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23本のろうそくと、生まれていた息子の話

ろうそくが1本、2本、3本、4本、…、23本!
深呼吸。
モニターをチェック。
胎児の心拍は132bpm。

 

これは私の陣痛の乗り越え方、である。
今回は出産はコロナの影響で一人ぼっちの孤独なものになりそうだったため、「いた~い」などと周りの人に泣きついていられない。
自分で何とかするしかないんである(そもそも出産は、けっきょくのところ母子で何とかするしかないともいえるが)。

 

助産師や医師がいるではないか!
と思うんだけれども、
実は、助産師さんは背中をさすったり、今の進み具合を教えてくれたりするだけだし、
医師は切開・縫合・危険なときの処置などのために顔を出すくらいで、そもそもほとんどの時間そこにいなかったり。
手術などと勝手が違うのだ。
コロナ禍においては、「無人の部屋で一人耐える」というのが、出産のほとんどの時間の過ごし方になる。

 

というわけで、
産院が公開している「アクティブバースマニュアル」なるものを熟読し、
夜な夜な動画コンテンツを予習し、
「どうやら呼吸が大事らしい」
「力を抜くことが大事らしい」
「痛みから気を逸らすことが大事らしい」
というようなことを理解。

 

冒頭の実践へとつなげたところ、
本当に楽だったので驚いた。

 

前回の出産では、頭が痛みに向き合い過ぎていたのか、「我慢できる閾値」を超えたとき、怖い、逃げたいとしか思えなかった。
究極的にはいつかは終わるので、痛みとどう向き合うかなんてあまり差はないのかもしれないが、
体の力を抜くことで体への負担を減らすことができ、
結果的に今回の方が予後が良かったように感じる。

 

前回は娘が青ざめた状態で生まれてきたのに、
今回はひと汗かいてきたかのような顔色のいい息子が生まれた。

 

前回は出血が多かったようだが、
今回は「普通」量と記されていた。

 

何より、逃げたいなどと思わず、自分でやってやらぁという強い気持ちになれたことで、前回みたいに精神的に落ち込むことがなかった。

 

ブログを遡って読んでみても、前回の産後は「ボロボロな気持ち」「落ち込んだ」とあった。

正直覚えていないが、辛かったのだろう。(単に年を取って図太くなっただけかもしれない!)


具体的には、NSTのモニターを見ながら取り組む。
陣痛の波は3分間隔から、最後は60秒間隔までの山形でやってくる。
陣痛の山がきたら、ろうそくを1本ずつ吹き消していくイメージで息を強めに吐き出す。
私の場合、そのろうそくが23本目のときに陣痛が遠のいていくようだった。
ろうそくは23本と分かってから、「いま10本目だからもう半分まできた」などと思えるようになり、自信がついた。

ちょうど半分の時が一番きつくて、これを超えると弱まると知っていることも重要だ。

 

呼吸をコントロールすることで体の力が抜け、意識を痛みから逸らすことができる。
呼吸は胎児にとっても重要で、息を止めると胎児の心拍が上がりすぎたり、もっと悪いと下がりすぎたりするので、とにかく落ち着いて息をし続けることが大事である。

 

陣痛は出産に必要な筋肉収縮なので、
痛みが消えたり間隔が空いてきてしまったりすると、出産が長引いて結果的によくない。
実は一度体勢を変えたときに3分間隔から5分間隔に伸びてしまった時があり、
慌てて体勢を戻した。
だから、強い痛みが来ているときほど、やり過ごしつつも前向きに取り組んだほうがいい。

 

痛みが強くなってくると意識がそちらに持っていかれそうになるが、
私の場合、近所の公園に生えている水草が、水流に任せて形を自在に変えている様子を思い浮かべ、力が入らないように、痛みのことを考えないようにした。

この季節の水草は美しい。水流に乗せられて、青くキラキラしている。水流が強くても、ちぎれて流されるわけでもなく、絶えず形を変えている。これになりきる。

名付けて「私は水草作戦」である。柳でもいいかもしれない。

 

まぁ、そんなわけで、人には安産と言われるお産が終わったのである。

 

息子ちゃんは、生まれてすぐに目を巡らせて周りをじっと観察していた。
目が合うと、「お前が母親か」というおっさん声のアテレコが聞こえてきた…のは、
生後の2か月の今も「小さいおじさん」と呼ばれる貫禄ある外見のせいか。

 

前も思ったけど、よくみんなこんなことを出来るよな…。
明らかに人生で一番のピンチなんだが、
終わってしまうとなぜだか忘れてしまうので、
人類はまた子孫を残してしまうんだと思う。

 

というわけで、前置きが長くなったが、2か月前に息子ちゃんが爆誕していた。
6月現在、もう仕事を始めているので、なんだか太古の話のような不思議な感覚。

 

産んだあとは、

・予定日を守る息子の話

・家族で乗り越えた産褥期の話

・混合栄養は面倒くさいぞ という話

・初めてのシッターさんの話

・仕事復帰の話

などの話があるので、また時間を見つけて書いておこうと思う。