アマゾン・プライムで。前から気になっていたので見てみた。強烈な社会風刺ブラックコメディでもあり、ライトなスプラッターものでもあり。あまり怖くはなく、笑えるシーンも多くておススメ。
冒頭の「朝のルーティーン」は見る前からなぜだか知っていて、「ああこれか」と楽しくなった。ライフスタイル誌や広告に毒されまくった主人公の語りが痛快。名刺合戦のシーンでは、全員が「副社長(vice president)」と書いてあり、戦う基準はフォントと紙質という…。みんな社長2世なのだ。企画書の中身よりやたらとフォントと体裁にこだわる人がいるけど、そういう感じだろうか。
クリスチャン・ベールやウィリアム・デフォーなど有名な俳優が多く出ているんだけど、監督はメアリー・ハロンという知らない方だった。「アメリカン・サイコ」以外あまり作品自体ないようだ。
主人公のライバルとしてジャレッド・レトが出ているが、今の彼のような強烈な存在感は無かった。この影の薄さが、後半の「あの人、結局いたの?いなかったの?」という不思議さにつながっていたように思う。
また、ごく普通の可愛い女の子の役でクロエ・セネヴィーが出ている。一瞬気が付かないほど普通の雰囲気をまとっていて新鮮だった。「自分を持っている人物」として描かれており、主人公が何度も殺そうとして殺せなかったことが象徴的に描かれている。
結局主人公はたくさんの人を殺したのか?それとも全部妄想?というのが分からないまま終わる。真新しくなって売りに出されるジャレッド・レトのマンション、名前を覚えていない顧問弁護士などから、個人的には「実際に殺した」と思う。
主人公は自分というものがないまま周りの価値観で戦うことしかできず、逆にそういう価値観を破壊したいという衝動に突き動かされる。空虚で寓話的な話でありながら、過剰なコミカルさとグロさ、ビジュアルの美しさなどでエンターテイメント性の高い作品だった。