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エンドレス・ポエトリー(2016年、ロシア)

エンドレス・ポエトリー【R18+】(字幕版)

見るの遅くない?

ホドロフスキー好きーとか言っておきながら、劇場も逃し、DVDになってからもしばらく見るのを忘れていた情弱(情弱?)はわたしです。

 

「エンドレス・ポエトリー」は「リアリティのダンス」という前作の続編で、ホドロフスキーのマジ自伝的な連作です。なぜマジ自伝というような言い方をするかといえば、ホドロフスキーの作品はどれも何となく自伝っぽいからです。しかし、この連作では本人名でホドロフスキーの子どもが本人を演じているので、まぁ自伝だよねということです。

 

「リアリティのダンス」はチリのトコピジャで暮らしていた小学生くらいまでですが、「エンドレス・ポエトリー」はサンティアゴに移住し、成人するまでを描いています。冒頭では、前作で金髪のかつらを被らされていた本人役の美少年が、ちょうどいい具合に成長した姿で「とこぴじゃーーーー」と故郷に別れを告げます。

このシーンではマーチを描くのにわざと黒子に持たせた看板人間を行進させ、さびれた街を表現するのに書割を使っています。正確には分からなかったけど、何か表層的なイメージ、排他的なイメージを伝えたかったのかな。いずれにせよ、ともすれば出鱈目な、映画のルールを逆手に取ったような演出が却って目を引いて考えさせ、効果的でした。今回は1体だけでしたが、小動物を殺すのはやめてほしかったが…。本当好きだな…。

 

相変わらず高圧的な父に、徐々に反抗し、親離れをしていくアレハンドロ。父との邂逅はいちいち泣けましたね…。本人出演による、最後の「過去改変シーン」は心に沁みました。すばらしい環境だけが、才能を開花させるわけではない。あるいは、すばらしい才能は、環境に影響なく開花する、のか。アレハンドロは前者で、「この父がいなかったら今の自分はいない」という風に感じているんですよね。だから、父とは本当は分かりあい、別れたかった。それを「過去改変」で非常に詩的に表現しているんです。泣くでしょこんなん!この親子に全世界が泣いた!(泣いてない)

 

さて、前作では体中にタールを塗って現代舞踊をしたり、放尿したりしていたお母さんですが、今回は祖母にいじめられて変なケーキを作るくらいであまり活躍の場がありません…と思ったらなんと…!アレハンドロの最初の恋人になる、かなり常軌を逸した感じの詩人の二人一役だったーーーーーーーこの女優さんスゲーーーーーーー登場シーンでは、鬼のメイクをしたバーに表れ、「2リットル」とオーダー。その場でビールを2リットル飲み干し、男性を殴り飛ばします。ちょっと登場シーンが過激すぎて他のシーンが霞むのですが、いぜれにせよアレハンドロを開眼させた人物として存在感抜群に描かれていました。

 

他のアーティストたちとの祝祭的な集住や、実在の詩人との心の交流、その恋人である小人など、「いつも出てくるあのモチーフは、これが起源だったのだろうか」と思わせるシーンが満載でした。それらに、体ごと飛び込んで、愛しんで、でも不思議と「全く」執着していないように見えるアレハンドロ。ホドロフスキーって弱きものや美しいものなど、全てを愛しているように見えるんだけど、けっきょく自分のことが一番好きなんだろうなーと思います。この映画だけでなく、エルトポでもホーリーマウンテンでも、神っぽい存在なんですよね。見ている世界の広さが違う感じ。

 

いずれにせよ、ホドロフスキーファンにはたまらない作品がまた一つ世に出たということでした。

続編があるなら、映画の中でエルトポを撮ったりするんでしょうか?あ~~~~~っ、楽しみでたまらん。

 

ホドロフスキーさん、どうぞ長生きしてください。