先日、岡田あーみんの「新装版ルナティック雑技団」(以降「ルナ雑」)全三巻が届いた。
私がこれを最初に読んだのは、もう20年も前だと思う。「ルナ雑」は当時の私の同級生の中では「極端に好きな人と、全く受け付けない人」に二分されており、好きな人は全体の1割程度だったのでむしろ「9:1で人気がなかった」といった方が正確かもしれない。ナンセンスギャグの少女マンガみたいなもので、少女マンガ的要素はあるものの全てが何かのパロディであり、王道の少女漫画的プロットも「単にギャグが言いたかっただけやろ」といいたくなる。小さい頃の私はこれにドはまりした。
そーいや、ルナティック雑技団が新装版で出るらしぃ!やばい(∩´∀`∩)楽しみすぎる‼️なつかしぃ❤️ pic.twitter.com/7FN2voBZlH
— めぐみ&せれん (@s_yurikawa) 2015, 6月 19
この漫画に出会ったきっかけは「ちびまる子ちゃん」だった。「ちびまる子ちゃん」の作者さくらももこは岡田あーみんと個人的に仲が良かったらしく、あとがきを読むと彼女の話が出てきたり、「ちびまる子ちゃん」の本文にも岡田あーみんの描いた漫画が同居していたりしたものだった。確か、「お父さんは心配性」というシリーズのキャラクターだったと思う。
こういうやつ
相方ちゃんとしたーんと新宿でチケットやり取り含めご飯してきたんだけど、今日イチ盛り上がったのがちびまる子ちゃんとお父さんは心配性のコラボした漫画の話www pic.twitter.com/sYoujtt6tw
— ayuuuu (@ayxxx810) 2015, 7月 13
それをみたときは、「なんか雑な絵だなあ…」と敬遠していたのだが、何年かして「ルナ雑」が発表されるとハマった。それは単に絵が見やすくなっていたからで、「ルナ雑」とそれ以前の「こいつら100%伝説」「お父さんは心配性」とは根本的には変わらない。ちなみに、「ルナ雑」にはまった後は、「こいつら」にも「お父さん」にもはまった。絵は雑ではあるけど下手というわけではなく、躍動感があってクセになる。
だいたいのパターンは、強烈で自滅型のキャラクターと、それに愛されて迷惑する常識人と、その周りにいる個性的なキャラクターの数々――冷静に見えるが変態的なキャラクター、魂を抜かれたイエスマン、エイリアン的立ち位置の外国人(なぜかフランス人・フランスネタが多い)――などなどが起こすドタバタ劇である。話の筋は一応あるが、それよりも妙に頭に染み付いて離れない、言葉やポーズによるギャグの方が主軸だと言ってよい。以下、独特な言葉の数々。
- 民法をみたら愚連隊になってしまいます 私のようにドスコイエフスキーを読もうとは思わないの?(百合子)
- 学校なんかやめちゃってデカダン酔いしれ暮さないか 白い壁に堕天使って書いて!?(ルイ妄想)
- 地獄の底からボンソワール 勝気なおまえはボンドガール(ルイ歌)
- オレはミスター有頂天 瞳の奥はマッハ15さハレルヤパンチ(ルイ歌)
なんでこんな言葉が思い浮かんだんだろうか…。意味は分かったり分からなかったりだが妙に頭に残っている。こんな感じの妙に覚えてしまう言葉が、シュールな絵とともに平均して1ページ1・2出てくる。ルイ・ゆり子のボキャブラリーの豊富さもさることながら、執事の黒川さんがまた…。そういえばミスターZもいたなあ。
私があまりにも「ルナ雑」を読みながら笑うので、兄も読み始め、キャラクターの真似をしてくれるようになったのでまた笑いが止まらなかった。愛咲ルイの真似が一番気に入っていたようだった。(流血しながらの「俺は不死身の悪魔だぜ(<ω^)★」みたいなやつ。<はピースね。)余談だが兄は最近ジョジョ系の真似しかしてくれなくなって、私はジョジョに疎いので非常に残念だ。
@GameMimix @XIAnagi6002 @Coco__1215 岡田あーみん!????なつかし!!!!ルナティック雑技団!!!! pic.twitter.com/7fxAypycLF
— あや (@xiaya6002) 2015, 5月 3
岡田あーみんの漫画にはその当時作者が観ていたであろう映画や音楽、ドラマのキャラクターのパロディがどんどん出てきて、今読んでも面白い。そういう「引用」は例えば「絶望先生」のように丁寧に描かれないし、さらに別の物を掛け合わせた得体の知れないオリジナルな世界観。読者にゆだねられている余地が大きくて、だからいっそう魅力的なんだと思う。岡田あーみんは漫画家を廃業してしまったが、もし今も漫画を描いていたら「マッドマックス怒りのデスロード」をパロっていたに違いないのだ。すごく惜しい。こういう漫画、今でいうと例えばなんなんだろう?
ちなみに、この「新装版ルナ雑」が出た経緯は、なんでも復刊してほしい漫画ナンバーワンになったかららしい。その当時、周りに「ルナ雑」を語り合える人なんて数えるほどしかいなかったよなあ…と思うと、今こんなに人気なのが嬉しい。期待していた新装版は、作者不在ということで(連絡もつかないらしい)、わずかな番外編を入れて表紙を変えたくらいのものだったのでちょっと残念だった。とはいえ漫画本体もどこかへ行ってしまったし、実に数年ぶり、ひょっとしたら10年ぶりくらいに読めたので嬉しかった。キャラクターはまだイキイキとしていて、中学校時代の薄い思い出がちょっとだけ蘇るようだった。 久しぶりに「お父さん」や「こいつら」も読みたいな。
新装版 ルナティック雑技団 1 (りぼんマスコットコミックス)
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新装版 ルナティック雑技団 2 (りぼんマスコットコミックス)
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新装版 ルナティック雑技団 3 (りぼんマスコットコミックス)
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追記:
ブックマークコメントで、さらに懐かしくすばらしい謎名言が思い出されました。
・EじゃんGじゃん最高じゃん
こいつら100%から、極丸壁に描いた落書き。あーみん屈指の名言。
・へえ、いかしたフレーズだな
上記の落書きをみて、リーゼント頭の少年が発した言葉だと思われる。
・でもサザンの実力は認めざるを得ないよね
お父さんは心配性から、北野君の言葉。ちょっと偉そうに語ってしまったのをすかさず上げ足をとるパピィなのであった。
・ガスがもれていませんか
天湖家のガス警報機は「ガスが漏れていませんか…フフフ…ホーッホッホッホッホ」などと言う「やつら」が仕込んであって(?)、百合子が発狂する。ああ、私のへたな説明を読んでも謎が深まるばかりだわ。
・買うは一時の恥、買ったら一生の恥
お父さんは心配性の表紙に書いてあったパピィのセリフ。
・パ・ドゥ・シャ
ルナ雑に出てくるんだと思うけどちょっと思い出せない。たぶんルイのおばあちゃんがバレリーナだったので、彼女のセリフかも。なんせフランスネタが多い。