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小さい頃の異国語の思い出

 

 

先日、幼児におすすめの絵本の記事を書いたのですが、 

「上手く行けばバイリンガル、失敗すればセミリンガル。幼児外国語教育はハイリスクハイリターンですよね」

「母語が確立しないうちに外国語を教えようとすることには、リスクもあります」

といったコメントを頂きました。

早期英語教育に警鐘を鳴らす本はいくつか出ているので、まあそういうことを書く方もいるだろうなあと思いました。

 

前提として、日本語環境で日本語教育しながら、夜気が向いた時だけ英語の本を読み聞かせてあげるのに、リスクも何もないと思います(その代り成果も大してないでしょう)。同じように、週一30分で英会話に通わせるのにも大して意味はないと思います。日本語字幕の英語の映画を毎晩見たからといって、日本語が分からなくなる・遅れるなんていうことがあるでしょうか。せいぜい、英語に親しんで、多少耳が良くなる可能性がある、というくらい。

私が英語の読み聞かせをしているのは、自分がたまたまバイリンガルなので発音だけでも真似してくれないかな~という淡い期待からです。学校での英語教育が始まった時に苦手意識を持たず、英会話が必要になった時にLとRとTHの発音にコンプレックスを抱かずに済んだら御の字です。

 

その上で、「バイリンガル教育みたいなのを半端にやると、確かにリスクはあるかもなあ」とも思っています。ここでの「リスクのあるかもしれない英語教育」というのは、インターナショナルなど英語メインの保育園に通わせたり、海外で生活したりなどの「ドップリ外国語+日本語」の場合です。一個人の経験ですが、結構大変だったのよ~という話を書きます。ちょっと長くなっちゃった。

 

言葉が止まった一か月のこと

日本語もままならない子供にとって一番つらいことは、「別の言葉で話さないと危機感を感じる環境に置かれること」です。私は日本語が完成する前の幼児期に、あまり勉強せずに英語の現地校に放り込まれました。日本人は一人もおらず、白人しか住んでいない地域だったのでそもそも有色人すらいませんでした。今考えるとなかなかのハードランディングです。子供にとっては学校でそれなりにやっていくというのは人生にとって重要度が高いことなので、そこで何も分からない・しゃべれないとなると、文字通り人生の危機なわけです。

私の場合は日本語も英語もしゃべらず、反応しない時期が1か月ほど続いたそうです。幸運なことに仲の良い友達ができたので、そのうち英語をどんどん吸収して友達も増えました。母が着物を着て学校に来てくれたこともありました。絵を描くのが得意(たぶん日本人の幼児はアメリカ人より具象的な絵を描く気がする…たぶん…)だったので、友達の等身大の絵を描いてあげると、喜ばれてやけに目立つところに貼られました。日本の漢字やひらがなは大変喜ばれるので、「日本ってクールだな!」と思ってもらえた気がします。当時ニンジャタートルズが流行っていたこともラッキーだったかも。家で日本語を話すことも復活して、2・3か月後にはすっかりおしゃべりになったそうです。

 

「しゃべらない日本人の子たち」との出会い

数年後、帰国することになり、漢字や日本の算数を学ぶために日本人学校にも週一で通いましたが、そこで初めて日本人バイリンガルの子たちに会いました。現地校になじめず日本人学校のみ通ってる子、日本語が片言で高学年なのにあいうえおからやっている子など様々でした。こういう子たちはいいのですが、一番つらそうだったのは「どちらもあまりうまくいっていないパターン」です。現地校で馴染めていないの授業もついていけてないし、勉強が進んでいないせいか日本人学校でも漢字や算数でつまづいているようでした。どちらの言葉で話しかけても片言っぽく感じます。こういう子は、私が通っていたスクールには教室に一人・二人はいました。それがもともとの性格・性質なのか、バイリンガル教育のせいなのかは分かりませんが、少なくともこの子たちにはバイリンガル教育は合っていなかったと思います。割り切ってどちらかうまくいく方に注力した方が良かったかもしれません。その後の彼らを知らないので、その時点だけの話ですが…。

「どちらもドップリ」タイプのバイリンガル教育がうまくいかない例は、どちらでも深い理解・発見や人間関係を築けなかった時かと感じます。自分のアイデンティティを発信できず、考えを発展する機会を得られないのかな、と。

 

日本にいるバイリンガルたち

私の場合、帰国してからの方がつらかった記憶があります。日本語は家で話していたので大丈夫でしたが、日本人の性質――思ったことを言わない、陰で噂を広める、女子と男子がきっちり別れる――などが馴染めなくて孤立しました。学校がすっかり嫌いになったので、受験して遠い学校に行きました。勉強は英語で考えて日本語で書いていましたが、次第に日本語で考えられるようになりました。当時(当時ね…)成績は良かったので特に問題はなかったと思います。字は汚く、それは今でも変わりません。これはバイリンガル関係なかったりして^^;問題は、個性がふよふよしている時期に海外で過ごしたので、日本に馴染めなかったという点だけでした。これもそのうち矯正されて、今ではすっかり日本人として生きています。

自分がそうだから目立って見えるのか、環境要因が分かりませんが、今までたくさんバイリンガルに会ってきた方だと思います。特に会社では石を投げればバイリンガルに当たります^^;バイリンガルだから人生辛いだろうな…という人には会ったことがありません。保守的な人が少ない、フランク、自分の意見がある、見た目やファッションなどの共通点はあります。個人的に好きな人も多いです。まあたまたまかもしれません。

 

多国語を話す国の子たちの存在

世の中には国内で当然のように複数語が離されている国もありますが、バイリンガル教育がNGであるならこれらの国の人たちは何らかの問題が起きているはずです。そうなっていないのは、自分にとって大事な環境――家族も、友達も学校もみんな同じように複数語だからだと思います。

繰り返しになりますが、大事なのは自分を認めてもらえて、考えを発信したりまた受け取ったりする土壌があるということかと。それができることが一番重要で、そこがクリアできないならまずはモノリンガルからスタートすべきかと思います。

 

長々となりましたが、中途半端に異国語環境にドップリ浸からせるのは危険かもよ。でもバイリンガルもいいもんだよ。という話でした。