不定期で、最近竣工した住宅の中から気になったものを3軒ずつ紹介しています。今回は「図と地のある家」。
ハレとケ、明と暗、太陽と月…二つの空間がある家
現在一般的に流通している住宅って、暗い部屋があまりないですよね。日当たりが悪かったり、何か事情があってしょうがなく暗い部屋はあるけれど、基本的に好まれない(というか物件価値が低い?)。窓のない部屋というのも基本的にはNGです。でも、どの部屋も同じように「さんさんと太陽が降り注ぐ白い部屋」というのも、個人的にはつまらないなあと思います。
スマホを持ってトイレの個室に籠ったり、暗くて狭いバーに寄り集まったりするように、狭かったり、暗かったり、天井が低かったりする空間もあっていいのでは。その反対に、真っ白で明るく、天井が高い空間もあれば、全く性質の違う空間を楽しめる2度おいしい家になるのではないでしょうか。
「図と地」は一方から見ると他方は主従関係にあるが、主体が入れ替わっているだけでどちらも主であると言える
そんな、全く違う空間を併せ持っている住宅を紹介します。
2階建ての平屋
敷地:三重県 建築面積:128平米 設計:Airhouse Design Office
巨大な柱がポンポン立っている天井の高い平屋に見えますが、実は「柱」の中身は2階建ての個室。「柱」以外の大空間を主体に、個室やお風呂などの機能が「柱」に格納されています。そのおかげで、家族でくつろいだりお客さんを呼んだりする空間はゆったり・すっきり。機能部分はコンパクトですが、ふだんの生活スペースがこれだけ豊かなら満足度は高いのではないでしょうか。お風呂の2階が洗濯場だったり、パントリーの2階が読書スペースだったり。一番細い柱の2階はなんと猫の部屋です。毎日木登り感覚で楽しそうだと思いました。普通の2階建てにしてしまえばかなり広い家になりますが、必要なスペースがとれているなら、こういう贅沢な構成も良いですね。
柱が林立する空間
↓正面の細い柱の2階は猫の部屋、1階は玄関です。猫たんは無事に入室してくれたんだろうか。
↓柱の中に入ってみると…ここは子ども部屋
ポチ窓が開いていますが、個人的には窓なしでもいいかな~。まあでも、絵画的に楽しむ風景なのかな。
↓特にプランが面白いので、サイズ的に読み取りが難しいかもしれませんがぜひ見てみてください。
VIA:House in Ohno / Airhouse Design Office | ArchDaily
同じ建築家の作品:こちらはマンションのリノベーションですが、ショーウィンドーみたいなものを家の真ん中に走らせる独特の空間。これも好きでした!
個室の「余り」に集まる家
敷地:東京、町田 建築面積:95平米 設計:MDS
先ほどの家と構成が似ているのですが、こちらは面積が小さく平屋であるため個室の占める面積が大きく、その余剰の空間がすなわちLDKになっています。残念ながら個室の中の詳細は不明ですが、プランを見る限り白い箱状のベッドルームやバス・トイレになっているようです。
↓ここから個室内がちょっとだけ見えます
↓外から。
VIA:MDS designs Naruse House on a sloping junction between three roads
もう1軒は、見方によっては「図と地関係」はあるのですが、それ以上にスッカスカが気になるぞ。 というわけで別枠でご紹介します。
パラパラ系日本家屋
敷地:京都府 延床面積:120平米 設計:y+m design office
2軒家をくっつけたみたいなプランですが、2つのボリュームの間は妙にスカスカとしています。どこかで見たことありそうで無いな~と思っていたのですが、、、そういえば、神社などで半屋外の廻り廊下が棟と棟をつなげている部分に似ているのでした。軒と軒が噛み合っているところなんかも似ていますね。立地も京都であり、街並みとの親和性もありそうです。実際は平屋でなく2階層あるので、お馴染みの神社空間よりも開放感のある、不思議な中間空間になっています。開けた中間空間の先にはご両親の家があるそうです。
↓2階に上がってみます。徹底して屋根直下の壁を抜かしており、パラパラ・スカスカです。
↓個室にまで屋根のラインに沿って窓を開けており、ここもスカスカした印象。結構徹底しているなあ。
↓屋根裏も上がれます。屋根直下は全部抜かしているので、視線が通ります。こういう微妙な空間、好きなんですよね~。野良猫の気持ち。
↓外観は普通の日本の家と言う感じです。
VIA:y+M design office wraps eaves around house in suburban kyoto
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建築家に家を頼むことについて書いてます。まだまだ書き足らないけど、このテーマを書くのは体力がいるのだ