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「自分でいじれる系マンション」どうやればうまくいく?

 

日本のマンションについて、ガクンガクン頷いてしまうほど同意できる記事を発見しました。大家さんが企画した「住み手が内装を決められる賃貸マンション」です。

「病室」みたいな部屋にいつまで住み続けますか? 借り手が内装をデザインする、常識破りの賃貸住宅がスゴイ | ログミー[o_O]

 

大家さんのTEDでのスピーチはこちら。10分ですが、かなりシンプルな内容で流し見できます。


青木 純 at TEDxTokyo 2014 - YouTube

 

私が以前、上記に近しい考え方を書いている記事です:日本にもあった、素人が作ったマンション「沢マン」の魅力 - poco blog

 

 

このエントリの主な内容:

①自分でいじれる系賃貸マンションの成功事例「メゾン青樹」について

②自分でいじれる系分譲マンションの「パークホームズ駒沢」は失敗??

③住み手の「創意」をくすぐるしかけが成功につながるのかも

 

 

ここがスゴイ「メゾン青樹」

賃貸マンションだと、敷金という形で内装をリフォームするコストを払いますが、それを払わない代わりに住み手がリフォーム代を払って、好きにクロスなどを選べるようになっているのだと思います。アメリカ・ヨーロッパだと普通な仕組みですが、日本は自動的に決められた白っぽいクロスとビニールだったりする床に変えてしまうので、とても目新しい感じがします。住人も満足しているようです。やたら派手なクロスを選んだ人が取り上げられていたので、飽きるのでは?と心配になりましたが…。

 

もともと、日本人は「用意されたものの組み合わせ方でオリジナル感を出す」のは得意な方かな、と思います。色々な布を組み合わせるだけで、個性的で粋なスタイリングをしていた着物文化。最近だとアバターやアイカツもそうかな。

 

でも一番感心したのは、住人が自分の家をいたく気に入り、結果的に住人同士が家を見せ合ったり招いたりして交流し、さらに共有空間でコミュニティが生まれたことです。コミュニティをつくることは、共有側が仕組んでもなかなかうまくいかなかったりするもの。参照記事内では取り上げられていないトラブルもあるのかもしれませんが、相当な成功事例に見えますね。

 

住人でヨガのクラスを開いている、この写真。

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供給側が「やりましょう」と言っても、なかなか集まるもんじゃないです。キッズスペースも自然にできたそうです。共有空間では、当然子供たちが走り回っています。

余談ですが、うちの賃貸マンションは我が家だけバルコニーがとても広いので(家よりも広いかも)、こんな感じで住民と朝ヨガしてもいいなあなんて思いますが、誰が住んでるのかも知らないし、喋ったこともほっとんどないです。そもそもめったに見かけないし。

 

成功した理由は?

大家が想定していたクロス替えレベルではなく、大規模なリフォームにまで発展した住人がいたようです。「自分の住まいを自分でつくる」本能は、本当は住み手に潜在的にあるみたい。「自分で手を加えられる!」という創意スイッチを入れてあげたことで、住処への意識が通常よりも高まっていったのがポイントなのでは?

また、もともと共有空間がある物件であること、大家さんのイベンターとしての力量、あるいは住人の中にリーダーがいた、などの要素も影響があるかもしれません。

 

共有空間が豊かということは、「自分の縄張り内」だけ豊かにするよりも、結果的に経済的だと思います。例えば、広いテラスで夕日を見ながらビールのお父さんたちと、子どもたちがいる空間。日本の核家族が抱える問題のうち、色んなことが解決されている風景ではないでしょうか。見方を変えれば、日本の下町の風景の再来とも言えるかも。

そんな空間が存在しなければ、パパは会社の付き合い飲み会に行って帰ってこない、子どもは家の中でストレスをためて騒ぐ、ママ密室で頑張る…。という、「箱に隠されて見えてこない暮らし」も存在しそうです。

 

 

分譲マンションでの「自分でいじれる系」事例

7日から見学会が始まったばかりみたいですが、大手分譲マンションでも「いじれる系」の事例が。間仕切り家具によって、家族構成や子供の成長に合わせて間取りを変えられるものです。パークホームズなので、いわゆる重厚な外観と高級感のあるロビー、片廊下に羊羹型の住戸の典型的な分譲マンションです。

日経DUALに記事がありました。

新潮流 自分で間取りを変えられるマンションの“驚き” | 日経DUAL

 

間仕切り家具がうまくいかない理由

たぶんこれはうまくいかないと思います。なぜなら、ここで提案されているような間取り変更が必要になるのは、5年に1回程度だから。基本的に、家具や間取りを変えるようなライフイベントはその程度しか起きません。そのためだけに、日頃から心もとない間仕切り壁で暮らす意味はないと思いますね。ここで提案されているレベルのものであれば、少額でリフォームしてもいいくらいではないでしょうか。

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別の考え方として、パーティーなどの時に広い空間を取るために間仕切り変更をすることもできるかも。日本の襖と同じ考え方ですね。襖の方が手軽だし、裏表もなくて便利だな~なんて思ってしまいましたが。

ただ、この間仕切りプラン、なぜか物件HPには全く触れられていないですね。もともと媒体用の企画なのかな?

パークホームズ駒沢 ザ レジデンス|新築マンション・分譲マンションの【三井の住まい:三井不動産レジデンシャル】

 

 

供給側の懐の深さで、企画は良くも悪くもなる

冒頭のTEDスピーチで、大家さんの仰っていることに共感しました。「どういう暮らしができるかのビジョンを明確に描けば、それに共感できる人が自然に集まる」

 

大型案件になればなるほど、供給側はパイが小さくなることを恐れて明確なビジョンを描きたがりません。とりわけ、建物はそれでなくともお金のかかるもの。結果的に、世の中のマンションの広告は「高級感」「安心安全」「緑(ちょっとエコ)」みたいな、何か言っているようで言っていない、当たり障りのないものになっています。

 

先進国で最も悪いと言われている日本の「住クオリティ」ですが、それでいいと思っている人は本当は少ないはず。住み手のクリエイティビティを刺激するような物件が、供給側から出てくるようになってほしい。それも、新築物件で出てくることを願っています。