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ありがとう、トニ・エルドマン(2016年、ドイツ)

【映画パンフレット】 ありがとう、トニ・エルドマン 監督 マーレン・アーデ キャスト ペーター・シモニスチェク サンドラ・フラー

コンサルで働く30代くらいの娘のもとに、フラッと遊びに来た変人の父親。親子ほっこりモノかと思って見始めたのですが、意外と色んな身近なテーマを包含していて非常に身につまされました。大企業で働くということについて、会社の傘を着た傲慢さや、一方で同じようにビジネス上の些事に翻弄されること、男女差別とまではいかない、「男の世界」に入って行けなさ、さらには格差社会まで。サラリーマンなら多くの人がはまる内容だと思います。

 

また主演の女優さんが非常に巧みで、組織の歯車になって翻弄される人間の姿が露わになっていたように思います。彼女の印象的な顔のつくりも、なんだかはまってしまいました。ビジネス的な笑顔がスッと消えるシーンや、会食をすっぽかしてこの世の終わりみたいになるシーンなど、ユーモアがあるのですがジワリとしたブラックな笑いです。笑えるか笑えないかくらいの微妙なラインがずっと続くのでちょっとストレスがたまるのですが、ラストに向かって爆発力のあるシーンが用意されているので安心してくださいね(何)。

 

最後はちょっと拍子抜けしましたが、現実的な着地点としてはこういう感じがいいのかもなー、なんて思って、結果的にはすっかりこの親子とこの映画が好きになってしまいました。

非常に評判が良かったのでハリウッド映画されるかもなんていう話もあるそうですが、この煮え切らない含み笑いの世界観は崩れてほしくないなーと思うのでしたー。