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三分一博志さんの「直島ホール」

今年の建築学会賞が三分一さんの直島ホールになったということで、さっそく見学してきた。場所は直島の役場横で、見学には役場の教育課にて「施設利用」という名目での申請が必要。利用料は、島民外で1時間3千円ほど。ちなみにこの町役場もジブリに出てきそうな濃い建物で、石井和紘さんが設計したらしい。直島には、小学校や保育園など石井さん設計による建物が多く、見ていて楽しい。

 

直島ホールは巨大な屋根が特徴。盛り土にかかる大屋根は三分一博志さんのアイコンのようなものだ。てっぺんに大きな穴が空いており、熱い空気がそこから逃げて室内の気温が涼しく保たれるという三分一さんならでは工夫がある。(見に行ったときはとても寒い日だったので、この恩恵にあずかることはできなかった。むしろ、寒かった~。)

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全体的に木で仕上げており和風の設えだが、中身は厳然たる現代建築。鉄骨とRCの混構造らしい。巨大な屋根を支える構造はあまり目に入らず、屋根の内側は白漆喰で角もなく滑らかに仕上げられているせいで、室内は驚くほど軽やか。

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室内に入るとハッとするほど美しい。こんな風景を見たことがある人は少ないだろう。

この白い美しい屋根部分を見せるために、トイレの個室一つ一つにまでトップライトがとられているのには驚いた。

 

隣に集会所がある。こちらも大屋根の下に機能的な箱がポツポツ置いてある同じ構成だが、集会所の方は鉄骨造で中にある4つの小屋は木造。中心のトップライトの下に、井戸があるのが面白い。

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どちらも細部や外構までよくできていて、さぞかしお金がかかっているんだろうな…という印象。総工費は合わせて8億6千万円だそうで、これは思ったより少なかった。いずれにせよ、一見の価値有りだろう。

ちなみにこちらは写真可だったのに、ほとんどに娘が写りこんでいて使える写真がなかった。全然わからんよね。ごめん。

 

本村港周辺は街歩きに最適。

ちなみに直島ホールの周辺には家プロジェクトやANDO MUSEUMなどのギャラリーが固まっているし、洒落たカフェもいくつかあって街歩きが楽しめる。直島のメイン玄関は宮浦港ではあるが、本村港周辺の方がゆったりしていて個人的には好きだった。

ただし船の本数が極端に少ない。今回は時間が無かったので船のチャーターを利用したが、1万円ほどだった。人数が集まるならそれほど高くなく利便性が段違いなので、検討してみてもいいかもしれない。

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海上タクシーのおっちゃん、電話したら本当に港にふらーっと来てさっさと連れて行ってくれた。なんかすごい。

地中美術館(と、ベネッセアートハウス)

直島のメインコンテンツと言えば地中美術館だと思う。ある一つの展示品の為だけに、細部までアーティストと建築家が意見をぶつけてつくった、恒久展示のための建築物というのは、世界中探してもここにしかない(たぶん。間違ってたらゴメンね)(もちろん豊島美術館もそう)。この手法は”site specific works”というらしいんだけど、一般的には自然物の中に設置してあったり、期間限定だったりすることが多い中、建築家を巻き込んで大規模な施設にする例はあまり聞かない。

建設は2004年だそうで、わたしはどうやら建設すぐのときに見に行ってたみたいだ。その頃はここと、ベネッセアートハウスと、いくつかの家プロジェクトしかなかった。(ちなみに、宿も飲食店も今のように充実していなくて、けっこう大変だった。)その時は地中美術館の印象が強すぎて、他に何を見たか覚えていないくらい。

 


地中美術館の魅力は一言で言い難い。

 

例えば、モネの睡蓮を自然光で見られるのはここだけだろう。美術館の近くには、モネの睡蓮を再現した庭もある。ウォルター・デ・マリアの大規模な恒久展示もここだけ。ジェームズ・タレル…はけっこう色んなところで見られるか。

誰かに聞かれたら、こんなような「コンテンツのレアさ」なら説明することができる。


ただ、それだけではうまく説明できない。館に入ってから出るまでの、一連の経験としての魅力が大きい。

 

地中美術館は文字通り丘陵地に埋まっており、「モネの庭」を通過し、まず地下2階から入っていく。最初は緑(名前失念)が生い茂る三角形の庭をぐるりと廻りながら、暗い細い廊下を通ってウォルター・デ・マリアの展示室につく。緑の正三角形を通って、黒い巨大な球と金色の三角柱、四角柱、五角柱が支配するピリピリした空間に入るというのが、自分が「任意の点P」になったようで不思議な体験。球は強力な重力を感じる。いったい、どうやってこんなところに来たのか、球よ。一つ一つの柱は、球の力に引っ張られて向きや形を変えているかのように見える。ウォルターデマリアの展示は個人的に一番好きで、できればこういうところに住みたいくらいだ。

 

次は、白い人の顔くらいの大きさの角ばった石が敷き詰められた正三角形の庭を通る。ここは先ほどとは打って変わって、墓場のような空間。石に乗ってみると意外と安定感があり、楽しい…などと思っていると、中庭を見上げてクラリとする。ここの造作物には軽さがない。どこにいても強い重力を感じ、深い地の底なんだという感じがある。

次の展示室はジェームズ・タレルの「オープンスカイ」と「オープンフィールド」。遠近感を狂わせるような展示物で、それぞれ「そらの風景」と、「どこか分からない青い空間」がぺたりと張り付いているように見える。幼児にははるか遠くの遠近感はピンとこないらしく、娘はよく分からないようだった。それでも「青い空間」の方の異様さは感じたようで、怖がってすぐ出てきた。

 

ここを出たら、ようやく地上に上がる。「白い石の中庭」に面した廊下を、今度は1フロア上がっていく。数メートル上がっただけで、ずいぶん身軽に感じられた。最後の展示は、クロード・モネのいくつかの睡蓮。さっきまでの強い重力感と奇妙な遠近感の世界と比べると、睡蓮のなんと軽やかでおぼろげなこと。音が響かないように、角を取った大理石モザイクの上を、柔らかい素材のスリッパで歩かせるところも健在だった。10年前は紫外線を防ぐガラスの薄い紫色が気になったが、今見てみるとそれも含めて夢の中の出来事のように感じられた。

 

これが一連で体験できるのが地中美術館。最後は地中カフェに行って、高台から海を眺めるのが良い。

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全体として、いわば地の底から水面を通って空に上がっていくような体験だ。 

 

ちなみに、地中美術館周辺には李禹煥美術館やベネッセハウスミュージアムがある。ベネッセハウスミュージアムは一連のアート施設の中で一番古く、なんと1992年オープンらしい。なんでも早く閉まってしまう直島の中では、ここだけ21時まで開いているのでありがたい。時間がなく駆け足で見たが、大きい石の上でぺったりと寝るのが10年前と変わらず気持ち良かった。

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ハウスミュージアムの近くには有名な黄色かぼちゃもある

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どこを見ても、目にしみるように海がきれい。

直島・宮浦港周辺のアートと建築物

直島と言えば今やアートの島だが、見どころは地中美術館だけではない。

宮浦港という直島西部の玄関口周辺には魅力的な建築物や彫刻が集まっており、2時間くらいすぐ経ってしまうし、東部の港である本村港にはギャラリーや有名建築物が固まっている。もちろん、島南部の地中美術館周辺にはベネッセハウスミュージアムなどの「きちんとした」美術館があるし、雰囲気のいいレストランやスパも点在しており直島のメインコンテンツの一つであることは間違いない。こちらは室内に美術品があるホテルがあり、子供が大きくなったら時間をつくって泊まりたいなーと思っている。

 

そんなわけで、今日は直島の玄関口、宮浦港周辺について書く。

 

船で宮浦港に近づくと、まず出迎えてくれるのは草間彌生さんの赤いかぼちゃ。

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(とかいってぜんぜんかぼちゃメインじゃない写真でスマヌ)

島南部の方には黄色いかぼちゃがあるが、赤い方は中に入れるので子供は大喜び。(ちなみに、3歳の娘には直島のことを「おおきなかぼちゃがあるところ」と説明していた。)きれいな瀬戸内海の海をバックにした毒々しいかぼちゃは、何やらあやしい漂着物のようだ。

 

そのかぼちゃの脇にある(というか、かぼちゃの方が脇にあるのか)のがSANAAのフェリーターミナル。

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こちらは一転して、海の水平線のようにおぼろげで儚いうす~い屋根と細い柱が特徴的だ。SANAAの建物はどこにあってもSANAAだし、どこにあっても幽霊みたいで妙に惹かれる。

余談だがこの辺は飲食店が足りていなくて、けっきょくターミナル内にある軽食コーナーで昼食をとった。冷凍品を温めてくれるだけなんだけどそれでもありがたいし、何より地ビールがうまい。

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ターミナルを出て右手に少し歩くと、透明な紙くずのような東屋がある。これは藤本壮介さんの作品で、中に入ってくつろぐこともできる。

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娘はハムスターみたいに中を走り回っていたが、よくできていて全体が不定型なのに安定感がある。色んな小さな場所や大きな場所があって、思い思いに自分の場所を見つけてくつろげる。自然物のような、偶然できたようなパヴィリオンだ。

これは、以前”final wooden house”という藤本さんの宿泊所に行ったときと同じような空間体験だった。見た目も素材もこれだけ違うのに、同じように感じるというのが面白い。

 

港の方に戻ってまっすぐ西の方に歩いていくと、大竹伸朗さんの「I♥湯」がある。外観はまさに大竹伸朗的世界なんだけど、中はいたって真面目な銭湯経営をしているらしい。暑いし疲れているしで外観だけみて帰っちゃったけど、どうせなら浸かってくれば良かった。せめて外観くらい写真撮れば良かった。

 

そこから少し北に歩くと、西沢大良さんの「宮浦ギャラリー6区」がある。行った頃は休館中だったので見ていない。

これも余談だが、ギャラリー6区をさらに北上していくと「山本うどん店」といううどんやさんがあり、ここは地元でも有名なおいしい店らしい。ただ、日曜が休み。行きたかった~。

 

宮浦港はこんな感じ。直島旅行の出発点になるエリアなんだけど、バスや船の待ち時間に軽く見て回るのにちょうどいいものがたくさんある。

 

(ちなみに、今週は毎日直島旅行について書く予定です。)

保育園変わって半月

新しい保育園に行き初めて半月経ちました。最初は迎えに行くと妙にションボリしてたり、毎朝大号泣だったりと不安定な時期が続きましたが、すぐに仲良しの子たちができて、朝も笑顔で行けるようになったので一安心です。

家にいるといつまでもぐずぐずして言われないと片づけや身支度ができないし、一緒に出掛ければすぐに「だっこー」と言い出す娘。もうちょっと頑張ってほしいと思っていたのですが、意外と保育園ではしっかり者のお姉さんタイプらしいです。家にいるときは甘えモードなのかな。

新しい保育園では監視カメラみたいなもので出先から様子を観察できます。これが意外と面白くて、友達たちに話しかけて世話をして回ったり、ずっと寝つけないでいるけど大人しくしている娘の様子を初めて見ることができました。

なんだー、けっこう頑張ってるじゃん。

リトミックや英語の授業も、最初は暗い顔で突っ立っていましたが、今ではガンガン歌って踊っています。ダンスの先生が教えてくれたアイドルみたいな踊りも覚えて、家で披露してくれるようになりました。

最初は親も子も前の保育園の良い所ばかりが思い出されて、新保育園いかがなものか…と毎日思っていたのです。慣れてくると、子供が多いので気が合う子を見つけやすいし、習い事が色々あって刺激になっているようだし、今の保育園もいいかもと思えるようになりました。

こうなってくると、今のタイミングで認可の空きが出ても、また1からやり直しなのはキツいし可哀そうだなあ、と思います。

保育園は家に近ければ近いほどいいんですね。

ということに、いまさらですが気づきました。新しい保育園を探すにあたって、私と夫の職場に近い所にしたんですが(というかそこしか空きが無かった)、確かに残業をめいっぱいできたり、家族で落ち合ったりしやすい、仕事中に病院に連れて行きやすいという利点はあるものの、家までは地下鉄で数駅あるので毎日の送り迎えがしんどいです。子どもがいると移動が大変なのは分かっていたはずなんですが、とりわけ忙しい時間帯の大移動は疲れるし、通勤ラッシュにあたるともう無理目な感じ。

そんなわけで、最近は①外食がめっちゃ増えた ②タクシー移動がめっちゃ増えた という傾向にあります。

前の保育園はマンションについてるやつだったので、この大変さを知りませんでした。今考えると、家に保育園ついてるってマジ最強だな。

できれば今すぐにでも会社と保育園の近くに引っ越したいんですが、いま割と良い条件のマンションだし、さらに都心に行けば環境も悪化するしなあ…と思うとなかなか踏み切れず。とはいえ良い環境を楽しめるのは週末くらいだし、毎日の送り迎えの方が切実。やっぱり近いうちに引っ越したい!

 

逆に考えると、今までそんなに世間で言われているような大変さを感じていなかったのは保育園のおかげなんでしょうね。共働き幼児育てが大変!という方は、多少投資しても保育園つきマンションを検討されてみると良いかもです。

保育園つきマンションだとアフター5はこうなる!(かもね!)

  • 家に帰って荷物を置いて、ベタ靴に履きかえてからお迎えに行ける。
  • アフター5の時間が効率よく使えるので余裕がある。なんならご飯食べてお風呂入っても、子供が寝るまで1時間くらい余裕がある。
  • 朝はギリギリの時間まで家にいられる。さっと預けて、身軽に出勤。
  • 子供が風邪ひいた時も、すぐに家に帰れるので子供に負担なし。

 

やっぱりいいな、保育園つき…。

将軍様、あなたのために映画を撮ります(2016年、イギリス)

将軍様、あなたのために映画を撮ります [DVD]

DVDで。北朝鮮に拉致され、キム・ジョンイル総書記のために映画を作りまくった韓国人映画監督と妻の女優のドキュメンタリー。数奇な運命とはこのこと。嘘のような、本当の話。面白かったー。

シン監督は、その当時韓国でトップの映画監督だったが、「世界に通用するような映画を撮りたい」と思っていたキム・ジョンイルによって女優である妻が拉致され、自身も韓国での映画活動が禁止され(←この辺りは理由をはっきり言ってなかったけど、北朝鮮の差し金である雰囲気で描かれていた。本当のところは不明。)、北朝鮮に拉致される。強制収容所に入れられたり、拷問・思想教育を受けたり等色々あって、最終的にはキム・ジョンイルのために映画を製作することに。

ここからが抜群に面白い。シン監督はそれまで資金で苦労して思うように映画製作ができずにいたんだけど、北朝鮮ではキム氏が湯水のように製作費をくれるし、エキストラも使いたい放題。非常に映画製作がやりやすく、しかも映画の内容もキム氏を持ち上げるものばかりではなく、自由につくらせてもらえるようになる。ある意味、最高の環境だったのだ。結局ここで17本も映画を製作し、いくつかは映画祭で取り上げられるまでに。

けっきょくシン監督夫妻は亡命するが、シン監督はその後も映画を撮り続けて、天寿を全うしたそうだ。

女優である妻はご存命で、このドキュメンタリーは妻のインタビューと、シン監督が北朝鮮で撮った膨大な映画のシーンを「それっぽく」繋ぎ合わせて作ってある。最初は「ヘンテコな再現シーンだな…」と思っていたけど、全てシン監督作品というのは興味深い。

ネタバレも何もないのでほぼ全部書いてしまった。それでも一見の価値はあると思う。

ガタカ(1997年、アメリカ)

ガタカ (字幕版)

アマゾン・プライムで。「月に囚われた男」が面白かったので、「関連作品」で表示されていたこれもついでに見てみた。監督はロード・オブ・ウォーのアンドリュー・ニコル。なるほど近未来SFで、カテゴリーは同じ。だが、こちらはヒューマニズムが主題の割と熱い話だった。

生まれる前から完璧な遺伝子を選別するようになった未来で、そうではない生まれ方をしてしまった男が夢をかなえるために奮闘する様子を描いている。昔の007みたいな小道具がいっぱい出てきて、レトロSFといった趣。若い頃のユマ・サーマンとイーサン・ホークがキザな感じで出てくるのが面白い。それから、若くてセクシーだった頃のジュード・ロウも出てくる。その当時、気鋭の若手俳優がたくさん出てくるオシャレ映画だったのかもしれない。

それにしても、アンドリュー・ニコル監督は幅が広い。全然違ったタイプの映画を撮っている印象。中でもロードオブウォーは傑作だった。TIMEはストーリーが面白かったし、グッドキル(ドローンオブウォー)はコンセプチャルな良い映画だった。こうしてみると、「望まない境遇で必死に生きている人」、また乗り超えられない身分・階級についての話が多いようだ。ものをつくる人は、映画監督にせよ建築家にせよ、若い頃に設定したテーマを生涯描き続けることが多い。しかもそのテーマは、自分の出自に関することだったり、人生で感じてきた苦悩をそのまま描いていたりすることが多い。

ザ・ホスト、シモーヌは未見なので、機会をつくって見てみたい。