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「チャッピー」観た 南アのプア・ホワイト・カルチャー

 

チャッピー  CHAPPIE (字幕版)

 

※ネタバレレビュー

 

みたたたたー!めちゃ期待してたのになぜが劇場版を見逃した「チャッピー」ですが、先日無事DVDでみました^@^

期待した理由

・第9地区のブロムカンプ監督が撮った

・ダイアントワードが出ている!!

・ダイアントワードのニンジャとヨーランディーが実名で出ているるるる!!!(落ち着け)

・部隊は南ア、ヨハネスブルグ(←ブロムカンプ監督の出身地)

 

最初に言いたいのですが、「チャッピー」はダイアントワードのプロモーション映画みたいでした。BGMも、装飾も、服装も、いつものダイアントワードそのまんまです。「テンション」ズボンも。あげくチャッピーにも「テンション」ってスプレーしてましたね^^;ウケタ

 

ダイアントワード(Die Antwoord)とは?

・南アのミュージシャン。

あまりにもシンプルなウィキを引用すると:

ダイ・アントワード[1](Die Antwoord) (アフリカーンス語で"答え"の意。アフリカーンス語での発音はディ・アントゥード)は、ケープタウン出身のラップグループ。リードラッパーのNinja、サイドラッパーのYo-Landi、DJのDJ Hi-Tekの三人で構成されている。レイヴに強く影響を受けたヒップホップが音楽的特徴であり、また世界各地のフェスで行われる彼らの独特なパフォーマンスには定評がありカルト的信者が多くついている。

アフリカーナーのプア・ホワイト文化である「ZEF」を提唱した一組でもある。

NinjaとYo-Landiはチャッピー (映画)に出演している。

とのこと。

・彼らの面白さはPVの世界観に色濃く現れています。とりあえずPVを見てみましょう(虫、汚物注意)

原始的でおぞましい感じがたまらん。夢に出てきそうなキモ気になる映像

・レディ○ガをおちょくったPVを発表して怒られたりもしていました。しかもこれ、ガ○様にライブに参加しないかと呼ばれて、断ったアンサーソングになっているらしい。(虫、生肉、汚物注意)

・これは音楽も映像も普通に感じるんですが、MARILYN MANSONやCARA DELEVINGNE、DITA VON TEESEなどが出演しています。ディタちちまるだしだけどこういう人だったのか…あと周りがおかしすぎてマリリンマンソンが普通に見える。(流血注意)

 

これらの映像を見ていて、個人的に気になっていたアーティストだったんですが、まさか映画に出るなんて思ってもみませんでした。しかも実際に「チャッピー」をみてみると、チョイ役どころか始めから終わりまでガッツリ演技して、BGMも大部分彼らじゃないですか!これはもはやPV映画と言えるのでは。廃墟にある彼らの「基地」が映画のシーンの大半を占めますが、廃墟にポップなグラフィックアートや衣装を合わせた世界観はかなり魅力的でした。

 

個人的に、彼らの面白いところは

・プリミティブな感じ(裸、異形の人たち、汚い質素な部屋)

・子供っぽさ、無垢さ(感情のない見開いた眼、同じ動きを繰り返すシンプルなダンス、小道具の小動物・おもちゃ)

・暴力(流血、虐待、銃)

・これらとヒップホップ的なグラフィックとの混ざり合い

だと思うのです。

目を背けたくなるような表現がある中で、純粋さみたいなものも感じる。「ねこ汁」とかにも近いのかな?他意も文脈もない激しさが、却って癒しになるような感じです。

 

南ア・プアホワイト的人生観

映画評論家の町山さんのチャッピー解説を読んでいると、同じく南ア(ヨハネスブルグ、ダイアントワードはケープタウン)出身のブロムカンプ監督についてこういう話があって

(町山智浩)彼はやっぱり南アフリカで育って。彼が子どもの頃はアパルトヘイトの終わりの頃ですね。で、アフリカ人。そこに住んでいる先住民の人たちを少数の白人が弾圧して、上に君臨してて。それがまあ、ひっくり返ってですね。ネルソン・マンデラの戦いによって。で、今度は白人と黒人を平等にしなきゃならないんだって、もうすごいいろんな社会的な軋轢を彼自身、子どもの頃に見てきたんですね。

以降「育ち」についての考え方になるので割愛しますが、ダイアントワードはまさしくプア・ホワイトとアフリカンカルチャーのミックスなのですね。異形の人たちも、汚い質素な部屋も彼らの一部分であって、映画の中でも「そういう人たち」という位置づけになっています。人間の心が芽生えたロボットのチャッピーは、そこから脱するのか?脱しないのか?という話になるかと思ったのですがそうではなく、最後は第9地区でもおなじみのバラック家屋が映り、はみ出し者たちがロボットとして永遠に生き長らえるというちょっとよく分からないラストになっていました。

 

ストーリーの途中では、チャッピーは「創造者(maker)」(←スラムドッグミリオネアの青年!)から「創造力を邪魔されるべきではない、お前には無限の可能性がある」と焚きつけられたり、「父親(daddy)」のニンジャから「ギャングらしくクールに生きろ」「死んだ犬と、生きる犬。どちらになりたいか」と迫られて「生きること」を選択したりと「這い上がっていくストーリー」あるいは「育ち方で人生が変わるストーリー」のようにも見えたのですが、そうではない、と。

 

ブロムカンプ監督としては、「忌避される者からの脱出ストーリー」を描きたいわけではなく、いつでもどんな人でも「そちら側」に行くことがあり、ただそこに存在しているということを描いているのだろうか、と思いました。第9地区では「栄光からの『そちら側』への転落ストーリー」をブラックユーモアたっぷりに描いたように思えたのですが、「チャッピー」を見るとそういう意図ではなかったのかも、とも。

 

生きる者の階級ジャンプと見せかけて、輪廻の話?

また、チャッピーのママ役をしていたヨーランディー(かわいい)は、死後チャッピーによってロボットとして蘇るという未来を予想させて映画は終わるのですが、野暮なことを言えば夫を守って死んだはずの自分が、自分ではないロボットの体で蘇るって結構な地獄だと思ったんです。映画フランケンシュタインでも、女性が生き返った自分の醜さに耐えられず自殺していましたよね。体と魂は分断できるという風にチャッピーは思っているし、そうするんだけど、たぶんそうではない。私見ですが、心の大半は、指先の感覚や動いた時の「自分らしさ」への確認に拠り所があるように思うのです。少しずつ老いていくのさえ受け入れられない人がたくさんいるのに、急激な人からロボットへの変化って耐えられるんでしょうか。一方、「創造者」は生きたままロボットへ変えられ、彼もそれを受け入れているように見えるのですが、冒頭でも「死にたくない!」と言わせたりしてあえて「どんな形でも生きることが大切」というキャラクターとして描かれています。

作中、赤ん坊のようなはずのチャッピーが死んだ人を見て「生きるステージが変わったんだ」といきなり仙人になったようなことを言うシーンがあるのですが、個人的にはここでブロムカンプ監督の意思を感じました。「魂は生き続ける」「体は器」という仏教的輪廻観がベースにあって、ロボットとして生き続ける人生を、普通の話として、あるいはどちらかと言うとハッピーエンディングとして描いたのかもしれません。

 

まだ理解できていない

まだ消化できていない、というか、この話を消化するための知識が私に不足しているように感じます。映画としてはツメが甘すぎて途中から文句ばっかり言っていたらしい(夫談)のですが、その背景にある文脈が気になりすぎる映画でした。

ちなみにダイアントワードはコッテコテなずっこけギャングとして出てくるので、予備知識なしだと「なんじゃこのオッサンと変なギャルは」と思われる気が…強烈にします…。事前にPV一つでも見ておくのがオススメ^@^ダイアントワードのPV映画、あるいはヨハネスブルグの観光映画(?)としてはかなり面白かったです。

ダイアントワード色満載のチャッピー紹介映像、インタビューつき↓

 

おまけ

・ちなみに、作中に出てくるギャングのたくさんいるビルは、実在する「ポンテ・タワー」というギャングの巣窟です。知らずにいきなり出てきたので感動しました。廃墟化しているタワマンの吹き抜けの部分に、なんと5階までゴミや死体が溜まっているというディストピア感!これだけでも見るべきでしょう

「犯罪者の巣窟」と呼ばれたヨハネスブルグの「ポンテタワー」の現状がわかるドキュメンタリー - GIGAZINE

・ニンジャとヨーランディーは実名で、本当の夫婦で、子供もいます。どんな子なんやろ…

・ダイアントワードはやりたい放題だったそうで、ブロムカンプ監督は「二度と会いたくない」と言ったとか言ってないとか。これだけのPV映画なら納得しちゃうかも。

・表情豊かなチャッピーは、モーションキャプチャによりなんと第9地区の主演役者シャールト・コプリーにより演じられています。触覚みたいなところと眉毛みたいなレバー、液晶の目しか動かないんだけど、これだけ表情豊かなのはすごい。とてもかわいいロボットです。

・創造者役のデヴ・パテルはスラムドッグミリオネアでの相手役フリーダ・ピントと結婚して離婚していた!えー!

 

以上!