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【最近気になった住宅】異国情緒、石の家

 

※今日はグーグルマップなどを貼ってみたところ、かなり重くなってしまいました…。題材的にエリア感はあった方がいいので、このままにしますm(_ _)m

 

日本では構造的な問題から、レンガや石を積み上げた家というのはほとんどないんだけど、個人的にはとても惹かれます。日本でのレンガは、仕上げ材として出てきます。仕上げと考えるとレンガや石はtoo muchだし、重いし、そもそもハリボテなので微妙かな。それでも、レンガを貼ってあるレストランなどをパッと見て「いいな」と思っちゃいます。なぜだろう。まあ、「異国情緒」みたいなワードで片付けられてしまう話なのかもしれません。

 

日本のレンガ建築

日本にあるレンガの建物と言えば、横浜赤レンガ倉庫でしょうか?建築当初は「組積造(レンガなどを積み上げて構造壁にする工法)」で作られましたが、やはり関東大震災の際に大半が倒壊し、のちに鉄筋コンクリートの壁で補強され、レンガ部分は「仕上げ材」のような存在として生き残っています。

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photo:T.Kiya

あとは、神戸や長崎、門司港レトロなどでしょうか。こういうレンガの建物は港町に多いんでしょうね。それぞれ観光地にもなっていますから、やはりこの手の建物の風情は人気があるんですね。

 

そんなわけで、石でできた住宅を3軒紹介します。ちょっと観光マップ調で書いてみます^O^

 

Stone House Transformation in Scaiano

建設地:スイス 敷地面積:166平米 設計:Wespi de Meuron Romeo architects

このスイス南端のスカイアノという地域は、マッジョーレ湖というイタリアの北端に跨った大きな湖に面しており、イタリアのコモ湖のすぐ西の辺り。(※ストリートビューはありません。)

コモ湖には行ったことがありますが、白い漆喰の壁にオレンジの屋根の美しい住宅が、キラキラした静かな湖に面して並んでおり、とても風光明媚なエリアです。

この物件は石造りの住宅の改築で、既存の躯体にコンクリート造のボリュームを足したり、ガラスで囲ったりしているものです。おそらく周辺の建物は全て似たような石造りの建物なのでしょうね。きれいなんだろうなあ。

こういう「何百年経っても美しい村」がゴロゴロあるのが、ヨーロッパのすごい所だと思います。日本の新陳代謝する街から生まれる建築と、根本的に違うのもうなずけます。

自分の経験ですが、ヨーロッパ育ちの建築学生と、日本の学生だと「突破できるもの」が違います。既存の構成や素材を守ってきれいにまとめようとするヨーロッパ勢に対し、日本の学生はマイルールで自由に、ある意味ペラく(?)つくれる気がする。一方で、内装にこだわるのはヨーロッパの学生です。この辺の違いは、何か言語化してみたい。

 

前置きが長くなりすぎましたが、住宅に戻ります。

 

周辺建物も含めて床から屋根まで石石石。

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マッジョーレ湖に望む風景を切り取った、モダンな部屋です。手前は新築部分ですが、奥に見える石壁は既存部分です。

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さりげなくテレビが石の壁に張り付いている所にちょっとうけてしまった。これぞ古いものと新しいものの融合(?)!

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外観は完全に周辺に馴染んでいますが、シンプルな窓などがさりげなく主張しています。

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VIA:Stone House Transformation in Scaiano / Wespi de Meuron Romeo architects | ArchDaily

 

House in Brissago

建設地:スイス 敷地面積:387平米 設計:Wespi de Meuron Romeo architects

またしてもスイスです。石処なのでしょうね。

スイスの南端ブリッサゴ、先ほどと同じくマッジョーレ湖に面しており、なんとスカイアノの対岸です。(スカイアノの物件のマップをご覧ください。)残念ながらブリッサゴもストリートビューが通っていませんでしたが、↓の航空写真を見るだけで、「コレ絶対美しいパターンのやつや」と思いましたね(何)。湖から山側を見れば、石の住宅が段々に並び、、、

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ストリートビュー禁止の、VIPな方が住んでいるのかもしれません。あー旅行行きたい。あー。あー。

 

…気を取り直して、本題に移ります。

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なぜかフリンストンズを思い出してしまった。ヤーバダバドゥーーー!

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そうか。床から天井まで同じ石感の素材だから、洞窟のように感じるからなのですね。(フリンストンズというのは原始人のアニメです)

FLINTSTONES VOL. 2-PRIME-TIME SPECIALS COLLECTIONこんなの

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アレ?これただのコンクリート造じゃないの?\(^o^)/

というのはおいといて、とにかく美しいですね。家どうこうより、ブリッサゴに行ってみたくなりました。

 

VIA:House in Brissago / Wespi de Meuron Romeo architects | ArchDaily

 

 

スイスと言えば、テルメ・ヴァルス(Therme Vals)という山岳地の一角に建つ温泉施設が印象的でした。世界的に有名なピーター・ツントーという建築家が設計しています。こんなの

 

極寒の星空の下、素っ裸の白人の皆様が湯気を立たせながら温泉プールに並んで横たわっていたのが印象的でした。建物は直線と石で構成された、超クールな佇まいです。近くに、ツントーデザインのホテルもあります。もしスイスに行く機会があるならばぜひお勧めしたい。温泉は超ぬるめですがね!さむさむさむ。

問題のプール↓あのベンチに並ぶのよ。

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photo:fcamusd

 

麓の村は、壁だけでなく屋根まで石を積んでつくられています。絵に描いたように可愛らしい、日本人からしたら嘘のように絵になる村なのです。テルメバルスも素晴らしかったけど、この村の方がテンション上がったなあ。

マップで見るとこんなの。なぜストリートビューが通っていないんだ!なぜなんだーー

 

 

所変わって、次はスペインの石の建物です。

 

Housing Rehabilitation in La Cerdanya

建設地:スペイン 設計:dom arquitectura 敷地面積:603平米

ええと、住宅ではないんですが(!)、リハビリのための施設です。スペイン北部の、緑に囲まれた美しい場所みたいですね。ちょっとgoogle mapでみてみますと…

まだ航空写真が建設前でした^^;ほとんどフランスとの国境の小さな村です。 

 

こちらはストリートビュー。周辺の建物は古くから石の組積です。ここも石処ですね。行ってみるとキレイなんだろうな~。こんなところでリハビリしたい!

こんなのが「普通の建物」だなんて。日本に一つでもあったら、即名所ですよ。

 

敷地をチェックしたところで、本題に入ります。

周辺の住宅地の景観に合わせてか、小さなボリュームをたくさん作った計画です。大きな建物をつくってしまったら、台無しだったでしょうね。というかむしろ、どれが計画地なのか分からない程に完全に溶け込んでいます。

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内装だけモダン、外装は古い。古材の活用。めっちゃヨーロッパっぽーい^p^(私めっちゃバカっぽーい)

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組積の壁は素材感満載なので、他の建具や家具や階段などは超シンプルでちょうどいいバランスです。

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VIA: http://www.archdaily.com/568789/housing-rehabilitation-in-la-cerdanya-dom-arquitectura/

 

 

以上、「石の住宅」。日本にはあまりないものなので、海外旅行に行ったような気分を味わえました。また、極端なまでに周囲に溶け込んだ感じも特徴的でした。こういうものをたくさん見ると、日本人建築家がつくる、奇抜でペラッペラのコンセプチュアルな建物が、いかに衝撃を持って迎えられたか分かるような気がします。

 

その他の住宅についての記事はこちらから。

最近バズった記事 ↓びっくりするほど、上記の建物群とは毛色が違います。ザ・日本。

海外の住宅をもっと見たい方は ↓

 

建築家のお仕事って、面白いよ~。

みんな建築家にマイホームを頼もう^p^

 

 

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【最近気になった住宅】日本の細長い家

 

 

細長い家といえば日本の長屋などを思い浮かべますが、長屋でなくとも地価が高い所だと正方形の土地を半分に切って2軒建てることが多くなるわけで、お住まいの地域によってはよく見かけるかもしれません。

無印も「縦の家」という細長い家を発売しています。こういう家の欠点である「採光」を、家の中心にある天窓とスケルトン階段(スケスケの階段)により解決しようという構成です。窓の家、木の家と比べてどれが一番売れているのかな?なんとなく無印好きな方は縦の家の需要が多そうな気がする。


そんなわけで、間口に対して比較的奥行きが深い、「細長い家」を3軒紹介します。

採光の悪さや狭さに対してどのようにアプローチしているかに注目してみます。

 

白い、まるい、細長い家

物件名:Love House 設計:保坂猛 敷地:横浜 建築面積:33平米

夫婦とウサギの家族だそうです。

採光の悪さを、昼間に使うLDKスペースを2階に、寝室などを1階にすることによりカバーしているようです。とてもコンパクトな住宅ですが、外部がどこまでも続くようなアプローチや、小さな三角形の木の植え込みの吹き抜けによりとても開放的な感じがします。

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このアプローチはワクワクする。2階玄関です。

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上がり切って振り返れば、もうLDKの全貌が。ここにいれば1日中木陰にいるようで気持ちよさそうですね。

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VIA:Love House / Takeshi Hosaka | ArchDaily

 

外部を挟む坂の家

物件名:House-H ~黒いクレバス~ 設計:岸本和彦 敷地:目黒 延床面積:72平米

細長い上に旗竿敷地の住宅。階段をどんどん上がっていくような動きのある開放的な構成で、さらに中庭が二つ挟まれています。

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個人的にはこの異常な感じのある入口が一番好き。

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VIA:岸本和彦 / acaaによる東京都目黒区の住宅「House-H ~黒いクレバス~」 | architecturephoto.net | 

 

シナの木と白い家

設計:髙橋真紀建築設計事務所 敷地:埼玉 延床面積:58平米

この物件は気になっていてかなり前から「こっそり保存」していたんだけど、何が気になっているのか今日になっても分からない。壁が縦4枚に分断されていることでの強い「縦」感とか、通りからもスカスカに見える階段室とかのせいなのかもしれない。

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特にこの写真が好き。細長く切り取られた、あまりにも普通な景色がヘンな感じで良い。

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VIA:white hut and tilia japonica by takahashi maki and associates

 

 

以上、細長い住宅。

敷地的に狭かったり暗かったりすると、やれることが減って構成が似通ってくると思うのですが…構造の工夫や素材によってもかなり違った感じになります。こういう仕事が来たら、設計は結構悩むんだろうな~。

 

その他の住宅についての記事はこちらからどうぞ。建築家の仕事って面白いよ~。

 

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【最近気になった住宅】窓が面白い家

窓は外界を画に変えるモニター 

窓のメーカーとして知られているYKKAPの好きな広告コピーで、「窓は寒さを景色にする。(うろ覚え)」というものがあります。子猫が室内から雪景色を眺めているビジュアルで、この猫がまた可愛いんですよ~^p^(何)そして、確かにガラス窓ってスゴイ発明だよな~と思いました。雨風を凌ぎながら、外の様子も見られる。基本的にはシェルターとして外界からシャットアウトするものだった「建物」を、全く別のものに進化させた装置なんだと思います。

 

最近の窓に関する考察では、森山高至さんのツイートまとめを面白く読ませていただきました。


ここでは、マンガでの窓サッシの描かれ方によって、登場人物の心情や「外界と室内」の設定上の関係性について考察されていました。窓が景色にするのは、寒さだけではなく外界そのものであり、室内=自分のテリトリーから見る様々な物事が景色になってしまう、パソコンの画面のようになってしまう力があるんだと思います。

そんな「窓」の扱いが面白い住宅を3軒紹介します。

 

 

窓を開けてもまた壁がある家

物件名:屏風ヶ浦の家 敷地:横浜 延床面積:90平米 設計:保坂猛

窓を閉めていると、一見普通の3階建てのファサードに見えますが、なんと窓を開けても壁が出現します。実際には壁は斜めに入っていて、隙間から光が室内に入るという仕組み。プライバシーのため、下の階にいくほど壁の立ち上がりが急になっています。

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下階に行くほど、「開けてもなお窓」感が強い。

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ファサード側の様子。光は上から斜めに差し込むので、隙間から入り込む光は室内を十分に照らしています。一方で、外からの目線は全く合わないので、かなりプライベートな感覚です。

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よじ登りたくなりますね…。

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裏側です。こちらも同じように斜めにぬめっとした壁が。

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お皿が3枚重なったような断面です。お皿とお皿の間ってこんなに良い空間やったんや!(違)

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VIA:保坂猛 建築都市設計事務所 / 作品集

 

 

会話する穴としての窓

物件名:ROOM ROOM 敷地:板橋 面積:72平米 設計:保坂猛

これも保坂猛さんによる住宅です。窓は全て20cm²程度と小さく、壁だけではなく床や天井にも開いています。プライバシーを守りながらも優しい光が入ってきます。20cm²と言えば、顔くらいの大きさ。床に開いている窓を通じて、聴覚障害のあるご夫婦とお子さんがコミュニケーションを取ることもあるそうです。

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一つ一つの窓は小さいのですが、まとめると結構な採光面ですね。

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VIA:保坂猛 建築都市設計事務所 / 作品集

 

 

要塞に穿たれた穴

物件名:The Wall of Nishihara 敷地:渋谷 建築面積:40平米 設計:Sabaoarch

一人住まいのための住宅in渋谷。立地が立地なので、要塞のように街から身を守る佇まいです。たくさん開口が穿たれているので光は入ってきますが、外界の景色を見る、いわゆる窓とは全く違う役割のように見えます。

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万里の長城みたい?テーパーはかかっていませんが、パラパラと不規則な、ロンシャンみたいな開き方です。

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VIA:The Wall of Nishihara

 

 

以上、窓が面白い住宅。要はガラスをどうやってはめるかという話なので、自由度が高く、コンセプトの中心にもなる題材でした。

 

その他の住宅については、下記からどうぞ~



 

【最近気になった住宅】図と地のある家

 

 

不定期で、最近竣工した住宅の中から気になったものを3軒ずつ紹介しています。今回は「図と地のある家」。

 

ハレとケ、明と暗、太陽と月…二つの空間がある家

現在一般的に流通している住宅って、暗い部屋があまりないですよね。日当たりが悪かったり、何か事情があってしょうがなく暗い部屋はあるけれど、基本的に好まれない(というか物件価値が低い?)。窓のない部屋というのも基本的にはNGです。でも、どの部屋も同じように「さんさんと太陽が降り注ぐ白い部屋」というのも、個人的にはつまらないなあと思います。

スマホを持ってトイレの個室に籠ったり、暗くて狭いバーに寄り集まったりするように、狭かったり、暗かったり、天井が低かったりする空間もあっていいのでは。その反対に、真っ白で明るく、天井が高い空間もあれば、全く性質の違う空間を楽しめる2度おいしい家になるのではないでしょうか。

エッシャー: グラフィックワーク NBS-J (ニューベーシック・アート・シリーズ)

「図と地」は一方から見ると他方は主従関係にあるが、主体が入れ替わっているだけでどちらも主であると言える

そんな、全く違う空間を併せ持っている住宅を紹介します。

 

2階建ての平屋

敷地:三重県 建築面積:128平米 設計:Airhouse Design Office

巨大な柱がポンポン立っている天井の高い平屋に見えますが、実は「柱」の中身は2階建ての個室。「柱」以外の大空間を主体に、個室やお風呂などの機能が「柱」に格納されています。そのおかげで、家族でくつろいだりお客さんを呼んだりする空間はゆったり・すっきり。機能部分はコンパクトですが、ふだんの生活スペースがこれだけ豊かなら満足度は高いのではないでしょうか。お風呂の2階が洗濯場だったり、パントリーの2階が読書スペースだったり。一番細い柱の2階はなんと猫の部屋です。毎日木登り感覚で楽しそうだと思いました。普通の2階建てにしてしまえばかなり広い家になりますが、必要なスペースがとれているなら、こういう贅沢な構成も良いですね。

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柱が林立する空間

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↓正面の細い柱の2階は猫の部屋、1階は玄関です。猫たんは無事に入室してくれたんだろうか。

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↓柱の中に入ってみると…ここは子ども部屋

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ポチ窓が開いていますが、個人的には窓なしでもいいかな~。まあでも、絵画的に楽しむ風景なのかな。

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↓特にプランが面白いので、サイズ的に読み取りが難しいかもしれませんがぜひ見てみてください。

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VIA:House in Ohno / Airhouse Design Office | ArchDaily

 

同じ建築家の作品:こちらはマンションのリノベーションですが、ショーウィンドーみたいなものを家の真ん中に走らせる独特の空間。これも好きでした!



個室の「余り」に集まる家

敷地:東京、町田 建築面積:95平米 設計:MDS

先ほどの家と構成が似ているのですが、こちらは面積が小さく平屋であるため個室の占める面積が大きく、その余剰の空間がすなわちLDKになっています。残念ながら個室の中の詳細は不明ですが、プランを見る限り白い箱状のベッドルームやバス・トイレになっているようです。

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↓ここから個室内がちょっとだけ見えます

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↓外から。

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VIA:MDS designs Naruse House on a sloping junction between three roads

 

 

もう1軒は、見方によっては「図と地関係」はあるのですが、それ以上にスッカスカが気になるぞ。 というわけで別枠でご紹介します。

 

パラパラ系日本家屋

敷地:京都府 延床面積:120平米 設計:y+m design office

2軒家をくっつけたみたいなプランですが、2つのボリュームの間は妙にスカスカとしています。どこかで見たことありそうで無いな~と思っていたのですが、、、そういえば、神社などで半屋外の廻り廊下が棟と棟をつなげている部分に似ているのでした。軒と軒が噛み合っているところなんかも似ていますね。立地も京都であり、街並みとの親和性もありそうです。実際は平屋でなく2階層あるので、お馴染みの神社空間よりも開放感のある、不思議な中間空間になっています。開けた中間空間の先にはご両親の家があるそうです。

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↓2階に上がってみます。徹底して屋根直下の壁を抜かしており、パラパラ・スカスカです。

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↓個室にまで屋根のラインに沿って窓を開けており、ここもスカスカした印象。結構徹底しているなあ。

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↓屋根裏も上がれます。屋根直下は全部抜かしているので、視線が通ります。こういう微妙な空間、好きなんですよね~。野良猫の気持ち。

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↓外観は普通の日本の家と言う感じです。

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VIA:y+M design office wraps eaves around house in suburban kyoto

 

 

その他の「最近気になった住宅」はこちらからどうぞ。みんな、建築家にマイホームを頼もうぜ!!



建築家に家を頼むことについて書いてます。まだまだ書き足らないけど、このテーマを書くのは体力がいるのだ



 

 

【最近気になった住宅】旗竿敷地に建つ家

 

 

「最近気になった住宅」ちょっと日が空いてしまいました。気になる住宅はそこそこあるものの、数軒まとめて編集テーマを打ち立てられないでいます。1軒だけで記事書けばいいじゃないとも言えますが、それならアーキデイリーやデザインブームを翻訳して読んだ方が良いし。技術的にも建築史的文脈でも知識がないですし。というわけで、今回は2軒(+α)だけです。

 

旗竿敷地ってご存知ですか?

道路に面している部分が通路くらいの間口しかなく、奥に4面を他の建物などに囲まれた土地がある敷地のことです。上から見ると旗の形に似ているため、旗竿敷地。一般的には資産価値が低いので、逆手に取れば比較的安く買える土地とも言えます。建蔽率や通風・日当たりなどの折り合いがつけば、土地が高いエリアでも手が届きやすいかもしれません。そんなちょっと特殊な土地に建つ住宅を、今回は2つ紹介します。

 

一枚の板がアプローチと家をつなぐ家

物件名:KHB residence 敷地:九品仏 面積:不明 設計:新関謙一郎

狭い間口のところから家まで、長い一枚の板を渡して連続性を持たせています。構成が分かりづらいので先に図面から。

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アプローチの様子です。

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この階段を上がると…

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アプローチにある箱は、お茶ができるくらいのスペースがあります。不思議な空間、だけど面白いですね。一応、客間という感じでしょうか?宿泊にも使えるのかな。

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こちらは本体の住宅の方の内観。情報量をそぎ落としたデザインです。

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余談ですがNIIZEKI STUDIOは、このような直線的で窓のない、素材感が全面に出たミニマルな住宅が非常に多いのです。(個人的に相~当~好きです^^;)

例えば…

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見た目は「閉じた箱」ですが、中に入ると意外にも明るく、多様な空間があるのに驚きます。

事務所は東京です。これを見て「新関さんにマイホームをお願いしよう!」と思った方、「poco blogを見て来ました」とお伝えください。ええ、怪しまれるだけです。

 

VIA:niizeki studio balances the KHB residence atop a concrete wall

 

 

旗竿敷地なんだけど…な家

物件名:草津の家 敷地:草津 面積:116平米 設計:ALTS design office

タイトルをつけ損じていますが^p^、いわゆる「旗竿敷地」って4面を囲まれているイメージがあるのに対し、これは写真を見るとフルオープンです。どうやらマンションの駐車場である模様。それでもやはりプライバシーの問題はありますので、完全に壁一枚で外部からシャットアウトしてしまいました。その壁が作る、旗竿地の「竿」の部分の通路が路地裏的空間になっています。なかなか楽しそう!

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駐車場に囲まれた、「えっ、これ旗竿敷地?」という物件でした。

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VIA:ALTS design office conceals kusatsu house behind windowless wall

 

以上、旗竿敷地に建つ家。普通に建てたらただの長いアプローチと普通の住宅ですが、アプローチ部分に特徴があるので、この二例のようにそれを活かした方が面白いでしょうね。

 

せっかくなので、旗竿ではないものの、特殊地形に建っている住宅をもう一つ。

 

折り返し地点をまたぐ家

物件名:草津の家 敷地:厚木 面積:110平米 設計:川辺直哉

道の折り返し地点にまたがって建っている家です。平面的にはくの字になるので、それが階段室を中心にイレギュラーな空間をつくっているところが面白いです。

また、地面に接するアプローチを二つ取れるので、ファサードが二つあるようなもの。意外と便利かもしれませんね。

↓の写真で見ると、別々の住宅のファサードのように見えて面白い。

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VIA:House in Atsugi / Naoya Kawabe Architect & Associates | ArchDaily

 

 

旗竿敷地と全く関係ないんだけど、記事にならないまま溜まっていくスクラップ記事を見ると、私は「住宅なら南米(+日本)」、「内装ならドイツ」、「プロダクトならイギリス」が好きなんだなという自分探しができてしまいました^^;あ、どうでも良いですよねスミマセン。まあでも、ミニマル好き・仕上げなし素材感好き(主に石とコンクリート)・コンセプト好きなら共感してもらえると思うんだよねえ。どうでしょう。

 

 

ようやくツイッター始めました。

 

 

【最近気になった住宅】境界線に建つ家

 

土地の性質が変わる境界線上、または跨ったところに建っている住宅です。風景や土地の高さが変わるところをどう活かしているか、取り込んでいるかに注目してみました。

 

水際に斜めに建つ家

物件名:House in Onomichi 敷地:尾道 面積不詳 設計:Suppose Design Office

谷尻誠さんです。海に面して海面も近い住宅ですが、対岸や橋も近く視線が気になる場所。そこを、家自体を全て海に向かって斜めの平面にすることで、海に対してオープンにしながらも外の視線から逃れられる場所をたくさん用意しています。

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レベルは平屋に抑えて、寝室やお風呂などは地下に入れて全く違う空間にしています。(と思います。図面が無いので予想^^;記事はこっそり修正するかもしれません。)

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尾道は内海なので、これだけオープンでも海を楽しめる感じなのかもしれませんね。この景色を見ながら晩酌してるのでしょうね^p^ビールがうまいぞー

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VIA:Walls run diagonally at Suppose Design Office's House in Onomichi

 

擁壁に腰掛ける家

物件名:House in Miyake 敷地:広島 延床面積:93平米 設計:Hidetaka Nakahara Architects, Yoshio Ohno Architects

また中四国。何と敷地が途中で4メートルも下がっているのですが、その境界線の擁壁にストンと腰かけているように見える住宅です。

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ただ、敷地が下がっている部分はボリュームとしてはあるものの中身はなく、天井がすごく高い半屋外のような空間。スツールと階段が、まるで舞台のセットのように印象的に配置されていますね。「意味はないけどなんとなく面白い空間」があるのっていいなーと思います。意外とそういう場所で、長時間過ごしたりする。

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VIA:House in Miyake / Hidetaka Nakahara Architects + Yoshio Ohno Architects | ArchDaily

 

半地下に埋まったように見える家

物件名:Casa BC 敷地:メキシコ 延床面積:559平米 設計:3ARCH

おそらく喧騒のある通りには入口しかなく、そこから崖下に下ったところに居住部分が広がっている構成です。そのアプローチ部分がかっこいい!その部分の写真ばかりで申し訳ないけれど、実際に屋内の写真がほとんどないのです。半屋外部分が非常に多く、室内は建物の中心部に(全体からみると)こじんまりとまとまっています。その半屋外へのプラン上のこだわりが強く、設計意図でも“Outer space never ends and interior space never begins.”(≒屋外がずっと続いているような屋内)と言っているほど。こういう発想たまらんぞーい。

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写真はないけれど、これがファサード=正面玄関のところです。立面図の真ん中が入り口。

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通りからは建物の全体像がほとんど見えていません。

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それにしても思った以上に延床面積が広大なのですが、敷地面積の間違い?こんなもん?

VIA:Casa BC / 3ARCH | ArchDaily

 

 

以上、境界線に建つ家。境界部分をどう活かすか、エリア特性や設計者の考え方の特徴が出ていたと思います。境界部分を機能として使ってしまう場合は単純に壁を立ち上げて断絶するのみですが、こうやって「特に機能の無い、なんとなく豊かな空間」として半ばオープンに使うと、土地の性格がぐっと引き立ちますね。

 

もっと住宅が見たい方はこちらからどうぞ↓


"最近気になった住宅" - 記事一覧 - poco blog

 

 

【最近気になった住宅】崖っぷちに建つ家

 

崖っぷちがあると、切っ先に立ちたくなる心理ってなんなんでしょうね。私だけでしょうか。怖いけど、「押すなよ押すなよ」とか言いながら下を覗いてみたり。

 

建築もそうで、「なぜそこに建てた?」というくらい崖っぷちに建つ住宅ってやはりあるんです。そんなギリギリな3軒をご紹介します。

 

八ヶ岳の家

延床面積:200平米 設計:kidosaki architects studio

息をのむくらい美しい景色なので、それを存分に楽しむためにも空中にせり出した特等席を作ったのでしょうね。

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この裏側には大きな柱がありますが、肝心の景色の面は柱がありません。

VIA:kidosaki architects studio cantilevers house in yatsugatake mountains

 

海に臨む家、カナダ

面積不詳 設計:Patkau Architects

こちらは山を背負って海に臨む家です。せり出し部分の良さもあるのですが、キャンチレバー部分の建物の裏側など、細かいところまでデザインが美しいですね。裏側には水盤もあるようです。

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この裏側のデザインがかっこいい。見る機会ほとんどないのに。

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この家も柱なくスッキリしていますね!

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基本的には八ケ岳の家と同じ構造、同じ構成です。

 

VIA:Tula House by Patkau Architects cantilevers over a remote cliff

 

 

上記二つは、柱の無い建築物の塊が空中にせり出している、キャンチレバー(片持ち梁)という支持形式です。景色を豊かに楽しむための、独特な形式かもしれませんね。もちろん普通の住宅地でも見られますが、こちらは見た人がびっくりするくらいですかね…。

 

もはや崖下にある住宅、オーストラリア

面積不詳 設計:modscape

「12週間で住宅をつくります」というプレハブ専門の設計事務所、modscapeから「究極の崖っぷち住宅」です。崖っぷちというよりむしろ、崖の側面に引っかかっています。

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こちらプロジェクトでして、若いカップルの週末住宅の一案として提案した模様。う~ん、これは12週間ではできそうにないですね^^;

入口は、通常下から上に上がっていくものですが、こちらは屋上から入って下に降りていくようです。

VIA:cliff house by modscape suspended above the australian ocean

 

modscapeの他の住宅も、プレハブとは思えないくらいの完成度です。

Modscape Modular Homes | Prefabricated Homes | Ready in 12 Weeks

 

 

 

ちなみに、日本にも有名な「崖っぷち建築」があります。三重県鳥取県にある「投入れ堂」です。行ったことがある方もいらっしゃるのでは?

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三仏寺 - Wikipedia

私もぜひ行ってみたいのですが、僻地+登山で、行くのはなかなか大変みたいです。いつか必ず!

 

以上崖っぷちの住宅でした。

 

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