負わせ、大尉の死に目にもこっぴどく大尉を絶望させる、勇敢で強い女です。ですが、ゲリラは後にスペイン軍に残滅させられていることは歴史が伝えています。
戦争映画の常として、重苦しく救いのない内容にはなっていますが、子供の瑞々しい想像力とひたむきさを主題として描くことで、忘れられない名作となっているように感じました。
(ただ、もうちょっとだけグロ要素を減らしてくれても…良いと思うんだけど…(:D )┼─┤バタッ)
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