まだ震災の傷が癒えないいわきの近くの町に住む男と娘。男は被災して死んだ妻のことが忘れられず、補助金をパチンコにつぎ込む毎日。娘は市役所で働くが、父親に嘘をついて週に1回デリヘルでも働いている。なぜデリヘルで働いているかは最後まではっきりとは分からない。「毎週東京で英会話に通っている」という嘘を信じている父親を見ると、別に金に困っているわけではなさそう。元恋人に「自分は汚れている」と言っていることから、自傷行為の一つであったと想像された。
物資が詰まれている被災者用住宅で首を吊ろうとする女や、半ばネグレクトされている少年の、暗い中ゲームをしている細い背中などが目に焼き付くようだった。みんな傷を抱えて身動きできないでいる。
物語が動き出すのは、男がいわき市の自宅に行き、死んだ妻の衣服を選んで海で撒くところから。時が止まったような荒れ果てた自宅の様子と、荒れる海と、「母ちゃん、寒いだろう」と泣き叫ぶ男のコントラストが鮮やかだった。
娘と不思議な絆を築いているデリヘルの運転手から、生まれたばかりの双子の娘の写真が届くところで物語は終わる。
題材が題材だけに、終始行き詰ったようなしんどい雰囲気が漂っている映画。色々詰め込んであるし、色々感じることがあった。