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雨の日は会えない、晴れた日は君を想う(2015年、アメリカ)

雨の日は会えない、晴れた日は君を想う(字幕版)

 

「ダラス・バイヤーズ・クラブ」のジャン=マルク・ヴァレ監督作品。「妻が死んだのに泣けない夫が心を取り戻す話」ということで、当然西川美和の「永い言い訳」を思い出しました。こんな直近で特殊な設定が被るってあるんですねえ。というかむしろ、「あるある」なんでしょうか?それはそれで怖いな。


これ、すごく良かったです。こんなよく分からない題材を、ここまで面白く描けるのがただすごい。

ダラス・バイヤーズ・クラブのロンほどひどい人物ではないにせよ、同じように頑なで孤独な男の心が次第にほぐれて行って、あるきっかけで決壊する…という構成。ベタなんですが、こういうのが私は好きなんだなー、と認識したり。

「ダラス~」でのジャレッド・レトにあたる「心の友」はナオミ・ワッツ演じるシングルマザーがになっていて、彼女のリアルな感じがまた良かったです。中2病気味のゲイの息子も可愛かった。この二人を合わせてジャレッドレト1人分という感じでしたね。この辺りの周りの人物配置とか、心の交流を描くシーンがすごくよくて、例えばもちろんナオミワッツとの手紙のやり取りはワクワクするし、息子とのバディものっぽい後半の展開もすごくいいんです。

 

いい意味でよく分からないシーンもありました。

一つは、中絶したという子供は、本当に不倫の子だったのか?ということ。もう一つは最後のメリーゴーランドのシーンで、ダウン症の子供ばかり乗っている点。

私はこの2点と「主人公は妻のことを全く見ていなかった」ということから早合点して、鑑賞中は「不倫していたというのは実は嘘で、妻は本当に夫を愛していた。子供がダウン症だと分かったが、夫に相談できる感じではないので、黙って中絶した。」と思っていました。

ただ、よくよく考えるとジェイクギレンホールはずっとウロウロしていたバンの男を間男と勘違いして殴ろうとしていたし、義母の「あなたの子じゃなかったのよ」というセリフも、さすがについていい嘘ではないように思い。

とはいえダウン症の子たちのエピソードは意図がありそうなので、「不倫の子かつダウン症だった」ということなのかなあ、と今は思っています。

たぶん、義父さんはこの事実を知らなかったんだろうなー。娘を異常に絶賛していたし、義母のセリフを聞いてポカンとしていたし。ジェイクギレンホールが「なんで俺だけ知らなかったんだ!」と怒っていたのは、中絶の書類に義母さんのサインがあったのかもしれませんね。


あちこちに残されたメモから、妻は不倫はしていたけど、夫を愛していたのは本当だったんだろうなと思いました。特に日除けの中に挟まれた「雨の日は会えない、晴れた日は会える」というメモの破壊力よ。冒頭の事故シーンは、「晴れた日」なのにメモに気づかないという決定的なシーンだったのですね。冒頭の呆れた妻の表情が、最後にじわりと締め付けてくるようでした。

 

ずっと余韻に浸っていたいし、何度もあのシーンはどういう意味だったんだろうと考え直すような、本当に良い映画でしたね。こういう映画が見たかった!