目下個人的に気になっている社会ニュース、「機能性食品表示」についての記事その②です。
前回は「消費者にとっていいこと」を中心にまとめていたのですが、今回は問題点についてもまとめてみようと思います。
疑問①消費者庁がチェックしてないの?それならザル法案になっちゃわないの?
トクホとは違い、機能性食品表示は「消費者庁の出したガイドラインに沿って、企業が試験・調査を行う」ものなのですが、それならガイドラインに沿ってさえいればいいの?それって大丈夫なの?という心配もあると思います。
実際は、企業から消費者庁へ「届出」をし、「受理」されないと機能性食品表示ができません。その過程で、内容の確認が行われています。機能性の審査は「臨床試験」と「システマティックレビュー」の2つがあります。
「システマティックレビュー」は機能性成分に関する論文を集めることなのでお手軽に感じられますが、悪い結果の論文も含めて「全て」提出する必要があります。研究が進んでいない成分は論文の量や質などについてもチェックされているようなので、今のところ都合のいい論文をいくつか提示すればOKということにはなっていません。
「臨床試験」についても同様、実施体制や被験者には細かいルールが設定されています。※1
上記の審査の結果、6月末現在、届け出の受理率は今のところ10%を切っている状態です。緩いか厳しいかは個別の事例と、各々の感覚によるとは思いますが…。
気になる方は、このあたりのウェブサイトを見てみてもいいかもしれません。論点は①個別の事例の中に疑問を感じるものがある ②そもそも機能性の有意差が有意差と言えるほど大きくない という2点で、機能性食品に反対する意見です。扇情的に「ザル法だ」と煽る記事が多いのですが、こちらは冷静に問題点を指摘されており、現実に起こっていることが書かれています。
全国消団連が意見書(1) 〜サプリメントの販売実績は、「食経験」ではない | FOOCOM.NET
全国消団連が意見書(2) 〜低レベルの製品は「機能性表示食品」に届け出しないで | FOOCOM.NET
全国消団連が意見書(3)〜情報開示のメリットあるが、このままでは買えない | FOOCOM.NET
「メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学」などの著書で知られている、ジャーナリストの松永和紀さんの機能性食品に関するコラムです。
↓タイトルが扇情的ですが…これは良著なので、食品の安全性について興味がある方は読んでみてもいいかもしれません。
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ただ、個人的には「食品が健康に与える一つ一つの影響が大きいわけがない」と思っています。「●●に困っているなら、どちらかというとこの食品をとった方が良い」、というものがあるにせよ、例えば何かを食べて血圧がめちゃ下がったら困りますからね…。それ降圧剤じゃん…。小さい影響を積み上げて、病気の状態になるのを防ぐのが健康食品の役割なのではないでしょうか。とはいえ、血圧が気になるからといって血圧に効きそうだという健康食品ばかり取るのは考え物です。
この辺りの考え方は、ちょっと資産運用にもしている気がします。いま不動産がチャンスだといって、全財産を不動産に投じるのはリスクが高すぎます。リスクを分散させて、ポートフォリオを多様にする方が健康的です。よさそうなものがあれば、なんでもバランスよく、美味しく食べるべきです。
疑問②そもそもなんで機能性食品制度が始まったの?狙いは?
アメリカはサプリ大国、健康食品大国として知られています。アメリカで健康食品が売れまくるのには、「医療費が高いから」という理由があります。20年ほど前に機能性表示に関する制度が変わり、今の日本の機能性表示に近いものになりました。その結果、健康食品の市場規模は4倍になったそうです。※2
日本でも高齢化とともに市場規模は拡大していますが、その反動として「効かない」「健康を害した」という相談件数が増えていたので、広告表現は厳しく規制されるようになりました。健康食品を正しく販売・広告することの必要性が高まっていたのです。
日本の「機能性食品表示」などの政策は、①国民が自ら健康を守るための手助け ②政府の成長戦略として、中小企業の売上増大を目指す という2つの目的に整理されます。
先ほどの「扇情的に煽っている」立場だと、「国が経済成長のために国民の健康を危険にさらしている」としています。個人的な見方としては、「今までなんとなくしか言えなかった健康機能を明示する仕組みができたことで、玉石混合だった健康食品が分かりやすく、安心感が高まった」と思います。どうせ健康機能を求めて食品を選ぶなら、調査されたものを選べるようにしたい、というのは普通の感覚です。
そもそも「健康食品」というものに疑問を感じている立場なら話は違いますが…。
疑問③健康被害があったらどうするの?
機能性食品表示は「消費者庁が個別に審査したものではありません」と明示することが義務付けられているように、企業の責任において販売されています。もし健康被害が起こる、あるいは危険性が指摘などされれば、企業の責任において対応が求められます。
15年以上前にトクホを認可された「エコナ」という食用油の成分が、体内で発がん性を持つ可能性がある、という情報が広まり、発売元の花王が自主回収と販売中止をした事件がありました。実際のところ、発がん性にはそれほど確固たる結論は出ませんでしたが、その代り脂肪が付きにくいことへの有意性も低かったと指摘されています。※3
この事件から言えることは、風評被害であっても食の安全性が揺らいだときの失望は計り知れないということです。消費者としては「いい物だと思って買ったのに、裏切られた!」という気持ちがあるので、期待度に対する落差からブランドは一瞬にして失墜します。
機能性食品表示に関しても、消費者の安心を守るために厳密な調査・試験が行われることを、切に期待したいです。
※1:消費者庁「「機能性表示食品」制度がはじまります!」企業向けパンフレットhttp://www.caa.go.jp/foods/pdf/syokuhin1443.pdf
※2:NHKクローズアップ現代「健康食品が変わる 規制改革の波紋」
http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail02_3495_all.html
※3:畝山智香子「「エコナ」問題の本質はどこにある?」
http://www.foocom.net/fs/uneyama/2543/