MENU

アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場(2015年、イギリス)

アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場(字幕版)

 

「グッド・キル」から2年、ドローン攻撃の本場アメリカから舞台は移ってイギリス。ただし、攻撃するのは同じくラスベガスの、イーサン・ホークが勤務していた基地。と、無関係の2作品をあえてごっちゃにする書き方をしてみたが、この2作品は両方見るとますます興味深い。慎重なイギリスと攻撃的なアメリカ、人道的なイギリスと合理的なアメリカ、決定が現場で覆るイギリスと覆らないアメリカ…などなど、2国の見せたい表情の違いが如実に表れている。

実際、「アイ・イン・ザ・スカイ」は「グッド・キル」で起こる一つ分の攻撃を100分かけて上から下まで審議する話で、非常に丁寧な描写でドローン攻撃の矛盾を描いている。

 

攻撃される対象に「鳥瞰から」スポットを当てているのは同じだが、「アイ・イン・ザ・スカイ」ではさらに現地の住民に視線を合わせて生活を描き、現地で活躍する兵士(スパイ?)も重要な役回りを負っている。この「現地の少女」がむちゃくちゃかわいい!

 

軍人と政治家の役回りがこれでもかときれいに整理されており鑑賞者にとっては見やすい反面、「決して軍人に言ってはならない、彼らが戦争の代償を知らないなどと!」というセリフはキザすぎーと思った。そこで人道派の女性政治家が一筋の涙を流す、など…。ちょっと美化しすぎよね。全体的に。イギリスは良いかっこしいなのか。酒に飲まれて自分勝手に攻撃を始めるイーサン・ホークの方が、正直に感じた。

ネオン・デーモン(2016年、フランス・デンマーク・アメリカ)

ネオン・デーモン [Blu-ray]

 

制作中の情報の時から「絶対好きなタイプの映画だ」とチェックしていたものの、ほとんど公開されずにいつの間にかDVDになってしまっていた作品。やっぱり好きだったー。夫は「つまんない」と言っていたし、正直その理由も分かる。ストーリーはけっこう普遍的なんだけどすごく「よく見る話」なうえに、とても回りくどい分かりづらい表現でそれを表現しているので、ちょっとイラッとする。

ただ、ヴォーグから抜け出してきたようなビジュアルがいちいちパキッと決まっており、ビジュアル重視派としてはたまらなかった。動きやセリフがかなり抑えられており、映画なのに静止画を見ているような独特な雰囲気と、機械音のような音楽が耳に残るファッショナブルな映画。原色にグリッターがちりばめられた独特の色使いも魅力的だった。なんでも、レフン監督は色覚異常があるらしい。「美少女が象徴的に死ぬ」映画に外れなし。(めちゃくちゃ偏った見方でスンマセン)(しかも唐突にネタバレ)

 

***

 

田舎からLAに出て来たモデル志望の16歳。モデルたちと、モデルを取り巻くカメラマンやスタイリスト。16歳少女は逸材ともてはやされ、モデルたちは危機感を感じ――。そこはやはり、「センパイからのいじめ」及び「少女性の喪失」「慢心」そして「身を持ち崩す」ですよね、ハイ。安心してください、その通り進みます。この映画だと、そういう泥臭い事は全部「※そういうイメージです」というような象徴的シーンが流れるので、何が何だか分からない。むしろそこが良い!

ネコ科の肉食獣に「少女の部屋」を荒らされ、年上の男に薔薇を贈られて失神、ステージでは「逆三角形の何か」に襲われ青から赤に変わり、「エル・ファニング」から「悪・ファニング」に変身。そこからも泥臭く身を持ち崩すシーンを描いたりはせず、突然センパイに「食われる」という最大の謎シーンでクライマックスを迎える。あ、忘れてたけどエルを殺したスタイリストが満月を見ながら失禁するシーンの方がナゾだったわ。これは出産・生まれ変わりのメタファーか何か?(そういえば、失禁シーンのある映画にも外れなし、だ。)

ここまで読んで、「なんだかめんどくさい映画だな…」と思わない人は、あまりいないかもしれない。

 

綺麗な青い目玉をぱくっと食べるラストシーンも好きだったし、エンディングの砂漠を歩くエルファニングも良い。全てが一枚の絵画のように決まっていて、その中心にいるエルファニングと周りの女性たちが瑞々しく、まさに完璧だ。

ただ、個人的には劇中で美女だと絶賛されるエルがそこまでタイプではなかったため、「君は完璧だ」「人々をひきつける才能がある」「その鼻は本物?(←!?)」などのセリフが嘘くさく感じてしまった。周りのモデルたちの方がよほどキレイに見えるけどなー。好みの問題か。

哭声/コクソン(2016年、韓国)

哭声 [DVD]

「國村隼さんがふんどし一丁で生肉をむさぼり食う」というとんでもない情報があったので、おそるおそる見てみた。なかなかおそろしかった。重層的なつくりのホラー映画。一応ネタバレ禁止かなーと思う。

 

***

 

この映画、途中までの感覚と観終わっての感覚が全く違って、後味は端的に言って最悪だ。

始まりの方は田舎ののんびりした警官一家の、どちらかというとコメディタッチの話。事件があっても、まずは家族で朝食をのんびり食べてから出勤するなど、田舎のスローなやり取りがなんとも魅力的だ。

そういう日常に、突然キツめのホラー描写が入ってくるんだけど、それでも主人公の警察官はどこか現実感がないような感じでノホホンとした日常を続ける。「よそ者の日本人(國村隼)の仕業にちがいない」なんていう噂話も、どことなく冗談のような、でも本当かも?といった感じでコミカルに受け取られる。

がぜんシリアスになってくるのは、警察官の一人娘に幽霊が憑いて(?)から。それまでのらりくらりしていた警察官は奮起して、思い込みで日本人の家に押しかけ、ついには思い込みを募らせて殺してしまう。

そこが一応「よそ者を悪魔だと決めつける」寓話的な構成になっているんだけど、この映画は嘘か本当か分からない映像が多いため本当に真実が分からなくなっているのが曲者だ。事実、冒頭から國村隼が鬼の目をして生肉を貪り食うシーンはあるし、後半「神」として出てくる女性は変質者にしか見えない。

 

だから、最後に牧師が悪魔に出会うシーンで「お前が見たいと思ったものが見えるだけだ」と種明かしをされても、なんだか腑に落ちず、寄ってたかって素朴な警察官を騙したような気分の悪さが残った。

 

他には、なぜ悪魔かと言えば、韓国はキリスト教の人が多いんだ!と改めて気づいたり、ああ、だからゾンビもいるのか、とゾンビ好きの血が疼いたり(なかなかつくりのいいゾンビ、出まっせ!)、韓国の田舎ってめちゃくちゃ質素なんだなーと思ったりした。

世界観は、日本的な精神に来るホラーと、欧米のスプラッター&ゾンビ系ホラーが混ざったような感じで、とんこつ醤油味のような濃厚さ。大金を吹っ掛ける「祈祷師」という謎の存在が当たり前のように受け入れられているのも面白かった。この「祈祷師」を巡る演出は韓国の仏教寺院に雰囲気が似ているんだけど、一応キリスト教の文脈で存在しているんだよね?と不思議だった。大量の蛾に道を阻まれ、神に出会って血とゲロを吐きまくる辺りはいかにも欧米系ホラー。「鶏が3度鳴く」も出てくる。やっぱり、基本はキリスト教なんだなー。

 

後味は悪かったけど、色んなスパイスが入った複雑な味の料理みたいな映画で、面白かった。

スノーデン(2016年、イギリス・ドイツ)

スノーデン(字幕版)

エドワード・スノーデンがCIAからNSAに入り、世界に対してアメリカの内部告発を行うまでを描いた伝記的映画。この事件については漠としか知らなかったので、勉強として見てみた。映画には多少現実と違うことも描かれており、ドキュメンタリーの「シチズン・フォー スノーデンの暴露」の方も合わせて見るとよいらしい。

いくつか分からないところもあったが、そこはオリバー・ストーン監督で何の前知識なく娯楽作品として見ても最後まで飽きることなく楽しめる。

アメリカが世界中を監視している、という映画の核心にあたる話は今ではもう周知のこととなっているので驚きはなかったが、日本にスパイプログラムが組み込まれていて、いざとなれば機能停止にできるというのは驚いた。

何も知らなかった私としては、スノーデンがCIAの中でもトップクラスの頭脳だったということと、かなりの愛国者だということが一番の驚きだった。正義感と愛国心溢れる静かな天才が理想と現実のはざまで心身を病み、理想のために戦う様子は、フィクションとして見ても大変よくできたヒーロー物。これが現実だというのだからなおさらだ。

お嬢さん(2016年、韓国)

The Handmaiden

「なんだこれ、ポルノ映画やないか(唖然)」からの「けっこういい話でビックリ」、さらに「構成が良くできていてビックリ」という一粒で何度も驚かされる作品。どこかで絶賛されていたと思うのでウェイティングリストに入れたものの、届いたころには何で注文したのか忘れているのでたまにこういうことがある。フェティッシュな変態度がかなり高いため見る人を選ぶが、おすすめ。完全にネタバレ厳禁系。

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

日本占領下の韓国で、日本に憧れて日本人になろうとする変態親父と彼に変態教育を仕込まれた美少女孤児、そして泥棒の娘の百合映画である。この設定だけでお腹いっぱいなんだけど、「羅生門」方式の3部構成がまた良くできていて見続けられてしまう。ストーリーの主軸は虐待されて育った少女の解放の話であり、後半にやっと明らかになる。解放された少女たちの姿が清々しく、読後感が爽やかなのがまたびっくりだ。

映像がスタイリッシュで細部までよくできており、日本では到底できない完成度の高い映像美だった。

しいて言えば、ここまで気持ち悪い世界を作り上げて、その中でいたいけな少女を徹底的にいじめた上で開放するのはなんかやだわ、と思ったり。虐待の様子が割とダイレクトに描かれるため、嫌悪感がすさまじい。

人魚姫(2016年、中国・香港)

人魚姫 [DVD]

 

現代中国を舞台に、人知れず暮らしていた人魚が開発によって生存の危機に遭い、開発を進めていた会社の社長を誘惑して仕返しをしようとする。

これでもかとコテコテなストーリーにコテコテな演出を重ねていくスタイルなんだけど、想像内の一歩向こうくらいの驚きや楽しさがあり、映画の楽しさが詰め込まれている作品だと思う。素朴な人魚ちゃんがゲス野郎の社長を改心させるなど、もうこの話何度目――!というような展開なのに思わずホロリ。

それは、素朴な少女の本物の素朴さとか(オーディションで選ばれた新人らしく、かわいいんだけど割とマジで素朴な顔をしている)、ゴミゴミした民家や屋台のリアルな汚らしさとか、傷ついた人魚たちのゾッとするようなビジュアルとか、そういう細かいリアリティーの賜物。全篇コミカルなのに残虐レベルがけっこう高くて、子供が見たらショックを受けそうな感じだ。テーマがテーマなので、きちんとそういうことを「痛そうに描く」ということを徹底しているは、むしろ好感が持てた。

特筆すべきはCGのしょぼさで、ここまで突き抜けるとむしろ「ファンタジーはファンタジーなのだ」と妙に納得させられる。

何者(2016年、日本)

何者

就活に奮闘する若者たちの話。

かなり狭い世界のことを描いている上に、人物たちがあまり魅力的ではないためけっこうツラい。特に主人公は、言い訳がましい上に自己演出力がないという救えないキャラクターでイライラさせられること間違いなしだ。


学生から社会人になる「何者でもない」微妙な時期のよりどころのなさは分からないでもなかったが、就活があまりに抽象化されていて課題がよく分からない。面接官とのやり取りとか、せめてOB訪問やインターンでも描いたら人物やストーリーが厚くなりそうなんだけど、通り一遍のテストと面接シーンの繰り返しで何と戦っているのか良く分からない。


仲間数人で集まっているシーンが多いのだけど、常に気まずい雰囲気が流れていて「君たち本当に仲いいの?」と突っ込みたくなる。相手の話を遮ったり、無視したりする意図的な切り替えが多用されすぎだと思う。自分だったらこのグループには顔を出したくないかも。

ん、もしかして、プリンタを借りにいってるだけなのか。そうか…。